急がれる、脱炭素社会の実現に向けての取り組み

さて、今回の話題は「脱炭素社会の実現に向けて」についてのお話です。

先般、国連のグテレス事務総長がニューヨークの国連本部で記者会見し、「地球温暖化の時代は終わり、地球沸騰化の時代が来た」と述べられた言葉は衝撃的でした。
過去に例を見ない熱波や洪水、山火事などの自然災害が相次ぎ、「異常気象がニューノーマル(新常態)になってしまっている」と全世界に向け警告されたのですから、気にとめずにはおられません。

私たちの日常の暮らしの中でも、この夏の記録的な猛暑や台風の大型化など、気候変動リスクを身近に感じることが増えましたし、持続可能な生活基盤として大切な居住環境への影響も危惧されます。

しかしながら、このグテレスさんの発表の中で唯一救われたこと、最も印象に残ったことは、「われわれは、まだ最悪の事態を食い止めることができる」という一言でした。

日本は、2020年10月に、2050年までに「カーボンニュートラル」を目指すことを内外に宣言いたしました。
カーボンニュートラルとは、二酸化炭素(CO2 )などの温室効果ガスの排出量と吸収量を均衡させ、その排出量を「実質的にゼロ」に抑えることを意味します。

世界全体が、脱炭素社会へと舵をきったきっかけとしては、2015年に仏パリで開催された国連気候変動枠組条約締約国会議(COP21)で締結された「パリ協定」が有名です。
パリ協定では、世界共通の長期目標として「世界の平均気温上昇を産業革命以前と比べて1.5℃ 以内に抑える」という目標と共に、その実現のために、2050年までに温室効果ガスの排出量実質ゼロ(カーボンニュートラル)を目指すことが採択されました。

また、パリ協定と時期を同じくして、持続可能な開発目標(SDGs)が国連総会で採択され、2030年までに達成するべきSDGsの17の目標の中に、目標13の「気候変動に具体的な対策を」が設けられ、地球の未来にとって重要な取り決めがなされました。

そのようなことから、世界では一斉に脱炭素化に向けて、化石燃料からの脱却が加速し、再生可能エネルギーの発電に占めるシェアは拡大しましたが、残念ながら日本の取り組みは遅れてしまい、現在でも再生可能エネルギーはまだ2割程度にとどまっているのが現状です。

再生可能エネルギーとは、資源に限りのある化石燃料とは異なり、太陽光や風力、地熱、中小水力、バイオマスなど、自然界に常に存在するエネルギーで、発電時に温室効果ガスを排出せず、国内で生産できることから安全保障にも寄与できる大変重要なエネルギーです。

そして、最近ますます注目を集めている次世代エネルギーが「水素」です。
特に、再生可能エネルギーで作った「グリーン水素」は、製造時も使用時も二酸化炭素(CO2)を排出しない夢のようなエネルギーです。

気候変動が人間の営みによって引き起こされ、気候危機のレベルで進行し、このまま進むと近い将来、取り返しのつかない深刻な影響が生じることは明らかです。
そのためにも、地球規模の課題である気候変動問題の解決に向けて、いっそう力を入れることが求められています。

そんな中、最近見たテレビ番組で、子どもたちによる気候変動問題の解決に向けた素晴らしい学習プログラムが紹介されていました。
それは、「阪急阪神未来のゆめ・まちプロジェクト」が毎年夏休みに開催するプログラムの一つとして、関西テレビが主催した「オープンスクール@カンテレ」という小学生を対象にしたイベントでした。

何が素晴らしかったかと言いますと、「カンテレの気象予報士と気候変動について考えよう!」というテーマがあり、その中で片平気象予報士が「地球温暖化とその危機」について非常に分かりやすく説明をされたことと、その後の子どもたちの発表が大変素晴らしく、具体的な対策やアイデアはすべて自分事として考えられたものでした。

「地球は130年前と比べると気温が1℃上昇しています。地球も一つの生き物であると考えると、みんなの体温が 36.5℃から37.5℃になってしまったら、とってもしんどいよね? 地球も今、そういう状態だと言えるのです。」
といった例えで、誰にでも大変分かりやすく、平均気温がわずかに上昇しただけでも、とても大きな問題であることを説明されていました。

本当に分かりやすくて良い話ですよね!
その後各グループの一人ひとりが、自分たちでできる温室効果ガスの排出を削減するために具体策やアイデアを熱心に語っている姿を見て、改めて脱炭素社会への取り組みを再認識したわけです。

そんなわけで、ここで改めて、国連広報センターによる「1.5℃ の約束ーいますぐ動こう、気温上昇を止めるために。個人でできる10の行動」をご紹介したいと思います。
誰もが気候変動の抑制に貢献できます
気候危機に立ち向かうために、以下の10の行動から始めましょう。

1.家庭で節電する
2.徒歩や自転車で移動する、または公共交通機関を利用する
3.野菜をもっと多く食べる
4.長距離の移動手段を考える
5.廃棄食品を減らす
6.リデユース、リユース、リペア、リサイクル
7.家庭のエネルギー源を替える
8.電気自動車に乗り替える
9.環境に配慮した製品を選ぶ
10.声を上げる

いかがでしょうか。
分かっていたとしても、ついつい負担を感じて億劫になったり、快適さや利便性を優先してしまって、実際の行動には至っていないことも多いのではないでしょうか。

政府はグリーントランスフォーメーション(GX)を推進しています。
GXとは、脱炭素社会を目指す取り組みを通じて、経済社会システムを変革させ、持続可能な成長を目指すことを意味しています。
その一環として、さまざまな再生可能エネルギーの導入拡大に向け、新たな技術の開発や手段への補助にも取り組んでいます。

そこで最後になりますが、私たちに関係する、気候変動対策に関連する最新のニュースを二つお伝えしたいと思います。

まずは、2024年度より、環境省が住宅や商業ビルの窓や壁などと一体となった太陽光発電の導入を支援することが発表されています。
次世代の太陽電池として期待される「ペロブスカイト型太陽電池」などは、日本初の技術ですが、折り曲げられるほど薄くて軽いのが特徴です。
耐久性や発電の変換効率、コストなどの課題はあるものの、日進月歩で技術開発が進んでいますので、将来は補助の対象になる可能性があるといわれています。

2つ目は、ご存知の方も多いと思いますが、2024年度から「森林環境税」という税金が徴収されることになるようです。

この森林環境税は、国内林業の衰退や放置林の増加、地球温暖化への対策などを背景に、これまでの東日本大震災の復興税と入れ替えで設けられた国税で、国内に住所がある個人に対して 1 人当たり年1000円 が住民税に上乗せされる形で徴収されます。
そして、年間約600億円と見込まれる税収の全額が、「森林環境譲与税」として都道府県や市町村へ譲与され、地球温暖化対策に繋がる森林整備などに役立てられるとのことです。

昨今の物価上昇の折りですが、今年は本当に気候変動について考えさせられた夏でした。

地球温暖化による海水温や海洋環境の変化によって、最近では大衆魚といわれたサンマなどの漁獲量が減少し、札幌中央卸売市場では、根室で初水揚げされたサンマが一匹に換算して2万8千円の超高級魚として競り落とされたというニュースには驚かされました。

今では一匹3百円前後と価格も落ち着いているようですが、これまでのように未来永劫いつまでも、生秋刀魚(サンマ)などの旬の味覚を憂いなく存分に味わいたいものです。
そのためにも、まずは自分ができることから、脱炭素社会の実現に向けて、何か次につながる行動を始めてみたいですね!