バーンアウトにご注意を!

さて、今回は「バーンアウト」にスポットを当ててみました。

読者の皆さん方は「バーンアウト」という言葉を耳にしたことはありますでしょうか?
社会人が一度バーンアウトの状態に陥ってしまうと、復調するのに時間と労力がとてもかかってしまうと言われています。
コロナ禍で増えたともいわれるバーンアウト。
今回は、バーンアウトとはそもそも何物なのか、また、なってしまうと大変というならば、それを防ぐ方法などがあるのかについてご紹介することにしましょう。

○さて、バーンアウトとはどういったことを言うのでしょうか。
バーンアウトは日本語で「燃え尽き症候群」と呼ばれています。
具体的には、それまで熱心に仕事に邁進していた人が、突然やる気を失ってしまうことをいいます。
バーンアウトは、アメリカの精神心理学者であるハーバート・フロイデンバーガーが1970年代に提唱した概念です。
なんと50年も前から、社会人にとってはバーンアウトは気をつけるべき症状であるとされてきたのですね。
ある意味、社会人病と言えるものかも知れませんね。
バーンアウトの社会的背景について、この問題を一番最初に取り上げたアメリカでは、社会における個人主義の浸透に原因があるのではと指摘されています。
親類や友人などまわりの人間関係が希薄になっていく中で、生活上のさまざまな問題の解決を、専門家であるヒューマンサービス従事者に依存する人々が増加しました。
この急速な需要の拡大に、受け手側のヒューマンサービスの現場が対応しきれなくなってしまったのです。
つまり、ヒューマンサービスに対する人々の要求が増大する一方で、それらの負担が、少ない人的資源に委ねられてしまい、そのためそれに携わっていた多くのサービス従事者が過重な負担に耐えきれずスレスを訴えるようになったと考えられます。

では、ここで出て来たヒューマンサービスについて少し触れておきましょう。
ヒューマンサービスとは、顧客にサービスを提供することを職務としている職業の総称で、代表的なものとしては、看護師、教員、ヘルパーなどが挙げられます。
彼らの活動領域としては、医療、教育、福祉などの公共サービスが中心となります。
また、公共サービス以外にも、レジャーや宿泊施設の従業員、客室乗務員、一部の営業職なども広い意味でヒューマンサービスに含まれると言えます。
その人の知識・技術に基づく無形の成果、つまりサービスを顧客に提供することで、その代償として賃金を受け取っているという点で、彼らの職務は共通しているといえます。

また、最近の日本においても欧米と同様に、個人主義的考え方が社会に浸透し、所謂日本で言われている「家」の崩壊や地域社会の空洞化を招いた結果、教育や介護など生活上の諸問題に関して専門家に頼ろうとする傾向は日増しに高まっていると言えるでしょう。
かつては、顧客と直接コミュニケーションをとる職業の人がバーンアウトに陥りやすいとされていましたが、最近では職種に関わらずバーンアウトの症状が出るリスクがあるようです。

○それではバーンアウトの症状にはどういったものがあるのでしょうか。
バーンアウトはさまざまな研究が進み、Maslach Burnout Inventory(MBI)と呼ばれるバーンアウトか否かの判断を下すための規準が出来ています。
MBIによると、次の3つがバーンアウトの代表的な症状であるとされています。
また、これら3つのバーンアウトの代表的症状はそれぞれが独立したものではなくて、互いに関係し合っているところも押さえておく必要があると思われます。
では、その3つをご紹介しましょう。
①情緒的消耗感
情緒的に仕事へ力を尽くした結果、疲れ果ててしまった状態を情緒的消耗感と表現します。
特に注目すべきは、身体的な疲労ではなく情緒的であるという点です。
顧客や同僚の気持ちを思いやり、時にはプライベート面も含めて配慮しながら信頼関係を築こうと努力を重ねた結果、情緒的に消耗してしまう状態に陥ってしまいます。
誠心誠意がんばったのに、そのがんばりに応じた成果が得られず疲れ果ててしまうというのがこの典型的な症状となります。
②脱人格化
顧客や同僚に対して、思いやりのない態度を取ってしまう症状を脱人格化といいます。
人は情緒的なエネルギーがなくなると、自分を守るために脱人格化の行動を起こしてしまうのです。
問題が起きたらすべて人のせいにしてしまう、あるいは他人の悪口が増えるといった行動がその典型と言えます。
③個人的達成感の低下
情緒的消耗感があらわれ脱人格化の状態に陥った人は、顧客や同僚とコミュニケーションの齟齬が起き、どうしても仕事の質が落ちてきます。
成果も急激に落ちて達成感ややりがいが得られなくなった結果、自尊心も傷つけられ休職や退職につながってしまうケースもあります。
こういったケースが個人的達成感の低下と呼ばれる症状です。
以上がバーンアウトの代表的な3つの症状です。

