胸を張って歩いて行く


こんにちは。 ウクレレ講演家・盲目のセラピスト亀ちゃんです。
先月からQOLジャパンさんとの共創企画で、「我れ以外、みな我が師なり」の言葉にあるように、私が様々なことから学ばせてもらった「ちぃーさな幸せの入り口」をお話させていただいています。
今月もどうぞ、よろしくお願いします。

2020年に盲導犬「シエル」との新しい生活が始まりました。
その時に準備として、盲導犬協会で4週間の共同訓練合宿がありました。
食事や排便の世話に始まり、ブラッシングや歯磨きなどの日常生活のこと。
そして、歩き方や指示の出し方、ルールやエチケットのことなど、色々なことを教わりました。

例えば外出の時は犬の洋服を着せます。
これはファッションが目的ではなく、電車の中などで「抜け毛」が周りの迷惑にならないようにという配慮からです。
同じように、「外出先で排便をしないように、家で排便を済ませておく」というのがありました。
それを聞き、「街中での排便はダメなことで、盲導犬とシエルに恥をかかせてしまう」という考えから緊張が私の心に生まれました。

それでも盲導犬にも体調があるので、家で済ませていても、街中で出てしまうということがあります。
ある日の通勤ラッシュの朝、大阪の地下街でそれは起きました。
シエルの動きを不審に思った私が、まさかと思いながら床面を手探りで確認していたら、「わっ!」と思った瞬間に、ウンチが手に付いてしまいました。

通りがかりの女性が「何かお手伝いをしましょうか?」と声を掛けてくれ、私が取り出したビニール袋にウンチを取ってくれました。
すると別の女性が手を拭くようにとウエットティッシュを私に渡してくれました。
私が床が汚れていると思い、持ち歩いている濡れ雑巾で床面を拭きとると、また先ほどの女性が追加のウエットティッシュをくれました。
すると3人目の女性が「これを使ってください」と紙袋を出して私にくれました。
私がお礼を言いながらウンチの袋とウエットティッシュを紙袋に入れ、それをリュックに片付けようとしたら、その人が「通り道にゴミ箱があるので、私が捨てておいてあげますよ」と受け取ってくれました。
皆さんの優しさが、私の恥ずかしさを温かく包み込んでくれました。

また別の日。
同じような状況が地下街で起きました。
私がビニール袋に手を入れて、手探りでウンチを探していたら、優しい女性の声が聞えてきました。
「大丈夫ですかぁ?」
私が「はい、大丈夫なんですけど、(ウンチが)下に落ちていますか?」と尋ねると、「はい、落ちていますねぇ」と教えてくれました。
「どの辺ですか?」とビニール袋の手を差し出すと、「もう少し右です。もう少し下」と、教えてもらい、袋に収めることが出来ました。
「はい、それで全部です」と言ってもらい、「ありがとうございました。助かりました」とお礼を言いました。
すると、「私、車いすなので何もお手伝い出来なくて、ごめんなさいね」の言葉が聞こえてきました。
私は「えっ…」と、思いがけない言葉に、一気にこみ上げる涙で言葉が出せず、ただただ頭を深々と下げました。

街中には愛と優しさがあふれていました。
「恥ずかしい」や、「迷惑になってしまう」の思いは、私が勝手に自分の心に描いていたことだと気づかせてもらえ、心が緩みました。
何かあってもシエルと一緒に、胸を張って歩いて行きます。

ちなみに最近は私もキャッチング技術を高め、ほぼ確実にウンチが落ちる前にキャッチできるようになりました。

ニコッ! 幸せの入り口屋 亀ちゃん