ソーシャル・ジェットラグには要注意!

さて、今回の話題はソーシャル・ジェットラグ(社会的時差ボケ)のお話しです。

休日にたくさん睡眠をとったはずなのに、勤務日になったら「あれ?体がだる~い…」。
このように感じた経験はありませんか?
身体がだるい原因は、もしかすると「ソーシャル・ジェットラグ(社会的時差ボケ)」が起こっているからかもしれません!

では、「ソーシャル・ジェットラグ(社会的時差ボケ)」ってどんなことなのでしょうか。
ソーシャル・ジェットラグとは、「平日は仕事や学校、家事などの規則正しい社会生活を送っていても、休日前夜に夜更かしや休日に 朝寝坊をして就寝時間や起床時刻がずれると、それをきっかけに体内時計が乱れ、眠気が取れない、だるい、頭が重い等といった“時差ボケ”のような症状が起こること」を指し、10年前にドイツの研究者が名付けました。
これは、休日だけの生活リズムの乱れと軽く考えがちですが、身体への影響は決して少なくないのです!!
研究結果を数値化をすると、夜型生活の人は朝型生活の人に比べると、
死亡リスク1.1倍
糖尿病リスク1.3倍
うつ等の精神疾患のリスク1.9倍
にそれぞれ上昇するといった結果が出ています。

それでは、もう少し細かくリスクの数々をご紹介しましょう。
・自律神経失調症
・睡眠障害によるリスク
・高血圧
・抑うつ感(うつ病)
・認知機能低下(認知症リスク)
・気分障害
・糖尿病につながるインスリン抵抗性の増大
・虚血性心疾患(心筋梗塞・脳血管疾患)
・脂質異常症
・グレリンの上昇(食欲増進ホルモン)
・肥満・メタボリックシンドローム
これはもう、命の問題に発展してしまいますね!

それでは、ソーシャル・ジェットラグは命に関わる重大な問題として、もう少し深掘りしてみることにしましょう。
◆自覚がない睡眠不足ほど危ない!
「自分はよく眠れているから関係ない」と思われた方もいらっしゃるでしょう。
しかし、油断はできないのです。
なぜならば、現代人の多くが自覚しない睡眠不足を抱えている可能性があること、さらに、自覚を伴わない潜在的睡眠不足でも、心身機能に影響があることが科学的に証明されているからなのです。

戦後70年の間に睡眠時間は1時間減少したとの報告もあり、2014年のOECD(経済協力開発機構)の調査によれば日本人の平均睡眠時間は7時間22分とOECD加盟国中最下位で加盟諸国の8時間25分と比べても1時間の差がでています。
したがって戦後以降、日本人は潜在的に睡眠不足を抱えているといえそうです。

「寝だめでうまく調整しているから大丈夫」これは大きな間違いです。
なぜなら、週末の寝だめでは「心身のダメージ」は十分に回復できていないからです。
にも関わらず、寝だめによって一時的な眠気が取れてしまうために、睡眠習慣を見直さないまま、ますますソーシャル・ジェットラグ(社会的時差ボケ)が酷くなる悪循環にはまってしまうことになります。
ソーシャル・ジェットラグ(社会的時差ボケ)は、「なんとか社会生活をやりくりできる」状態であるがゆえに、反面とても危険ものだと言えるのです。

◆ソーシャル・ジェットラグ(社会的時差ボケ)の影響は大人だけ??
ソーシャル・ジェットラグは昼間の眠気が起こり、頭の働きの低下や抑うつを増やし、仕事のパフォーマンスも低下することが報告されています。
この問題は実は大人に限ったものではないのです。
週末に朝寝坊をする子どもは、平日は早寝早起きの生活を送っているにも関わらず、体調不良、かぜの引きやすさ、朝の不機嫌さなどの不調の度合いが「やや夜型」の子どもより大きかったという研究結果も発表されています。
これをきっかけにして、ご家族でソーシャル・ジェットラグのない生活習慣への見直しをしてみませんか?

