幸せホルモンで、幸福感いっぱいの well-being を叶える方法

さて、今回の話題は「幸せホルモン」についてのお話です。

「幸せホルモン」とは、私たちの心や体に良い影響を与え、幸福感を高めてくれる脳内物質のことをいいます。

一般的には、セロトニン、オキシトシン、ドーパミン、エンドルフィンの4種類を指しますが、3種類(セロトニン、オキシトシン、ドーパミン)を紹介している場合も多く見受けられます。

ご存知の通り、「幸せホルモン」という用語は医学的な専門用語ではなく、俗称で、いずれも神経伝達物質に分類される脳内の化学物質です。

おそらく、皆さんも名称等は聞かれたことがおありかと思いますが、特にこの4種類の物質は、脳の中の神経系において特定のシナプス間で分泌され、それによって特定の神経回路や行動に影響を与える神経伝達物質として重要な役割を担っています。

4種類の幸せホルモンには、それぞれ以下のような特徴があります。

1.セロトニン
セロトニンの役割として最も有名なのは、「心のバランスを保つ」というもので、不安やイライラを抑え、精神状態を安定させてくれますので、幸福感や満足感を感じやすくなります。
セロトニンが不足する一番の原因はストレスとされています。
よって、分泌量が低下すると、さまざまな気分障害や不安障害が生じます。

セロトニンの役割にはそのほか、「最適な覚醒をもたらす」「自律神経のはたらきを整える」といった大変重要な役割を果たしています。
また、あまり知られていませんが、睡眠覚醒のサイクルや体内時計の調節、血圧調節や体温調節など、生存に必須となる機能をいくつも制御しています。

さて、ここで質問です。
Q1.これほどまでに重要な役割を担っているセロトニンを増やすには、どうすれば良いのでしょうか?


答えは、「トリプトファン」を摂ってセロトニンを増やしましょう!、です。
また、朝一番で太陽の光を浴びたり、ウォーキングやリズム運動なども大変効果的です。

トリプトファンとは必須アミノ酸の一種で、セロトニンは主にトリプトファンを材料として合成されます。
いわば、セロトニンを合成するための出発点となる、なくてはならないものと言えますが、このトリプトファンは体内では生成できませんので、食事から摂らなければなりません。

食べ物から摂取したトリプトファンは、日中は脳内でセロトニンに変化し、夜になると睡眠を促すメラトニンに変化します。
そのために、トリプトファンが不足すると、不眠症や睡眠の質の低下を引き起こす原因ともなります。

Q2.それでは、これほどまでに重要な役割を担っているセロトニンの合成に欠かせないトリプトファンを摂取するには、どうすれば良いのでしょうか?


答えは、「栄養バランスのとれた食事」をとろう!、です。

栄養バランスのとれた食事とは、主食、主菜、副菜を揃えて食事をすることですが、トリプトファンの摂取には欠かせません。
トリプトファンが多く含まれている食材は主に、大豆・豆腐・納豆・きな粉などの大豆製品、チーズ・牛乳・ヨーグルトなどの乳製品、米などの穀類などです。その他、ごま・カシューナッツなどの種実類やナッツ、卵、肉や魚などに多くのトリプトファンが含まれています。

補足ですが、ここでバナナもおすすめしておきたいと思います。
バナナは、トリプトファンの含有量が突出して多いわけではありませんが、セロトニンの材料として必要となるトリプトファンのほか、ビタミンB6、炭水化物のすべてを含んでいるため、効率的にセロトニンを作ることができる優れものです。

2.オキシトシン
オキシトシンは、別名「愛情ホルモン」とも呼ばれています。
相手を思いやって何かを分け与えたり、助けたりすることで、オキシトシンが分泌されることから、そのように呼ばれるようになりました。
人に優しくすることでオキシトシン量が増加しますので、もし、幸福感が足りないと感じることがあれば、人に親切にしたり役に立ったりすることで、善い効果が期待できるかも知れません。