○あてはまったら要注意!バーンアウト前にみられる兆候とは?
バーンアウトを起こす要因には、個人要因と環境要因の2つがあります。
この2つも、しっかりと押さえておく必要があるでしょう。
①個人要因
バーンアウトに陥りやすい人の特性として、求められる成果以上のものを出そうと仕事をがんばり続ける人
顧客や同僚と深い関係性を築こうと努力する人、といったことが挙げられます。
「がんばり屋さん」「完璧主義者」の人は要注意と言えますね。
自分が高く掲げた理想に届かなったときが特に要注意で、バーンアウトの症状が出てしまう恐れがあります。
まずは自分がこれらの特性がないか考えてみてください。
ひたむきに仕事をがんばり続け、仕事で関わる人と信頼関係を築く努力をしたにも関わらず、逆にやる気が削がれたり、顧客や同僚の顔を見るのも嫌だと感じたり、行動を起こし始めたりしたら要注意と言えるでしょう。
感情のコントロールが難しくなっていく「バーンアウトの一歩手前」にいるかもしれません。
②環境要因
今の仕事環境に「過重負担」の傾向があるなら要注意です。
残業が多かったり、高いノルマを課せられていたりしないでしょうか。
また最近ではリモートワークの浸透により、在宅勤務では仕事とプライベートの境目が曖昧で、切り替えが難しいとの声もよく聞きます。
いつの間にか仕事時間が長引いてしまうこともあるようです。
このようなケースだと感じたら、注意が必要かもしれませんね。
あるいはプライベートで深刻な問題を抱えている場合も、バーンアウトにつながるリスクがあります。

○バーンアウトの予防策
バーンアウトは誰でも陥る可能性があるからこそ、あらかじめ予防策を知っておきたいものですね。
・自分自身がバーンアウトにならないために意識すべきこと
まずは基本的な予防策として、どんなに忙しくとも食事と睡眠をしっかり取って身体を休めてください。
心身が健康であってこそ、いい仕事ができるのです。
リモートワーク中心の働き方をしている人は、仕事とプライベートの線引きも意識しましょう。
業務時間を終えたらメールや電話は極力見ないようにし、精神的にオン・オフの切り替えをしてください。
また、働く部屋と寝室を分けられればベストですが、ワンルームの部屋に住んでいる人は、働く場所とリビングエリアの間にパーテーションを立てるだけでもメリハリがつけられて良いでしょう。
・職場のメンバーがバーンアウトにならないために意識すべきこと
あなたが人事部門にいたり、部下や後輩がいたりする場合には、バーンアウトしてしまうメンバーを出さないために、職場としての予防策も考えたいものですね。
特に、新入社員や転職者、他部門からの異動者についてはケアが必要です。
彼ら・彼女らは新たな職場で意欲的になっている一方、情報の在り処が分からなかったり、顧客や同僚との関係性をまだ築けていなかったりするため情緒的消耗感を覚えがちです。
職場の予防策としては、メンバーの業務時間や目標に対する達成状況をチェックし、過重負担になっていないか確認する仕組み作りが必要です。
近年、多くの企業で導入が進む「1on1」(上司と部下で定期的に行う1対1のミーティング)は部下の状況をこまめに確認でき、バーンアウト予防につながるでしょう。
メンバーの役割が曖昧だったり、情報共有が不十分だったりしてはいないかも要チェックです。
これらが整っていないとメンバー間の余計なコミュニケーションが増え、結果として情緒的に消耗してしまう恐れがあります。

○バーンアウトになってしまった時の対処法
万が一、自分や職場の同僚がバーンアウトになってしまったらどのような対処をすればいいかもおさえておきましょう。
・自分自身がバーンアウトになった場合
まずはとにかく休息する必要があります。
できるなら仕事を休職し、身体と心の両方を休ませてください。
がんばり屋さんや完璧主義者の傾向がある人は自分を甘やかしていると感じてしまうかもしれませんが、決してそうではありません。
今の自分に最も必要なことが休息なのだと言い聞かせて、たっぷり睡眠を取り、リラックスした生活を送りましょう。
感情の起伏が落ち着いてきて、心身ともにリラックスできたと感じてから、今後のキャリアについて考えれば良いのです。
その際は「仕事第一主義」になりすぎないように注意しましょう。
自分の人生にとっての仕事の位置付け、仕事とプライベートとのバランスの取り方について、今一度じっくりと考えてみることが大切でしょう。
そしてその後で、元の職場に復帰するか新たな職探しをするかを決めていくと良いでしょう。
・職場のメンバーがバーンアウトになった場合
バーンアウトになってしまい、仕事の成果も上がらなくなったメンバーは休職させてあげましょう。
そして大切なのは、メンバーがバーンアウトになってしまった職場の環境要因を考え、再発防止策を打つことです。
残業過多になっていなかったか?
無理なノルマを課していなかったか?
メンバーの役割は明確だったか?
必要な情報が共有される仕組みは整っていたか?
メンバー一人ひとりの特性やスキルレベルに応じたケアはできていたか?
といった観点で、職場環境の振り返りをしてみてください。
職場をひとつのチームとして、チーム全体で現状把握を行うと共に、再発防止策などの改善策を練り、情報共有を行うことが大切になってくるのではないでしょうか。

○まとめ
真面目に仕事をする人ほど、バーンアウトになりやすいともいえますが、バーンアウトを起こす要因には環境要因もあります。
心の風邪と言われるうつ病と同じく、誰もが罹ってしまう恐れがあることを肝に銘じていただきたいと考えています。
そして罹患するリスクはコロナ禍で増していることを踏まえながら、自分の心身の健康状態に常にチェックを入れて仕事をしていきましょう。
少しでもバーンアウトの兆候を感じたら、まずは予防策から取り組んでみてください。
予防も含めて、深刻な状態に陥る前のケアが何より大切です。

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