自助の力を高める「防災・減災への取り組み」とは

さて、今回の話題は「防災・減災への取り組み」についてのお話です。

先日の9月1日は「防災の日」でした。
この日が「防災の日」になったのは、日本の自然災害史のなかでも特に甚大な被害を及ぼした関東大震災が1923年(大正12年)9月1日に発生したことに由来しています。

特に本年は、「関東大震災から100年の節目」に当たりますので、各メディアなどでも、関連するニュースが大々的に報じられていました。

余談ですが、以前わたしが住んでいた大阪府吹田市の千里山にも、被災して関東方面から千里山に移ってきた人たちが世帯の半数近くを占め、銭湯では関西弁と関東弁が飛び交っていたと聞いたことがあります。
北摂に位置する千里山は、大正9年にイギリスの田園都市にならって開発された住宅地ですが、おそらく震災後の発展は、関東圏から移ってこられた多くの知識人の方々との共創によって、新たな「文化の香り」がする街が形成されたのではないかと推察しています。

今回、この「防災の日」「関東大震災から100年の節目」にあたり、改めてこの教訓に学び、防災意識を高める契機にしなければなりません。
自然災害から、いのちと暮らしを守り持続可能な生活を送るため、不測の事態に備える「防災・減災への取り組み」は欠かせません。

防災とは、災害を未然に防ぎ、被害をゼロにすることを目的とし、減災は災害は起きるという前提のもと、発生し得る被害を最小限に抑える取り組みを意味します。

日本は地理的に自然災害が多い国ですので、相次ぐ地震だけではなく、近年は気候変動の影響もあり、線状降水帯や台風による大雨被害、記録的猛暑など、自然災害の脅威は増すばかりです。

そのような背景からか、例えば、首相官邸ホームページのメニューには、政策欄に「防災の手引き」についての項目があります。
その中には、「災害が起きる前にできること」という表題で、災害に備えてご家族で取り組むべき主な対策、災害に対する心構えや知識、役立つ情報などが掲載されています。
ここで、その内容を抜粋して少し紹介させていただきますと、

○家具の置き方、工夫していますか?
○食料・飲料などの備蓄、十分ですか?
○非常用持ち出しバッグの準備、できていますか?
○ご家族同志の安否確認方法、決まっていますか?
○避難場所や避難経路、確認していますか?

○関連お役立ちサイト
・内閣府防災情報のページ
災害状況, 被害状況の公表のほか、防災対策情報や内閣府の防災に関する政策等を公開しています。
・TEAM防災ジャパン
防災に関する最新情報、自助・共助に関するアイディア、教育コンテンツが集約されたポータルサイトです。
・政府広報『防災・減災』お役立ち情報 
自然災害から命を守るため、知っておいてほしいこと(政府広報オンライン)
・防災ポータル
~「いのちとくらしをまもる防災減災」を⼀⼈ひとりが実⾏していくための防災情報ポータルサイト~(国⼟交通省)
・防災・危機管理e-カレッジ(消防庁)
親子で楽しめるクイズ形式の動画など、こどもから一般の方まで防災・危機管理についてサイト上で学習できます。

などのお役立ち情報が掲載されています。「防災・減災への取り組み」について、ぜひご参考にしていただければ幸いです。

また別の情報になりますが、先日9月1日の日本経済新聞の社説に興味深い記事が載っていました。それは「大震災100年 首都防災の死角減らせ」という表題の中で、社説の最後に執筆されていた「偽情報を見極める力を」という記事です。少し紹介してみますと、

SNSの時代だからこそ、情報への接し方は極めて重要だ。
最近の震災でも流言は飛び交っている。人工知能(AI)で偽画像を簡単に
作れる時代である。今後の災害では、さらに手の込んだデマが流れることを
前提として備えなければならない。(中略)
誰がいつ発信したのか。独立した別々の情報源から流れているか。そうした
背景を確認し、冷静に真偽を判断する。
普段からネット情報に接する際に必要な姿勢であろう。学校現場でも、子供
向けの情報リテラシー教育に一層力を入れる必要がある。
・・・といった記事でした。

わたしたちには、続発する災害のたびに得た多くの知見や教訓があります。
それを活かさない手はありません。
後悔して止まない被災経験からは、活かしきれなかった対策や予防インフラなど、災害を機に気付かせてくれる課題は山積しています。

災害対策には、自分自身や家族で備える「自助」、地域で助け合う「共助」、行政が行う「公助」の3つがありますが、やはり基本は「自助」の力を高めることが大事だといわれています。

しかしながら、「自助」への取り組みは簡単ではありません。
心情的には自然災害は必ず来ると思っていても、それが次にいつ、どのようにやって来るのか、わかりません。
災害リスクに備える必要性を感じていても、ついつい先延ばししてみたり、他人事として無防備なまま過ごしてしまいがちです。
また、大なり小なりこれまでいくつかの自然災害を経験していても、歳月が流れると、残念ながらその時の恐怖感や張り詰めた意識も徐々に低下していきます。

そのようなわたしたちの防災意識の変化や傾向を裏付ける、ある調査結果があります。
この調査は内閣府が5年ごとに行っている防災に関する世論調査で、「大震災に備えてどのような対策をとっているか」、その取り組み状況を18歳以上の3000人を対象に調べています。
2022年の調査結果を見ると、なんと大地震に備え食料や水を備蓄している人の割合は40.8%で、5年前の前回調査から4.9ポイント減っていることがわかりました。
また、家具の固定をしている人の割合も35.9%となり、やはり前回調査よりも4.7ポイント減少していたのです。

この調査は1984年から始まり、1995年の阪神・淡路大震災、及び2011年の東日本大震災などの災害を受けた直後は、災害対策への実施率は上昇傾向にあったらしいのですが、しばらくすると大震災への危機意識が低下し、災害対策への実施率も下がってしまいました。

そのようなことから、2023年版の「防災白書」では、被災時に自ら守る「自助」の取り組みへの広がりに課題があるとして、防災意識の向上が求められることとなりました。

自然災害の激甚化・頻発化など、災害リスクが高まる中、100%の安全・安心はあり得ません。
まずは災害への備えを他人事ではなく自分事と考え、住んでいる地域や場所についての災害リスクを自治体が公表している防災マップ(ハザードマップ)で確認することから始めてみてはいかがでしょうか。
また、各種団体や企業の「防災・減災への取り組み」情報も役に立ちます。

今後日本では、M7クラスの首都直下地震、南海トラフ地震が30年以内に70~80%の確率で発生するといわれています。

持続可能な生活基盤づくりのためにも、これまでに起こった災害の悲惨さ、教訓を忘れることなく、一人ひとりが危機意識を持って不測の事態に備えることが何よりも大事なことです。

2023年9月1日の「防災の日」を契機に、また「関東大震災から100年の節目」を迎え感じたことは、災害の怖さを感じた反面、「当たり前の日常が送れること」がどれだけ有り難いことか、ということでした。
そして「何気ない暮らしの中にこそ、いっぱい感謝すべきことや幸せがある」ということに気付かされました。
わたしたちのQOL、どのような状況であれ、「備え方次第」で少しづつ高めていけるかも知れませんね。