QOLの原点を知る

さて、今回の話題は「QOLの原点を知る」についてのお話です。

QOLとは「Quality of Life(クオリティ・オブ・ライフ)」の略称で、日本語では「生活の質」などと訳され、一人ひとりが健康で、自分らしくより豊かな生活を送り、幸せな人生を叶えようとする概念です。

当法人では、QOLを「生命の質」「生活の質」「生き方の質」ととらえ、その向上を通して、健康や幸福を表す Well-being を叶えることを目的として活動しています。

そこで今回は、学び直しの意味もこめて、QOLの言葉の歴史や誕生した背景などについて紹介させていただきたいと思います。
以下は文献などの紹介となりますので、少し硬いお話しになりますが、どうぞお許しください。

QOL という言葉の歴史については、これまで発表されたいくつかの論文や文献がありますが、ここでは、九州保健福祉大学の福本安甫 名誉教授が発表された「QOL研究機構研究報告書2005」という報告書から引用させていただきます。

QOLという言葉が出来たのはいつごろかと いいますと、はっきりした文献がないのですが、一番最初は 1945年頃に “QOL” の意味にあたる事を臨床的な場面で使った方がいます。 アメリカのカルノフスキーという方が、がん患者への臨床試験において、QOL に近い概念 を使ったのが最初じゃないかなと思います (図 1.QOL概念の誕生)。

【Quality of Life の誕生】図 1.QOL概念の誕生

1945:QOL概念の登場はがん患者への臨床試験で始まる
(米) Karnofsky :performannce status scale
          ※ 1948:WHO- 健康の定義について発効
1960:QOL概念が社会政策上に登場
(米)市民社会の幸福に関する大統領委員会発足
-QOL関連4項目の検討-
・Examine the Quality of individual’s Live
・Evaluate the Needs for Individuals
・Develop Program to Minimize the Deficits
・Devise Methods to Assess the Outcome Potential Program
1964:用語としてのQOLは米大統領の政策演説で初めて使用
(米)36代大統領Lyndon B Jonson:Great Society Program
*物資重視から豊かさ重視への政策転換 → 以後政策上の重要な課題となる.

さらにその後に、QOLという言葉が最初に今の概念に近い かたちで出てきたのは 1960 年にアメリカの 社会政策上の用語として捉えられます(図1)。
図 1 に「QOL 関連 4 項目の検討」とあります が、ここに挙げたうち、Examine the Quality of individual’s Liveという言葉が一番近いのじゃないのかなと考えられております。

1964 年になって”Quality of Life”という言葉がきちっと使われたのが、ジョンソン大統領(Lyndon B.Johnson)の”Great Society Program” という政策の発表の中の事でした。
1960 年代というのは、日本でもそうですが復興の時期でして、産業が活発化していって 物質重視の時代だった。それがやがて、少し 落ち着いてきて、「豊かさ」を求めるような政 策が必要になってきた。そのような段階で用いられたのが”Quality of Life”だったと考えられます。

【Quality of Life の発展】 図 2.QOL概念の発展

1967:QOLに関連した運動が盛んとなる
(英)ホスピス運動(St. Christpher’s Hospice )
(米)バイオエシックス運動(患者の権利擁護と生命倫理)
1972:患者の知る権利の法的確立
(米)インフォームド・コンセントの法理;Canterbury v Spence
1976:がん治療に社会心理学・行動学・リハとの共同研究開始
(米)National Cancer Institute(NCI)
1979:QOL概念を臨床医学へ導入
(米)第58回リハ医学会
1984:QOL概念を日本の医療界へ導入 概念を日本の医療界へ導入
(日)Workshop in Tokyo; Quality of Life in Cancer Patients
以降,医療分野を中心に本格的な QOL 研究が始まった

これが理論の中で発展してきたのが 1967年頃(図2)。60年代後半から皆さんご承知のように人権運動というのが盛んになる。特にバイオエシックス運動のような生命倫理、アメリカではインディペンデントリビング、といったようなものがこの段階で出てくる。人権問題と “Quality of Life”とが強く関連するようになりました。

最初、末期ガンの患者さんをどうするかという問題から出発しています。
こうやって医療界の中に”Quality of Life”という考え方が 取り入れられていった訳です。
それが日本に入ってきたのが 1984年で、がんの患者さんに対する治療の一つの考え方となりました。この後なんですね、日本で QOL 研究が進んだのは1980 年代後半を中心に、特に医療、がん患者の治療を中心に発展してきました。用語としてもいつのまにか医療の世界、福祉の世界で使われるようになった印象 があります。

