遊びながら学ぶ ゲーミフィケーションとは

さて、今回の話題は「遊びながら学ぶ ゲーミフィケーションとは」についてのお話です。

先日、京都大学の「アカデミックデイ」という催しに参加し、そこで初めて「ゲーミフィケーション」という言葉に出会いました。
この催しは、参加者が研究者と直接対話できる場として企画されており、立ち話やちゃぶ台を囲んだ膝詰めの対話など、肩肘張らずに研究の現場を知ることができます。

私は京都大学とのご縁はありませんが、最近では多くの大学が地域住民にも学びの門戸を開いており、シニア世代にとっても貴重な生涯学習の機会となっています。地元の図書館や公民館も良いですが、大学主催のイベントに参加することも、QOL向上につながる素晴らしい体験であると感じました。

そんな中で訪れた、今回のアカデミックデイでは多くの気づきと学びがありました。
タイムリーなノーベル賞受賞者の研究紹介もありましたが、私がとくに目を引かれたのは、中神由香子先生の「意識が変わる!?脱出ゲーム式研修の効果検証」の研究ブースでした。
このブースには、「遊びを学びに変える ゲーミフィケーションの力を体験しよう!」という表示物が掲げてあり、“これはなんなんだろう?“ と無意識のうちに自然と興味が湧きました。

■ ゲーミフィケーションとは?
教えていただいて分かったのですが、「ゲーミフィケーション」とは、ゲームの仕組みや要素をゲーム以外の分野に応用して、モチベーションを高めたり、行動を促したりする手法のことで、近年この手法が、教育、医療、マーケティング、職場研修など、さまざまな場面で再度注目されてきています。
もともと、ゲームの力(遊び・競争・報酬)を応用するという発想自体は昔から行われていましたが、2002年頃に、イギリスのニック・ペリングという人が初めて使用した言葉といわれています。
そして2010年前後には、このゲーミフィケーションの手法がアメリカで理論化されて世界的なブームとなりました。

精神科の医学博士でもある中神さんは、久留米大学の森松嘉孝先生と共に、企業風土改善と生産性向上を目的に、この欧米発の「ゲーミフィケーションを応用したプログラム」を日本に導入しようと、その効果を検証しようとされています。

現代の企業では「人的資本経営」が重視される一方で、職場の安全性や生産性の低下、離職率の上昇、メンタルヘルス不調などが深刻な課題となっています。
これらの背景には、仕事に対する心理的疲弊・組織内コミュニケーションの停滞・価値観の不一致などが挙げられますが、ゲーミフィケーションを応用したプログラムによって、従業員が自発的に参加・協力・内省できる仕組みをつくることで、心理的安全性やチームの一体感を高めることが可能です。

今回検証された、フランスのtricky社が開発したゲーミフィケーションを応用したプログラムは、既に100社以上の企業で導入された実績があり、「楽しみながら意識改革を進めることができること、会社への帰属意識やエンゲージメントが高まり、生産性の向上につながること」などが、今回の検証によって確認されたようです。

■ 展示されていた“カードで学べるシリーズ”
中神さんの研究ブースでは、その他にも誰が見ても分かりやすいように、以下の「市販されている九種類のカードで学べるシリーズ」が展示され、体験できるようになっていました。
いずれのシリーズも、ゲームを通して楽しみながら、思考を整理し、感情を見つめ、他者とのつながりを築き、ゲーミフィケーションの力を体験できるものばかりです。

