指先で出会った言葉、心で感じたぬくもり

こんにちは、盲目のアイマスク講演家・亀ちゃんです。
私が昔「目が見えなくなる」と言われ、点字の勉強を始めたことは、このブログでも書きました。
点字は6つの小さな点の並びでできています。ブツブツの6つの点のうち、どの位置が出ているかで文字が決まります。その「どこが出ているか」を指先で感じ取るのはとてもむずかしく、途中であきらめかけたこともありました。
それでも毎日練習を重ねていくうちに、少しずつ点字の一文字一文字を区別できるようになり、やがて一つの文字を認識できるようになりました。その文字をつないで言葉になり、さらに文の意味がわかるようになったのです。
例えば「おはようございます」と読めるようになり、「今日はとても良い天気ですね」といった文章の意味まで理解できたときの感動は、今でも忘れられません。

そのとき私の中に浮かんだ言葉があります。
それは――「熟練とは、分離することなり」。
プロ野球で世界に誇る王選手は、飛んでくるボールの縫い目が見えたと言われています。
縫い目が見えれば、バットの芯で捉えてホームランにすることが可能になります。
あるピアニストの達人は「演奏中、音符が目の前でチラチラしている」と話していました。
料理の名人なら、ひと口味わうだけで調味料や材料を言い当てることができます。
英語の達人は、早口の会話の中から単語を一つひとつ聞き分け、意味を理解してしまいます。
むずかしい本も「読書百遍、意おのずから通ず」と言われるように、繰り返し読むことで自然に意味が見えてきます。

私自身もカウンセラーとして、多くの方のお話を聞いてきました。以前、会社の健康管理担当者と一緒にクライエントさんの面接に同席したときのことです。私は黙って話を聞いたあと、「こういうことがあって、こういう気持ちになり、この言葉によって最後に心が折れたように感じたのですね」と要約しました。
すると、横で必死にメモを取っていた担当者が、「西亀さんはどうしてメモも取らないのに、そんなに内容がわかるんですか?」と不思議そうに聞かれたのです。

それまで意識したことはありませんでしたが、何千人ものお話を重ねて聴くうちに、50分の面接の中の大事な部分が自然と浮かび上がって見えるようになっていたのだと気づきました。

繰り返し続けること。
それが熟練となり、やがて物事の本質が「分離して見えてくる」。
点字の学びから、私はそんな真理を教えてもらったのです。

小さな点を指先で追いかけながら、私は少しずつ言葉の世界に出会いました。繰り返し続けることで、点と点がつながり、文字になり、思いが届く。人の心も同じで、何度も耳を傾けるうちに、本当に大切な気持ちが浮かび上がってくるのだと思います。
熟練とは、技の話だけでなく、心と心がつながる温かな道だと気づきました。
今日も、あなたの心の指先が、誰かの想いにそっと触れますように。