さらに我々の中で、特にリハビ リテーションの分野の中でこの QOL というのは特に重要視されています。 これが一つの流れであって、それまでの医療が質的に転換を迫られてきた。治療患者さん主体性で進められる時に、このQOL という 事が考えられるようになってきた。ですから、 QOL というのはまわりの人がそれを必要とする人に「どうしていけばいいか?」を考える事です。ご本人が、自分がどうなんだと考える事ではない、まわりがある人達のためにどうすればいいかを考えるのがもともとこの QOL という言葉の持つ
意味といえます。
以上、QOL(クオリティ・オブ・ライフ)とはなにか -人が生きる質を考える-より全文引用。

QOLはこのように、医療や介護、福祉などの分野で重要視されてきた考え方ですが、問題は「質」です。
現在のQOLの考え方は、誕生当時に比べて、その分野も広範囲に及ぶものになっていますが、「質」を意識した考え方に変わりはありません。
昔も今も変わることなく、QOLを高めるには、自分のニーズや価値観に合った生活(人生)を送ることが最も大切で、QOLは、一人ひとりが自分の人生に満足し、幸せに生きるための基盤となるものです。

ここで、ある映画を一つご紹介したいと思います。
最近、趣味で昔の映画に触れる機会が増えました。
その中で、久しぶりに観た映画の一つに、最もQOL(生活の質)の本質をついた映画がありました。

ご存知の方もいらっしゃるかもしれませんが、「パッチ・アダムストゥルー・ストーリー」というロビン・ウィリアムズ主演の映画で、実在のアメリカの精神科医パッチ・アダムスの若き日を描いたヒューマンドラマです。
この作品では、医学生のパッチが医学会の常識を覆すような行動で、とにかく患者を笑わせようと努力する姿が印象的です。
患者を笑顔にしたい!、ユーモアが治療には一番効果があると信じる彼が、薬や装置による制約の多い延命よりも、患者が自らの希望通りに生きることを尊重し、その実現に向けてユーモアたっぷりに手助けします。

そして最後に、医学会の重鎮を前にパッチが訴えます。
私が医者になってやりたいこと、医者がやらなければいけない本来の治療とは「生の質を高めること!」、「質の高い生を与えることだ!」、と訴える場面では、思わず胸がいっぱいになりました。

この映画はまさしく、患者にとって最も良い「治療」とは何か?を問う作品で、改めてQOLについて考えさせられる最高の映画でした。

後日談ですが、パッチ・アダムス医師は、何度か日本にも講演のために来日されていたようです。
そして、講演の際には決まって下記の言葉を述べられていたそうです。

○パッチの「7つの信条」

  1. ひとをケアする理由はただひとつ。人間を愛しているからです。
  2. ケアは愛を動詞化する。ケアは概念ではなく、行動です。
  3. ひとを思いやるという人生を送ることによって、あなたは自分のなかで一番深い平和と安らぎを得る。
  4. 良い意味のお返しをすること(良きカルマを積む/カルマからの解放)。
  5. 平和のためにクリエイティブになる。例えば、死の床でアメイジング・グレイスを歌う。
  6. 情熱を持ち、不可能だと思っていた夢を見る。
  7. ひとをケアすることは、科学的見地からしても、あなたのためにいいことがある。
    以上、日本に講演の為来日した際に、ケアに対するパッチ・アダムス本人の発言から。(ウィキペディアより引用)

いかがでしょうか。
QOLを向上させるためには、自分の幸せだけではなく、他者の幸せや社会の発展にも貢献することが必要だといわれています。
QOLは、自分だけではなく周りの人や社会との関わり方にも大きく影響しますし、心身の健康や人間関係、仕事、教育、遊びや余暇、住環境などさまざまな要素に影響されるからです。

今回は、QOLの原点についてのお話しをいたしましたが、QOLについて決まった定義は無いと言う説がもっぱらです。

QOLは多様性そのもので、一人ひとり異なります。
何をどうすれば QOLが上がり、Well-being 度が増すのかは人それぞれです。
大切なのは、常に感謝の気持ちを持って、自分にとっての QOL、自分にとっての幸せ、を追求することから始まるのではないでしょうか。(ふ)