高齢者が気を付けたい特殊詐欺・消費者トラブル

さて、今回の話題は少し物騒な内容ですが、「高齢者が気を付けたい特殊詐欺・消費者トラブル」についてのお話しです。

新聞やテレビなどを見ていると、日常生活を脅かすような何かと物騒な事件や事故などのニュースが毎日のように報道されています。
その中でも、特に高齢者を標的にしたオレオレ詐欺などの特殊詐欺の被害情報は多く後を絶ちません。ニュースを聞くたびに、なけなしの蓄えを一瞬にして奪う非道な手口に憤りを感じます。

筆者は消費生活相談員(消費生活アドバイザー)資格を所持している関係で、その勉強会において現実の被害事例に接するたびに、なぜ罪もない善良な人々を騙せるのか残念でなりません。
その手口はますます巧妙になっていて、私自身も絶対に騙されないという自信がゆらいでしまうほどです。
中には幸いにも、金融機関やコンビニの方からの声がけで被害を免れた方もいらっしゃるかもしれませんが、犯人は言葉巧みに話しを進めるため、一度電話に出てしまうと相手のペースに巻き込まれて冷静な判断ができなくなってしまうのです。

全国の警察署において、面接形式で行われた「オレオレ詐欺被害者等調査」では、
Q.あなたは特殊詐欺の被害にあう可能性についてどう思っていましたか? という質問に対して、A.自分は被害にあわないと思っていた、と回答された方が約8割いらっしゃいました。
また、Q.自分は被害にあわないと思っていた理由は? という質問に対しては、
A.だまされない自信があったから、と回答された方が大半で、A.自分には関係のないことだと思っていた、という方も多かったようです。
そして、A.いつも誰かに相談するようにしていたから(自分一人で判断しないようにしていたから)、という回答は残念ながら非常に少なく、9.5%しかありませんでした。
これは、Q.不審な電話やメールを受けた場合、誰かに相談しましたか? という同じような質問に対しても、A.誰にも話さなかった、といった回答が75.1%とほとんどを占め、今後の予防策を考える上で最も課題となっています。

ここでもし、冷静な第三者に相談することができれば、犯人の言葉巧みな話しによって、正常な判断ができなくなっている状況でも、「詐欺ではないか!」と気づくケースがほとんどなのです。
そのようなことから、全国の警察署では特殊詐欺からの被害を防ぐために、大きく下記の二つの対策を声高に打ち出しています。

対策その1【お金の話が出たときは必ず誰かに相談を!】
1.普段から、手口やだまし文句、対応などについて家族と話し合っておく。
2.離れて暮らしていても定期的に連絡を取り合う。
3.不審な電話やメールを受けた時は一人で判断せずに、本人に確認する、家族・警察に相談するなど、必ず誰かに相談する。
※相談できる相手がいない場合でも不安を感じたら躊躇せず、最寄りの警察署や警察相談専用窓口(#9110番)に相談してください。

対策その2【電話に出ないための対策を!】
1.電話番号通知サービスを利用し、「非通知」の電話に応答しない。
2.常時留守番電話を設定し、内容が確認出来るまでまで応答しない。
3.自動録音機などの防犯機能付き電話機を活用する。
※犯人の働きかけの多くは固定電話によるものですので、不審な電話に出ないように対策することが非常に有効です。

朗報として、この3月22日にNTT東日本とNTT西日本は70歳以上の利用者を対象に、固定電話に着信した電話番号を表示する「ナンバー・ディスプレイ」などのサービスを無料化すると発表しました。ありがたいことです。

現在、特殊詐欺の手口は約10類型に分類され、代表的なオレオレ詐欺をはじめ、預貯金詐欺、還付金詐欺、架空料金請求詐欺、金融商品詐欺、融資保証金詐欺、ギャンブル詐欺、交際あっせん詐欺、キャッシュカード詐欺盗、その他の特殊詐欺といった、人の心理につけ込んだ驚くほど巧妙な特殊詐欺が現れています。

警察庁の「特殊詐欺の認知・検挙状況等について」という公表資料によると、令和4年の特殊詐欺の認知件数は17520件、被害額は361.4億円、検挙件数は6629件と驚くような数字になっています。
残念ながら、特殊詐欺の認知件数及び被害額は、数々の取締りや上記のような被害防止対策が行われているにもかかわらず、総認知件数は未だ増加傾向にあり、被害額も8年ぶりに増加に転じているのです。

特殊詐欺の総認知件数における高齢者(65歳以上)の占める割合は86.6%で、内高齢女性の割合は66.2%となっています。
また、犯行の最初に用いられたツールは電話が9割近くを占めており、予め電話で住所や氏名、資産や利用金融機関等を探る予兆電話を行って犯行に及ぶことが増えています。

最近のニュースでも、フィリピンから強制送還された「ルフィ」なる特殊詐欺グループの存在など凶悪犯罪が多発しています。
このような一連の広域強盗事件を受けて、政府は、SNSで高額な報酬をうたう「闇バイト」情報の排除や、個人データを流出させる「闇名簿」の取締り強化を柱とした緊急対策プランを決定しました。
現在は警察が手作業で、闇バイト求人の情報などを探索しているらしいのですが、2023年度中には、人工知能(AI)で闇バイト情報を自動検索するシステムを導入し、インターネット事業者などに削除を要請するということです。

さらに最新の3月25日に発表された警視庁の調査では、何と特殊詐欺事件で取り調べた実行役の半数近くが闇バイトと接点があったとする実態調査の結果が明らかになりました。

その他、高齢者が被害を受けやすい消費者トラブルが、全国の消費生活センター等に寄せられた相談やこれまでの公表資料などから明らかになっています。
国民生活センターでは敬老の日に際して、高齢者とそのまわりの方に気を付けてほしい「消費者トラブル最新10選」を発表しています。

1.屋根や外壁、水回りなどの “住宅修理“
2.保険金で住宅修理できると勧誘する “保険金の申請サポート“
3.“インターネットや電話、電力・ガスの契約切替“
4.“スマホ“ のトラブル
5.健康食品や化粧品、医薬品などの “定期購入“
6.パソコンの “サポート詐欺“
7.“架空請求“、“偽メール・偽SMS“
8.在宅時の突然の “訪問勧誘、電話勧誘“
9.“不安をあおる、同情や好意につけこむ勧誘“
10.便利でも注意 “インターネット通販“

皆さんは、上記のような消費者トラブルに巻き込まれたことはございませんか?
私は幾度かひやりとした経験がいくつかの項目でありました。
高齢者の消費者トラブルを防ぐためには、「見守りチエックリスト」などでトラブルの兆しはないか?、まわりの方が日頃から本人の生活や言動、態度などの様子を見守り、変化にいち早く気付くことがとても重要です。

これらのような、日常の生活の中で起こる契約や悪質商法におけるトラブル、製品・食品やサービスによる事故等のご相談で、どこに相談してよいかわからない場合は、一人で悩まずに消費者ホットライン188番をぜひご利用ください。

困ったときは【必ず誰かに相談を!】がポイントです。

最後になりますが、このような被害やトラブルは 私たちの QOL(生活の質)に直接影響します。
身近にいる家族が、 ココロ穏やかに「安全安心な暮らし」を送れるよう願わずにはいられません。
皆さまの日々の生活が平穏で、少しでもリスクの低減がなされるようお役に立つことができれば幸いです。