脂肪酸の驚くべき効用と注意点について

さて、今回の話題は「脂肪酸の効用と注意点」についてのお話です。

油(脂質)は、炭水化物、たんぱく質と共に、三大栄養素として、生命を維持していく上でなくてはならない栄養素です。
脂質を構成する重要な成分である脂肪酸は、人間のからだの細胞を作るために必要で、食品を通してバランス良くとる必要があります。また、脂肪酸はエネルギー源としても使われます。

近頃では健康志向の高まりによって、健康を維持するため、「脂肪酸の効用を謳った」サプリメントや飲料などの機能性表示食品を取り寄せて、日頃より摂取されている方も多いのではないでしょうか。

先日、そのような脂肪酸人気からでしょうか。
国民生活センターの「見守り新鮮情報 第469号(2023年12月5日)発行」に、「即席カップめんの容器に穴が・・・発泡ポリスチレン製容器にMCTオイルやえごま油等を加えないで!」という注意喚起を促す情報が掲載されておりました。

●主に即席カップめんや総菜等の食品に使用されている発泡 ポリスチレン製容器に、MCT オイル(中鎖脂肪酸油)等の食用油を加えたところ、容器が破損して湯が流出したという 相談が寄せられています。
●容器の変質・破損を招くため、添付以外の食用油等は加えないでください。
容器から漏れ出た湯でやけどをするおそれも あります。
●添付以外の食用油等を加えたい場合は、即席カップめんの中身を発泡ポリスチレン製容器以外の容器に移してから加えるようにしましょう。

という内容のものでした。
国民生活センターでは、最新の消費者トラブルに関する注意情報や消費生活相談の分析調査、商品テスト結果などを適宜掲載しています。

わたし自身も、ご多分に漏れず「オメガ脂肪酸」を配合した機能性表示食品を定期購入していますし、アマニ油のドレッシングなども使ったりしていますが、このような消費者トラブルにつながる脂肪酸があることを初めて知りました。
そこで今回は、近頃、特に注目されている人気の「脂肪酸」について詳しく調べてみることにいたしました。

油の主成分である脂肪酸は、炭素の構造的な違いから、飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸に大別されます。また、炭素を結ぶ鎖の長さ(炭素数)によって、長鎖脂肪酸・中鎖脂肪酸・短鎖脂肪酸に分類されます。
そして不飽和脂肪酸は、一価不飽和脂肪酸と多価不飽和脂肪酸に分けられ、さらに、多価不飽和脂肪酸は「n-3系(オメガ3系)」と「n-6系(オメガ6系)」に分けられます。
いずれも体内で合成することができないため、食べ物から摂取する必要があることから必須脂肪酸とも呼ばれています。

中でも、最も注目を集めている人気の脂肪酸は「オメガ3脂肪酸」で、総称を「n-3系多価不飽和脂肪酸」と言います。
「オメガ3脂肪酸」は、体内のさまざまな機能にとって重要な多価不飽和脂肪酸に属しており、研究結果では特に生活習慣病予防・認知機能改善などの効果があると報告されています。

「オメガ3脂肪酸」に属する脂肪酸としての代表格は、健康食品ではおなじみのDHA(ドコサヘキサエン酸)やEPA(エイコサペンタエン酸)、ALA(α-リノレン酸)が有名です。

DHAは、認知機能改善効果がヒトで報告されているほか、「オメガ3脂肪酸」の中で唯一脳に取り込まれ、脳の活性化にも関わっていると言われています。
またEPAは、血液サラサラ効果や中性脂肪低下作用がDHAよりも高いと報告されています。
DHA・EPAは、特に青魚(サンマ・イワシ・サバ・アジ・ブリ・マグロのトロなど)に多く含まれています。

そしてALA(α-リノレン酸)は、血圧低下作用が報告されており、血管を拡張させ、血液の流れをスムーズにすると言われており、えごま油や亜麻仁油などに豊富に含まれています。
また、その他の食べ物では、オメガ3脂肪酸は葉物野菜やアブラナ科の野菜(ブロッコリー、カリフラワー、芽キャベツなど)、クルミなどにも多く含まれています。

ただし、DHA・EPAなどのオメガ3脂肪酸は、調理方法によって摂れる量が異なり、摂り方にも気をつける必要があります。
揚げ物や炒め物などの調理には向いていませんし、調理用油としての使用はあまりおすすめできません。というのも、オメガ3脂肪酸は非常に酸化しやすい油だからです。
酸化スピードが早く、ボトルの封を開けた瞬間から、使わなくてもどんどん酸化が進んでいきますので注意が必要です。

