レアアース
さて今回は、昨年から世間で様々なニュースが飛び交っている「レアアース」の話題をお届けしようと思います。
ニュースなどでは「レアアース」で一括りにされて論じられることが多いですが、今一度「レアアース」って何なのか、「レアアース」の基本的な知識を深めていただき、今何が問題で、私たちのQOLにどのように関わってくるのかを考えてみたいと思います。
まずはやはり、「レアアース」とは何ぞやという概要の部分から入ってみることにしましょう!
「レアアース」は「希土類元素」とも呼ばれ、地球における存在量が少ないなどの理由で希少とされていて、超伝導、強磁性、触媒、光学、蛍光など様々な特性を有している、ネオジム(Nd)やジスプロシウム(Dy)など17の元素の総称です。
そして、スマートフォン、電気自動車、光ファイバーなどの私たちの生活に直結するハイテク製品の製造に不可欠な資源となっているのです。
現代社会の技術革新と製品発展に不可欠な「産業のビタミン」とも呼ばれる重要な資源で、当然、私たちのQOLの向上には欠かせないものだとの理解ができますね。
特に、温室効果ガスを大量に排出する化石燃料から、太陽光や風力などのクリーンエネルギーへ転換を進めて、経済や社会の仕組みそのものを持続可能な方向へ変革する取り組みであるGX(グリーン・トランスフォーメーション)の推進や低炭素社会の実現に欠かせない鉱物とされています。
では、「レアアース」と似たようなものと思われがちな「レアメタル」というものがありますが、このふたつの違いとは何なのでしょうか?
「レアアース」は、希少な金属の総称である「レアメタル」の一部に分類されます。
「レアメタル」は31鉱種あり、そのうちの1鉱種が「レアアース」です。
「鉱種」とは、鉱物資源を分類する際の種類の単位を指し、特に日本では「レアメタル」を定義する際に用いられます。
「レアメタル」とは、埋蔵量が少ない、抽出が難しいといった理由から、使用・流通の量が少ない非鉄金属のことになります。
リチウムやチタンといったなじみのあるものも多いです。
では次に、「レアアース」の用途を見てみましょう。
「レアアース」は、現代の様々な製品に利用されています。
主なものを3つ挙げてみましょう。
○ハイテク製品
一例として、ネオジムやサマリウムなどは、スマートフォンやタブレット、スピーカーなどの小型で高性能なハイテク機器の性能を向上させます。
また、半導体や光学機器などの製造にも欠かせません。
ハイテク業界において「レアアース」は、技術革新と製品の発展に不可欠な材料として重要な役割を果たしています。
○自動車
特に電気自動車(EV)のモーターやバッテリーに不可欠です。
ネオジム磁石はモーターの効率を高め、軽量化を実現します。
そして、高温の状況においても磁力を維持できる強みを持っています。
またリチウムイオン電池の性能向上にも寄与し、EVの航続距離を伸ばすことに貢献しています。
さらにハイブリッド車や燃料電池車でも使用され、エネルギー効率の向上や環境への配慮にも寄与しています。
○医療機器
「レアアース」は医療現場でも使用されています。
特に画像診断装置(MRIやCTスキャンなど)に使用する磁石や、X線管、レーザー装置、超音波検査装置などの医療機器において欠かせない材料となっています。
これらの医療機器に利用される「レアアース」は、診断精度や治療効果の向上に貢献しています。
また、特定の医療用医薬品や治療法にも使用され、癌治療や慢性疾患の管理などの先端医療技術にも利用されています。
「レアアース」の主な産出国は中国で、世界の生産量の約9割と多くを占めています。
中国には、「レアアース」の原料となる特殊な鉱石が豊富に存在します。
埋蔵量も、2024年でのデータでは、世界の約半分を中国が握っている状況になっています。
日本においては、現在約7割を中国からの輸入に頼っており、政治的な理由から今後も輸入が続けられるかどうかの懸念が広がっています。
前述したように「レアアース」はハイテク製品に広く使用されていることから、「デジタル化」にとって大変重要な資源です。
さらに、バッテリーや高性能モーター、風力発電のタービンといった電気自動車(EV)や再生可能エネルギー関連機器にも使用されており、「グリーン化」にとっても不可欠と言えます。