1.【TOILAB コーチング】
問いが変われば、人生が変わる。 対話の力で思考を深めるカード。1on1やセルフコーチングで自分の内面を掘り下げ、気づきを促します。
2.【カラバリューカード】
わたしらしさを対話で探ろう。価値観を言葉にして共有することで、自己理解と他者理解が深まります。
3.【セキララカードセルフケア 】
あなたの本音と癒しを引き出す50のカード。日常のセルフケアやグループワークにぴったり。感情を見つめ、やさしく整える時間を。
4.【言いカエル】
ユーモアと発想力で盛り上がれ!。 言葉を言い換える中で、発想力・語彙力・コミュニ ケーション力が楽しく鍛えら れます。
5.【みんなの怒りスイッチをさがせ!】
怒ってもいい。 でも、どう付き合う? 怒りの仕組みをゲームで学び、自分や他人の「怒りスイッチ」を理解できます。
6.【アンガーマネジメントゲーム 怒りのツボ・当て~る!】
笑いながら怒りを理解するカードゲーム。怒りの場面を推測し合いながら、自分や他人の「怒りのツボ」を発見できます。
7.【わたしのホンネ横丁】
「最近うれしかったこと」「子どものころの夢は?」 など、普段話せないホンネを語り合うことで、人間関係がぐっと近づけることができます。
8.【きもちのきもち】
100の気持ちを見つけ、感じて、伝えてみよう。全部で12種類もある感情カードでの遊びを楽しむ中で、自然と、気持ちの表現の仕方や気持ちへの理解が育まれます。
9.【攻略! きみのストレスを発見せよ!】
遊びながら学べる、ストレスマネジメント入門 ゲーム 。ストレスの原因や対処法をカードで楽しく学べます。

いかがですか? どのゲームのネーミングも面白いですね!
それではここからは、「遊びを学びに変えるゲーミフィケーション」について、心理的な側面を少し深掘りしてみたいと思います。

■ ゲーミフィケーションが習慣化に効く理由
ゲーミフィケーションは、心理学的な裏付けにもとづく手法ですが、皆さんはこれまで、「三日坊主で終わってしまう…」などの経験をされたことはありませんか?
健康習慣や勉強、家計管理など、続けたいのに続かないことは誰にでもあります。そんなときにはモチベーションを高め、行動を促す、このゲーミフィケーションの手法が大変効果的です。
ゲームのような仕掛けを日常の行動に取り入れ、楽しみながら続けられるようにすることによって、三日坊主から脱却できるかもしれません。
また、上手く活用すれば「習慣化」にも役立ちます。

ゲーミフィケーションではまず、行動主義心理学(報酬系)にもとづくゲーム的要素がよく使われます。
たとえば、楽天市場・PayPayなどのポイント還元システム、歩数アプリで1万歩を達成するとバッジがもらえたり、学習アプリでレベルアップすると「おめでとう!」とお祝い表示が出てきたりする仕組みなどを指します。
実はこうした小さなご褒美や進捗のしかけが、人のやる気を刺激します。
私たちは本来、「できた!」「成長した!」と感じる瞬間に喜びを覚えるようにできているのです。

有名な、動機づけ(モチベーション)に関する「自己決定理論」によると、“ 人は次の3つの心理的欲求が満たされると幸福を感じやすくなる“と言われています。
・自律性(自分で選べる)
・有能感(できるようになる)
・関係性(誰かとつながっている)

ゲーム的な仕組みは、まさにこの3要素を自然に与えてくれます。
そして、人は外からの報酬だけではなく、「内発的動機づけ(好きだからやる、やること自体が楽しい、価値があると思える)」といった内的な欲求との組み合わせが鍵とされています。
まさしく、“やらなきゃ”を“やりたい”に変えるのがゲーミフィケーションなんですね。

■ 生活の質(QOL)を高める仕組み
自ら選んだ行動が、どのように自身の成長や幸福につながるかを考えることは楽しいことです。
ゲーミフィケーションは、行動の継続を助けるだけでなく、QOL(生活の質)や Well-being(心身の健康や幸福)を高める有力な手立てになります。
人が自分の人生を前向きに感じられる仕組みこそ、真のゲーミフィケーションです。
ひょっとしたら、日常のどんな行動も、ちょっと工夫するだけでゲーム的な要素を持った楽しいものに変えられるのではないでしょうか。
ぜひ新たな年を迎えるに当たって、何かしらのチャレンジを始められることがありましたら、「ゲームのように楽しめる方法はないかな?」と考えてみませんか?
きっと、何気ない行動が少し軽やかに、そしてワクワクと楽しくなって、幸福感に満ちた毎日になるような気がいたします。(ふ)