センスオブコヒーレンスを育てよう!

さて、今回の話題は、ストレスの対処に欠かせない力として注目されているセンスオブコヒーレンスのお話しです。

センスオブコヒーレンスとは、自分の人生に納得できている、腑に落ちているといった感覚のことで、日本語では首尾一貫感覚と呼ばれたりします。
センスオブコヒーレンスは、1970年代初頭、医療社会学者のアーロン・アントノフスキー博士によって提唱された概念です。
アントノフスキー博士は、ユダヤ人強制収容所への収容経験を持っていたり、難民生活を強いられるなどのストレスフルな状況を生き抜いてきた更年期の女性たちの心身の健康状態について研究していました。
そういった過酷な経験をしている人たちなのに、ある一部の女性たちは心身ともに良好な状態を保っていることが分かりました。
その人たちに共通する心理状態のことを、【センスオブコヒーレンス】と名付けたのです。

精神科医の斉藤環氏によると、センスオブコヒーレンスには3つの感覚によって成り立っていると言われています。
◯把握可能感
自分の置かれている状況を一貫性のあるものとして理解し、説明や予測が可能であるとみなす感覚のこと。
【わかる】と思える状態。

◯処理可能感
困難な状況に陥っても、それを解決し、先に進める能力が自分には備わっているという感覚のこと。
【なんとかなる】と思える状態。

◯有意味感
いま行っていることが自分の人生にとって意味のあることであり、時間や労力など一定の犠牲を払うに値するという感覚。
【どんなことにも意味がある】と思える状態。

『そんなの生まれた時から授かっている特別な力でしょ?』 『そんな力を持っているのは恵まれた人だけだ』 と思う人もいるかもしれません。
しかし、実は先天的なものではなく、後天的なものであることが分かっています。
この3つの要素をバランスよくしていく方法を知り、日常生活で意識していけば、誰でもセンスオブコヒーレンスを育てていくことができます。

センスオブコヒーレンスを育てる3つの方法とは?

◯資源集め
例えば、相談できる人の存在の有無、知識、ストレス発散法など、ストレスフルなことを目の前にした時に、それを乗り越えられる資源を持っておきましょう。
山登りをする時に手ぶらで登る人はいませんよね?ストレスも同じことで、何か会った時のために普段から資源を集め準備しておくことが、結果として自分自身を守ってくれます。

◯現状を見つめる習慣
困難なことに直面すると、『あれがいけなかったんじゃないか』 『こうなってしまったらどうしよう』 と言ったように、戻れない過去やどうなるかわからない未来のことを考えがち。
過去や未来のことに意識が向きすぎると不安を強め、よりストレスをためてしまうことに。
過去や未来は変えることができなくても、現状なら自分で調整していくことができます。
『今必要なことは何か』 というように、現状に意識を向けていく練習をしてみましょう。

◯できていることに意識を向ける
できていないことに注目し続けると、気持ちがしんどくなってきますよね。
そこでオススメしたいのが、どんなに小さなことでもいいので、できていることに注目してみること。
『今日はこれができた』 『〇〇したことでこんないいことができた』 といったように、できていることを明確にしていくと、それが自信ややりがいへとつながっていきます。

ストレス社会と共存していくために、コロナ渦や戦争など、今は世界的にストレスフルな状況の中に置かれており、ストレスな出来事とどのように向き合っていくかが試されています。
そして今後もきっと予期せぬ困難に直面することもあるでしょう。
そういった時に自分を守ることができるのは自分。
これを機にストレスへの対処や準備について考えてみませんか?