◆ソーシャル・ジェットラグ(社会的時差ボケ)を防ぐための5カ条
〜休日の寝だめを抑えることで体内時計を調整していく〜

第1条 快眠はまずは規則正しい生活から
人は寝だめができないことが証明されています。
規則正しい生活によって、体内時計がホルモンの分泌や生理的な活動を調整し、睡眠に備えて準備してくれます。
この準備については自分の意志ではコントロールできません。
体内時計を整え、体を睡眠に導くために毎日同じ位の時刻にベッドに入り、定時に目覚める習慣をつけ、寝だめを避けることで体内時計の乱れを抑えられます。
また、起床時間は2時間以上ずらさないようにしましょう。
睡眠不足な方は、睡眠不足解消のために30分以内の短い昼寝をとることをオススメします。

第2条 夜遅い時間に食事をしない!
体内時計を整えるために規則正しい食事が望ましいです。
食べ物が消化・吸収されるまでに2~3時間が必要となります。
夜遅い時間に夕食をとると、胃の消化活動が活発になり、脳や肝臓の働きが活性化し、結果として睡眠が妨げられてしまいます。

第3条 光で体内時計を整える
朝に太陽光を浴びると体内時計が整えられます。
起きたらまずカーテンを開けて、自然の光を部屋の中に取り込むと大変効果的です。
反対に夕方以降に強い光を浴びると睡眠が妨げられます。
夜の光には体内時計を遅らせ夜型に近づける作用があり、時刻が遅くなるほどその力は強まります。
照度が100~200ルクスの家庭用照明であっても、長時間浴びると体内時計が乱れる原因になります。
また、スマートフォンやパソコンの画面にも注意が必要です。
スマートフォンなどの画面にはブルーライトが含まれており、体内時計に影響を与えやすいと言われています。
スマートフォンは目のすぐ近くで操作するので特に影響が強いため、寝る前にはスマートフォンを操作しないようにしましょう。

第4条 適度な運動が良い睡眠をもたらす
日中に体をアクティブに動かし運動をする習慣のある人は、質の良い睡眠を得られるという調査結果があります。
運動の習慣化は、睡眠の質を高めるだけでなく、2型糖尿病や肥満・メタボリックシンドロームへの対策・予防にもつながります。
1日30分のウォーキングなどの運動がオススメです。

第5条 入浴して深部体温をあげる
睡眠は体の深部体温(脳や内臓の温度)の変化と深く関係しており、高くなった深部体温が下がる時に人は眠気を感じます。
就寝1~2時間前に入浴をすると深部体温があがり、その後に睡眠に入りやすくなります。

ここまでソーシャル・ジェットラグ(社会的時差ボケ)はどういったものなのか、また、身体への影響や具体的なリスクを紹介してきました。
リスクに関しても命に関わるものもあり、単なる生活習慣の乱れでは済まされないものであることや、大人に限らず子どもにもあることで、年齢を問わず全ての人においてソーシャル・ジェットラグが起こりうることをお伝えして、どうすれば防ぐことが出来るのか等の気になる対策を紹介いたしました。
過去においては、太陽が昇って沈むまでを基本とした規則正しい生活のリズムが、現代社会においては人の営みは多種多様となった結果、それによる生活パターンの変化で、過去では考えられなかったソーシャル・ジェットラグがそこかしこで発生する事態に陥ってしまいました。
今一度読者の皆さんにおいては、ソーシャル・ジェットラグをよく知り、QOLを向上してwell-beingを叶えるためのハザードとなっていることを認識した上で、ソーシャル・ジェットラグを防止して規則正しい生活のリズムを維持するための手段をご家族全員で相談されることをオススメしたいと考えています。
ソーシャル・ジェットラグ対策でより良いQOLの向上をめざしましょう!(ま)