次にご紹介する脂肪酸が、「オメガ3脂肪酸」と人気を二分する「中鎖脂肪酸(ちゅうさしぼうさん)」です。

中鎖脂肪酸は飽和脂肪酸の一つで、特にこの中鎖脂肪酸のみ(100%)で作られているMCTオイルが注目されています。
MCTオイルとは、ココナッツやパームの種子など、ヤシ科の植物に含まれる天然成分「中鎖脂肪酸」だけで作られているオイルのことを言います。

MCTオイルは、一般的な植物油に含まれている長鎖脂肪酸と比較して、約4倍も消化・吸収が早く、エネルギーとして速やかに代謝されるため、体脂肪が蓄積されにくいことが特徴です。
このため、最近では炭水化物(糖質)に変わるエネルギー源として、ロカボやケトジェニックダイエットなどの糖質制限ダイエットを実践している方々にも愛用されているようです。

また、MCTオイルによって産出される「ケトン体」が、筋肉や脳のエネルギー源として活用される点や、MCTオイルが胃もたれを起こしにくく、食が細い高齢者の低栄養対策に適している油であることから、近年特に注目を集めているのです。

そして、中鎖脂肪酸(MCTオイル)によるダイエット効果や集中力アップ効果がアメリカの実業家によって紹介されてからは、「完全無欠コーヒー」としてメディアで取り上げられることもありました。
完全無欠コーヒーとは、シリコンバレー発祥のバターコーヒーで、ブラックコーヒーにグラスフェッドバターとMCTオイルを混ぜてクリーミーにした飲み物のことです。
しかしながら、MCTオイルは過剰摂取すると、逆に太ったり、腹痛や下痢などの症状が出ることがありますので注意が必要です。

何ごとも、ほどほどが一番です。
今回は、「脂肪酸」について取り上げてみましたが、脂肪酸一つとっても数多くの種類があり、種類によって身体に対する働きが異なります。

私たちの周りはさまざまな情報であふれています。
何が本当に身体に良いのか、どの情報が正しくて何が眉唾物なのか、判断するのが難しいくらいです。
そのようなとき、判断基準となるのはやはり、科学的根拠や証拠、または裏付けといった「エビデンス」ではないでしょうか。

健康維持や増進が図れると謳っている「機能性表示食品」は数多くありますが、残念ながら今はまだ研究が進行中で、わずかな根拠はありますが、まだまだ効果を結論づける科学的根拠は十分ではありません。

今年最後となりましたが、ここで、年末を迎えるにあたり、わたしたちの輝かしい未来につながる話題を下記に紹介して終わりたいと思います。

先日の12月17日(日)の日本経済新聞 朝刊に、世界の半導体大手を支え、スマートフォンの「頭脳」を牛耳っていると言われている、英アームのレネ・ハース最高経営責任者(CEO)の取材記事が載っていました。
そこには、人工知能(AI)が身近になった今、AI革命は人類にどんな世界をもたらすのか、についての考えが「直言」として述べられていましたが、その中に非常に印象的で心に残る記事がありました。

それは、AI革命によって今後「どのような産業が生まれてくるのか」という記者の問いに対しての言葉で、「健康と気候変動が巨大市場になるだろう」。
現時点では難しいことが(人知を超える)汎用AIによって可能になるからだ、というものでした。
「健康産業の多くは非常に一般的な情報で成り立っている。健康でいたければお酒は飲むな。たばこは吸うなといったように」「でも、私のDNAとあなたのDNAは違う。先祖も違う。それが分かれば(一般論ではなく個人単位で)食生活などの観点から、すべての人が何をすべきかが正確に分かる。
これは大きなチャンスだ。医療産業にはディスラプション(創造的破壊)の機が熟していると思う」

以上ですが、いかがでございましたでしょうか。
近い将来、ほぼ間違いなくそのような時代が訪れるのだとは思いますが、怖いような、有り難いような不思議な感覚です。
日本は、「老いに対処することが最大の課題」になると言われています。
世界で最も早く高齢化が進む中、AI革命によって、誰もが自分にとって最適な健康を見いだす術を手に入れることができるようになるかもしれません。

昨今のテクノロジーなどの進歩、社会変化のスピードは想像もできないほど、驚くべき速さで進んでいます。
皆さまの健やかな未来に向け、QOL↗のヒントが今後共、より良く生きるための一つのきっかけとなり、ご判断の一助になれば幸いです。
いつもご愛読くださいまして、本当にありがとうございます。
年末も押し迫って参りました。どうぞお身体に気をつけて良いお年をお迎えください。(ふ)