小学校での「チーム担任制」とは?

さて、今回の話題は「チーム担任制」という学校における新しい試みについてです。

神戸市の小学校の6年生では、3人の先生が2クラスをローテーションで担任する「チーム担任制」といった方法で試験的に学年運営をしています。

例えば、今週の担任はO先生が1組、A先生が2組、U先生は学年全体を見守る「学年担任」といった感じになります。
これが毎週ローテーションしていくわけです。

この週、「学年担任」のU先生は、朝の会では「担任」のサポート役に回ります。
U先生のお話しです。
「朝の時間だったら『休みは誰かな、連絡来てないかな』の確認作業があります。
担任の先生は各クラスの子どもたちと話したりするので、学年担任の私が職員室で家庭に確認のための電話をしたりします。
今までであれば担任1人で全部連絡して確認を取った後に、教室へ戻って子どもたちとの授業へという流れになっていましたが、必ず先生が1人ずつクラスに滞在できるので、すごくいいなと思います。」

○今まで以上に質の高い授業が可能に
教える教科も3人の間で分担しています。
U先生は国語と理科を担当しています。
この日の1時間目は担当の授業がなかったので、空いた時間で2クラス分の宿題の添削や他の業務をこなします。
U先生のお話しです。
「今までであれば放課後に丸付けをしたり、持ち帰って自宅で続きするという感じで、実際夜の9時、10時までやることもありましたし、朝早く起きてやったこともありました。今は持ち帰りがほとんどないので、自宅へ帰って自分の趣味とか家事をしたりとかの時間が取れています。」
帰宅時間は?との問いには、「帰宅時間は平均午後6時前後ですかね。だから空が明るいと思いながら帰ってます。」とのことでした。
「2時間目の担当教科である国語の授業では、 2クラス分の業務を3人で分担することで、授業の準備が十分にでき、今まで以上に質の高い授業ができていると感じています。」

○心強くて、みんなでやってるのが本当にありがたい
休み時間になると、先生たちは逐一情報共有をします。
O先生のお話しです。
「雨降っていたので、体育の種目をバレーボールに変えて、同じように1組もバレーボールにしてあげてください。」と伝えることで意思疎通を徹底し、クラスによって偏りがでない指導方針とすることで、「チーム担任制」がうまく進みます。
A先生のお話しです。
「この悩みはこの先生に、この悩みはこの先生にというのが、子どもたちにとってすごくいいことかなと思います。」
O先生のお話しです。
「単純に心強く感じます。自分で1つのクラスの責任を持たないとダメっていうときに孤独感を感じる時があるんですけど、チーム担任制であれば、みんなでやってるという思いあるので本当にありがたい。」

○子どもたちにとっても大きな変化となりました。
「1人1人の個性が全ての先生にみられるので、いいと思います。」
「色んな先生の意見が聞けるので自分の考えも深まり、いいと思います」

校長先生のお話しです。
「まだまだ課題もありますが、この新しい制度に期待を寄せています。」
「先生が色々かわることで、この先生はこんな良いところがあって、自分をこんなふうに認めてくれているって、そういう関わりができると、子どもたちもたくさんの子が救われるのではないかと思います。」

学校が保護者に対して実施したアンケートでは、「多くの先生がいることで安心できる」などの肯定的な意見が目立った一方で、「どの担任に相談すればいいのか分からない」など様々な声が寄せられています。
神戸市教育委員会は、「誰を頼りにすればいいのかというはっきりしない部分があると思います。そのあたりは学校が積極的に情報発信していくとか、窓口になる担当教員をまずは作ってみるとか、試行錯誤することにはなると思います。」との見解を述べています。
また今後は、「チーム担任制」について検証を行い、来年度からは、他の学校への導入も目指したいとしています。

注目すべき点は、「チーム担任制」という制度は文部科学省からのトップダウンで始まった制度ではなく、現場の教師からボトムアップでスタートした制度であることが画期的なことだということです。
また、教師が現在よりも細かく子どもたちに目を向けることにより、より密度の濃い指導なり学習が可能となることで、子どもたちのQOLの向上が図れるのではないかと考えられます。
更にブラックな職場であると言われてきた先生の職場環境が改善され、教師のQOLの向上にも一役買うことに繋がるといえるのではないでしょうか。

「チーム担任制」では肯定的な意見が多いですが、この制度を広く導入していくためには、何より“教員不足”を解消していくといった課題が横たわっていると言えるでしょう。
この制度が神戸で根付き、他の都道府県への拡がりを見せることになるか否かを、今後注目していきたいと思っています。
そして結果として、子どもたち、先生両方のQOL向上が図れることに繋がっていくかの検証をしっかりとしていただきたいと念じるばかりです。