男女共同参画白書から

今回は、「就職氷河期世代」と「人生100年時代における結婚と家族」の2本立ての話題です。

先日、息子が4月から民間から公務員へ転職をするということから、最近の就職事情をネット検索していたところ、ふと「就職氷河期世代」という言葉が目に留まったので、そのことに触れていた厚生労働省の男女共同参画白書を調べてみました。
そこには、私が働いていたバブル前とは大きく異なる世界観が広がっていました。

「就職氷河期世代」とは、1990年代のバブル崩壊後の雇用環境が厳しい時期に就職活動を行った世代を指します。
ここでは、昭和50(1975)年~昭和59(1984)年に生まれ、令和3(2021)年調査時点で37~46歳の人を「就職氷河期コア世代」とし、その前後の世代と比較してみます。
最終学歴後、初めて就いた仕事(初職)について見ると、「就職氷河期コア世代より上の世代」は、男女ともに「就職氷河期コア世代」「就職氷河期コア世代より若い世代」より正規雇用労働者の割合、1,000人以上の企業規模である割合が高くなっています。
一方、「就職氷河期コア世代」「就職氷河期コア世代より若い世代」の間には大きな差が見られません。

しかしながら、就職時の「仕事への希望度(就職前の希望通りだったか)」を見ると、「就職氷河期コア世代」では、「希望通り」と回答する割合が「就職氷河期コア世代より若い世代」と比較して低くなっています。
特に、初職が非正規雇用であった人の、就職前に感じていた「仕事への希望度(希望通りだったか)」を見ると、「就職氷河期コア世代より若い年代」では、初職が非正規雇用であっても「希望通り」とする割合が、「就職氷河期コア世代」と比較して高く、男性においてはその傾向が顕著になっています。
「就職氷河期コア世代」では、不本意に非正規雇用にならざるを得なかった人が一定数いる一方、「就職氷河期コア世代より若い世代」では、「非正規雇用も選択肢の一つ」と捉えている人もいることが推測されます。
同じ雇用形態でも、生きてきた時代での考え方が異なることに驚きです。
現に、初職の満足度について、「就職氷河期コア世代」は、前後の世代と比較して、全ての項目で満足度が低くなっています。

世代間の違いは、初職をめぐる状況に留まりません。
例えば、独身者が今後積極的に結婚したいと思わない理由のうち、「結婚生活を送る経済力がない・仕事が不安定だから」を見てみると、男女ともに「就職氷河期コア世代」で「当てはまる」と回答した割合が高く、特に男性では5割近くに上っています。

また、「就職氷河期コア世代」は他の世代と比べて将来に対する不安を強く感じている世代でもあります。
中でも将来の年金受給に関する不安が大きく、「就職氷河期コア世代」の女性のうち4割以上が「高齢になっても年金受給が不透明・見通しが立たない」に「当てはまる」もしくは「やや当てはまる」と回答しています。
依然として「就職氷河期世代」は他の世代と比較して、現在も様々な課題に直面していることが分かります。
引き続き、「就職氷河期世代」に対して必要な支援を行うとともに、第二の就職氷河期を生まないようにすることも重要でしょう。

さて、ここからは世代別の就職・雇用のお話しから、男女共同参画白書令和4年版の令和3年度男女共同参画社会の形成の状況として特集が組まれてあった人生100年時代における結婚と家族 ~家族の姿の変化と課題にどう向き合うか~に関するご紹介をして、考察を進めていくことにしましょう!

まず言えることは、大変残念ではありますが、コロナ下において我が国における男女共同参画が進んでいなかったことが改めて顕在化したことです。
問題の背景には、家族の姿が変化しているにもかかわらず、男女間の賃金格差や働き方等の慣行、人々の意識、さまざまな政策や制度等が、依然として戦後の高度成長期、昭和時代のままとなっていることが指摘されています。
ダイバーシティ(多様性)の認識はあるものの、根本的な改革にはほど遠い状況が続いていると言えます。
今や女性の半数は90歳以上まで生きます。
平均寿命は女性87.71歳、男性 81.56歳ですが、死亡年齢最頻値は女性93歳、男性88歳で、100歳を超える人は、令和2(2020)年時点では女性69,757人、男性9,766人となっています。
まさに人生100年時代といえますね。
昭和の時代、多く見られていたたサラリーマンの夫と専業主婦の妻と子ども、または高齢の両親と同居している夫婦と子どもという3世代同居は減少し、一人ひとりの人生も長い歳月の中でさまざまな姿をたどっています。
こうした変化や多様化に対応した制度設計や政策が、今求められていると言えます。