例えば、最近流行っている「推し活」は、自分にとってイチオシの人やキャラクター(=推し)を応援する活動のことですが、推しのことを考えたり見たりすることで、オキシトシンが分泌されるといわれています。
またオキシトシンを増やすには、スキンシップなどの身体的な接触、ペットとのふれあい、友人や家族との交流などコミュニケーションを楽しむ活動などが有効で、これらの行為は間違いなく分泌を促し幸福感を高めてくれます。

そして、オキシトシンの最も重要な役割としては、特に出産時の陣痛や授乳に関連して放出されることが知られています。
陣痛時においては、オキシトシンは子宮収縮を誘発し、赤ちゃんの出産を適切に促す非常に重要な役割を果たします。
また授乳時には、赤ちゃんが母乳を吸うと母親の体内でオキシトシンが分泌され、乳腺から母乳を提供することが可能になります。
このようなことから、オキシトシンには母親と赤ちゃんを守り、絆を強化する効果があると考えられているのです。
まさに「愛情ホルモン」ですね!

3.ドーパミン
ドーパミンは、別名「脳のやる気スイッチ」と呼ばれています。
主に、「運動機能」と「心のはたらき」に関与する神経伝達物質です。
ドーパミンの分泌が活性化されると、学習能力や仕事の能率アップが期待できるほか、達成感、快感、喜び、感動などをもたらし、人間らしい心のはたらきの源になっている重要な役割を担っています。

好きなことをしたり、自分の興味や情熱に時間を割くことは、ドーパミンの分泌を促し、幸福感や達成感をもたらします。

人にはドーパミンの量を調節することで、自分が起こした行動によって得られた報酬を素早く学習し、次の行動でより多くの報酬(ご褒美)が得られるように、適切な行動をとるしくみがあると考えられています。
つまり、「こうしたらもっと良い結果が得られるから次はもう少し工夫してやってみよう」といった、やる気をコントロールしている物質です。
このしくみは、「報酬系」と呼ばれており、モチベーションに深く関わっています。

このように、ドーパミンは大変素晴らしいはたらきをするのですが、反面、調節や抑えが効かなくなると、ドーパミンの暴走によって、依存症(ギャンブルや買い物、ゲームなど)を引き起こすことが知られています。
また、ドーパミンが運動機能にも関与していることから、ドーパミンの放出が少なくなると、パーキンソン病を発症することも分かっていますので、今後の予防や治療技術の研究が早く進むことを願わずにはおられません。

4.エンドルフィン
エンドルフィンは、ストレスや痛みに対して自然の鎮痛剤のような働きをし、「体内で分泌されるモルヒネ」を意味する神経伝達物質です。
エンドルフィンは、食欲、睡眠欲、生存欲、本能などが満足すると分泌され、笑ったり、恋愛感情で心がときめいている際にも分泌が活性化され、幸福感が高まると言われています。

以前、ある医師から聞いた話ですが、「闘病中の患者さんでも、楽しみを見い出す人は、先々を悲観する人に比べて、痛みを訴える頻度が低く、治療効果も高い」ということが、医療の現場では実際にあるようです。

また、このエンドルフィンが関係している代表的な作用に「ランナーズハイ」という現象があります。
これはマラソンなどで長時間走り続けると、ある瞬間から苦しさや痛みが消えて、一時的に気分が高揚し多幸感をもたらす現象です。
わたしは体験したことはありませんが、魔法の「幸せホルモン」ですね!

以上、4種類の「幸せホルモン」のお話し、いかがでしたでしょうか。
今回ご紹介した「幸せホルモン」は、わたくしたちのQOL(生活の質)に直接影響を与え、いずれも多ければ多いほど善いというわけではなく、適度なバランスの上に成り立っていると言えます。
そしてやはり、幸せな健康長寿の秘訣は、「食事」「運動」「睡眠」にあるということでした。

人生100年時代をより善く生きるため、ぜひ「幸せホルモン」の知識や情報を活かして、幸福感いっぱいのwell-being を叶えてみてはいかがでしょうか。