産業構造の違いなどから、各資源の供給網確保の優先度は国によって異なりますが、そのなかでも「レアアース」を最優先課題とする国は多いと言えるでしょう。
このようなことから、日本においては供給網確保が一国に偏らないように調達地域の分散化を図った結果、調達地域においては9割以上を中国に頼っていた時期から分散化を進めた結果、7割までになりました。
また、出来るだけ自国の範囲内で賄えるようにと資源探査を進めてきた結果、2012年に南鳥島沖の排他的経済水域(EEZ)の海底で「レアアース」を豊富に含む泥が確認されました。
なんと、この南鳥島沖の「レアアース」の埋蔵量は、国内消費量の数百年分相当と推計されています。
この資源探査結果を受けて、今年の2月1日に内閣府が主導する研究プロジェクトチームは、日本の最東端・南鳥島沖の深海から、世界で初めて「レアアース」を含むとされる泥を回収したと発表しました。
正に「研究の第一歩」を踏み出した状況ですが、次に気になるのがこの回収した泥から「レアアース」だけを取り出して利用出来る形にするための国内生産の行方です。
南鳥島の「レアアース泥」の埋蔵量は、中国・ブラジルに次ぐ世界第3位、1600万tが海底に眠っているとも言われているのですが、今回技術的に難しいと言われていた深海からの「回収」に世界で初めて成功しました。
まず最初に探査船「ちきゅう」を海流や波の影響がある中で海上で静止させ、船上で約10mのパイプを約600本接続して伸ばします。
そしてそのパイプを、先に海底6000mに沈めた先端部のユニットに無人機を見ながら接続します。
その後、探査船からパイプを使って下に海水を送り、先端部で「レアアース泥」をかくはんし、送った水とともに「レアアース泥」を船上に吸い上
げるといった高い技術により回収に成功したのです。
「レアアース泥」の回収成功について、関係者は「研究の第一歩という状況ですが、技術的にはすごいことをなしえたと言えます。」と評価しています。
一方で「レアアースの国内生産にはこれから10年以上かかると思った方が良い」とも述べています。
次のステップとしては「くみ上げたものをためて不純物を取り出す作業」が必要で、プラント化には時間が必要だということです。
これからの課題はコスト面にあって、アメリカのように高コストを受け入れて自国生産にするという道もありますが、中国以外の国からの輸入という道もあると言います。
現在、埋蔵量・生産量・精錬シェアともに中国1強となっている「レアアース」。
特に精錬については、精錬する際に出る放射性物質の処理に係る安全性や環境への配慮が日本に比べて低いため、圧倒的な低コストで市場を独占しています。
南鳥島の「レアアース泥」は、陸上鉱床と異なり放射性物質をほとんど含まないため、精錬時の環境負荷が小さい利点があります。
将来的には1日最大350tの泥を引き上げたいとしていますが、多くの課題も残されていることから、実用化にはまだまだ先の話かもしれません。
ただ、実用化が現実のものとなれば、今まで消費するために数多くの資源を輸入していた日本が、こと「レアアース」に関しては資源輸出国へ変貌することとなります。
その結果として、今を生きる私たち日本国民だけではなく、子どもたちや孫たちへ「レアアース」という大きな贈り物を渡すことが出来るのではないでしょうか。
また、レアアースと同様、海底資源にも大きな可能性が秘められています。
日本近海には多様な海底金属資源が埋蔵されており、日本財団と東京大学の調査では、南鳥島近海の有望海域におけるマンガン団塊(深海底に存在するマンガンや鉄を主成分とする球状の塊で、ニッケル、コバルト、銅などの有用金属も含まれる海底鉱物資源のこと)の存在量は2.3億トンになるということです。
含有するコバルト資源量は日本の年間消費量の約75年分以上に相当し、ニッケルは約11年分以上の資源量が見込まれる量となります。
レアアースを採取する地域周辺で、これらの海洋資源も一緒に採取できれば、コストをより低く抑えることも可能となることが考えられます。
現代社会の技術革新と製品発展に不可欠な「産業のビタミン」と呼ばれる重要鉱物の「レアアース」の資源輸出国を背景とした経済的なゆとりが、私たちだけでなく何十年先の未来に生きる子孫たちのQOLの向上へも繋がり、well-beingを叶える道筋となることに期待をしたいものです。(ま)