では、具体的調査で得られた客観的な数値の紹介をしましょう。

◯家族の姿の変化・人生の多様化~結婚と家族の現状~
平成27(2015)年~令和元(2019)年は、婚姻件数は約60万件で推移しました。
また、離婚件数は約20万件となり、婚姻件数の約3分の1で推移しています。
コロナ下の令和2(2020)年以降は、婚姻件数は、令和2(2020)年52.6万件で、令和3(2021)年51.4万件(速報値)となり、戦後最も少なくなっています。
昭和55(1980)年と令和2(2020)年の配偶関係別の人口構成比を見ると、この40年間で男女ともに「未婚」と「離別」の割合が大幅に増加しました。
令和2(2020)年時点の30歳時点の未婚割合は、女性は40.5%、男性は50.4%でした。
50歳時点で配偶者のいない人の割合は、令和2(2020)年時点では男女ともに約3割になっています。
そして、50代女性は19.4%、60代女性は18.4%、50代男性は13.3%、60代男性は12.9%が離婚経験があります。
50~60代の現在独身の人に着目すると、女性は約半数が離婚経験があり、男性は半数以上がこれまで一度も結婚していたことはないことが分かりました。
「雇用者の共働き世帯」は増加傾向にある一方、「男性雇用者と無業の妻から成る世帯」は減少傾向です。
令和3(2021)年の「雇用者の共働き世帯」は、「男性雇用者と無業の妻から成る世帯」の2倍以上となっています。
昭和55(1980)年から令和2(2020)年にかけて、20歳以上の女性の単独世帯は3.1倍(うち未婚は2.3倍)、男性 の単独世帯は2.6倍(うち未婚は1.7倍)に増加しています。
就業している単独世帯の女性と男性を比べると、世帯所得300万円未満の世帯は、女性は53.3%、男性は31.9%と女性の割合が高くなっています。
単独世帯もそれ以外の世帯も、女性の場合は200~299万円に分布が集中しています。

◯結婚や離婚、家族を取り巻く状況はどうなっているでしょうか。
「配偶者、恋人はいない(未婚)」との回答は、男女ともに全世代で2割以上にのぼっています。
20代の女性の約5割、男性の約7割が「配偶者、恋人はいない(未婚)」と回答しています。
「配偶者(法律婚)がいる」と回答した人は、女性は20代で約2割、30代で約6割、40代以降で約7割でした。
男性は20代で14%、30代で約5割、40代以降で6~8割となっています。
20代の独身者では、女性の方が男性よりも「結婚意思あり」の割合が高いですが、40代以降となると女性の割合が減る一方、男性の場合は、40~60代も2~4割が結婚願望を持っています。
「結婚意思なし」との回答では、女性は20代で14.0%、30代で25.4%、男性は20代で19.3%、30代で26.5%になっています。
積極的に結婚したいと思わない理由について独身の男女で比較してみると、女性の場合5割前後となっている項目は、「結婚に縛られたくない、自由でいたいから」「結婚するほど好きな人に巡り合っていないから」といった回答です。
男女間での差があり、女性の方が高いものとしては、「仕事・家事・育児・介護を背負うことになるから」「名字・姓が変わるのが嫌・面倒だから」などがあがっています。
男性の方が高いものは「結婚生活を送る経済力がない・仕事が不安定だから」となっています。
令和2(2020)年に離婚した人の別居を開始した年齢は男女ともに30代が最も多く(女性32.5%、男性 30.3%)、続いて40代(女性27.5%、男性28.8%)、20代(女性21.4%、男性15.8%)となっています。
将来「離婚可能性あり」と回答した人は、男女ともに約15%です。
40~50代の男女について、既婚者と独身者(居住形態別)の個人年収を見てみると、独身女性で個人年収 300万円未満(収入なし含む)なのは、「1人暮らし」が約5割、「親と同居」が約6割となっています。
独身男性では「700万円台以上」の割合が、既婚者と比較して低い傾向にあります。

◯人生100年時代における男女共同参画の課題はどうでしょうか。
人生100年時代を迎え、日本の家族と人々の人生の姿は多様化し、昭和の時代からは一変しています。
今後、男女共同参画を進めるに当たってはこのことを念頭において、誰ひとり取り残さない社会の実現を目指すとともに、幅広い分野で制度・政策を点検し、見直していく必要があるといえます。
長い人生の中で 経済的困窮に陥ることなく、 尊厳と誇りをもって人生を送ることのできる 社会の実現が求められています。

こうしたことから、今後具体的には次のような政策が求められるでしょう。

◯個人単位の保障・保護/無償ケア
・マイナンバー制度等を踏まえた、 個人を単位とした制度設計

◯女性の経済的自立を可能とする環境の整備
・男女間賃金格差の解消
・成長産業への女性の労働移動
・ケア労働への評価、女性が多い保育
・介護等の分野の賃金の改善
・地方における女性活躍推進

◯早期からの女性のキャリア教育
・将来の職業選択に資する情報提供
・女性の就業に直結するリスキリングの機会の提供やリカレント教育等

◯柔軟な働き方の浸透させ、働き方をコロナ前に戻さない
・テレワークや在宅勤務の一層の普及
・ワーク・ライフ・バランスの実現
・女性が昇進を目指せる環境作り

◯男性の人生も多様化していることを念頭においた政策
・男性相談窓口の整備や拡充
・結婚支援、子ども・子育て支援
・デートDV、ハラスメントに関する教育や啓発

いずれにしても、これからは多様化への対応を迫られることは明らかです。
家族中心の社会の枠組みから、個人をターゲットにした制度設計や政策へと舵を切ることが強く求められます。
そのことはまさにQOLジャパンが目指すところの各個人のQOLを高めることに繋がり、ひいてはwell-beingを叶えることになることでしょう。(ま)

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