蚊に好かれる人

さて、今回は趣向を変えて「蚊に好かれる人」というくだけた話題です。

特に夏になると活発に動き、みんなに嫌がられる蚊。
同じように蚊の多いところにいても、自分にばかり蚊が寄ってくる、もしくは、特定の人だけ、他の人と比べてやたらと蚊に噛まれている。
という経験をされたことがある方は多いのではないでしょうか。
蚊にも、どうやら好みがあるように思えますね。
今回は、蚊が人をどうやって見つけて、人のどのような性質により惹かれるのかについてのお話です。

蚊が吸血対象を見つけるまで
蚊は、吸血対象に接近するために、

  1. 二酸化炭素
  2. 生物から発生する揮発成分
  3. 体から出る熱
    の3つを感知するようです。
  4. まず、一番遠くまで届くサインが二酸化炭素のようです。
    蚊は、二酸化炭素の僅かな濃度差を検知し、無風状態で10m先から人の存在を察知できるようです。
    二酸化炭素の濃度が高い方向へと蚊は移動していきます。
  5. その次に、対象生物が発する揮発成分つまり、匂いを感知します。
    乳酸や、2-メチルフェノール、オクタノールなど動物の体から出る複数の揮発成分に蚊を誘引する効果があります。
    吸血対象生物が、人であるのか、別の動物であるのかを識別するのには、その揮発成分の複合体として感じる匂いを使っているようです。
    一般的に良い匂いとされる香水も、決して単体では良い匂いとは言えない揮発成分も含む、様々な揮発成分の混合です。
    私達は、その混合されたものを一つの香水の匂いと感じるように、蚊もある配合で混合された揮発成分の匂いを人の匂いと捉えるということです。
    つまり、二酸化炭素に誘引されてやってきても、ここで対象生物の匂いを感知しなかった場合、吸血を諦めることがあるということです。
  6. 二酸化炭素、揮発成分の濃度が高い方に従って対象生物の数十㎝以内にやって来た蚊は、対象生物の体温を感知して高い方に移動をします。
    人の体温によって周りの空気が暖められる限界の距離は、40cmほどのようです。
    つまり、40cmくらいの地点から蚊は熱によって誘引されるということです。
    蚊は、人の体温くらいから、40度あたりまでは反応するようですが、それ以上になるとまた反応しなくなるようです。
    ちゃんと、温度が高すぎるものは、生物ではないと判断するようです。
    つまりバーベキューや焚き火が発した熱を感知して遠いところから誘引されてきた蚊は、そのまま火に近づき続けるのではなくその周辺にいる37℃前後の人間をちゃんと標的にしてしまうということです。
    ちなみに、最近猛暑が続いていますが、外気温が37度を越えてしまうと、人の発する温度と外気の温度が同じもしくは外気の方が高くなってしまい、熱によって吸血対象を見つけることはできなくなってしまうようです。

以上の3つの要素によって蚊は吸血対象に近づきます。
実際に口を肌に刺して血を吸うという吸血行動はこの3つのうち2つを感知すれば起こるようです。
ちなみに吸血対象種は、世代を越えて受け継がれるようです。
ヒトスジシマカは、人以外にも、イヌ、ネコ、ウシ、ネズミ、ニワトリ、鳥類、ヘビ、カメ、カエル、カタツムリ、カイコの体液を吸うことができるようです。
しかし、その地域に、どの吸血対象種が多いのかによって、その蚊の集団の嗜好性は変化します。
人が多く暮らしている所では、人の血を吸う遺伝形質をもったものばかりが繁栄するため、ほとんどの蚊が人の血を吸う蚊となります。
一方、森林などあまり人のいないところでは、野生動物を対象にする蚊の集団が増えるようです。
つまり同種であっても、こっちの蚊はよく人の血を吸うが、あっちの蚊はあまり吸わないということが起こるということです。

血液型と吸われやすさ
蚊の刺されやすさは、血液型によって異なるという話を聞かれたことがあるかもしれません。
はたしてこの話は本当なのでしょうか。
日本人の研究者が64人の人を対象にヒトスジシマカが腕の血を吸う頻度を調査した結果、O型がA型よりも2倍噛まれやすいという結果になったようです。
O型の人が噛まれやすい原因は、血液型に左右される体表面の分泌液にあるのではないかという仮説を立てて研究が行われたのですが、分泌液と蚊の選好性には顕著な関係は見られなかったようです。
結局、O型の人が蚊に好かれる理由については未だに不明なようです。
海外の研究では、蚊のO型選好性の傾向が支持される研究もあれば、支持されない研究もあるようです。
研究例が少ない上、研究対象になった蚊の種類も研究によって異なるため、一般に蚊がO型の人に対して選好性を有しているのかを明らかにするためには、更なる研究が必要と思われます。
少なくとも、日本のヒトスジシマカについてO型の人が吸われやすいというのは根も葉もない噂というわけではなさそうです。

その他の吸われやすい性質
汗をかく人に比べ無汗症の人は、蚊が血を吸い始めるのに時間がかかったという研究事例があり、汗に蚊を誘引する効果があることが指摘されています。
蚊は丸い形の物と平たい板では丸い形のものに誘引される傾向があります。
(ただ、対象物の大きさによって効果は変わるかも知れませんが…。)
じっとしているものより、よく動くものに誘引されやすい。
黒、青、赤、黄、白の順によく蚊を引き寄せ、黒と白の差は3~4倍あります。

余談ですが、人の足に棲むバクテリアの一種が代謝の過程で生成する物質がハマダラカを誘引することが知られており、同属のバクテリアを使って作るベルギー原産のリンバーガーチーズ(人が裸足で踏みつけて製造する)の匂いもやはり、ハマダラカを誘引するようです。

まとめ -蚊に刺されやすい人の性質-
上記の情報を総合すると、蚊に刺されやすい人(誘引しやすい人)の特徴は、運動、飲酒などによって二酸化炭素をたくさん排出し、体温が高めで、汗をかいていて、動いていて、丸っこい体型(?)で、黒い服を来ているO型の人。

蚊に刺されにくい人の特徴は、
二酸化炭素をあまり出さず、体温が低めで、汗をかいておらず、あまり動かないで、丸っこくない体型(?)で、白い服を着ているA型の人。
この特徴に加えて、足に棲むバクテリアを減らすために足を清潔にするとより蚊が寄って来にくくなるかもしれません。

血液型だけはどうにもなりませんが、要するに蚊に好かれないようにするには、白い服を来て、あんまり激しく活動しないようにして、体を清潔に保つことを心がければ良いようです。

日本の夏は蚊の生息に大変適した環境になってきていて、マラリアなど蚊が媒介する恐ろしい病気への備えも今まで以上に必要とされるでしょう。
蚊が増えることは私たちのQOL向上への妨げとなり得るため、一人ひとりが蚊に刺されないよう気を配るとともに、蚊の発生を抑えたり無くしたりすることへ注力していきたいものです。