読書の習慣化でQOLを向上しよう!

さて、今回は読書の大切さに関する話題です。

「読書の秋」に因んだ話題を見ていたところ、目に留まった記事がありましたので紹介させていただきます。
1年前の記事ですが、奈良市が2024年10月、市内2駅に設置した「図書受け取りロッカー」が人気を博している記事がありました。
ロッカーには市立図書館から借りる予約をした本が入っており、帰宅途中などに受け取れ、返却もできます。
図書館に行く手間が省け、借りる回数も増やせるとあって、タイパ思考の多忙な現役世代に受けています。
「設置駅を増やしてほしい」との要望が市民から寄せられ、増設されることにも触れられていました。

利用の手順は、次のとおりです。
①ホームページで希望の本を予約し、受け取る駅を選びます
②受け付け完了の通知がメールで届きます
③準備完了の通知が届きます
④ロッカーで受け取る という流れとなっています。
併設するポストに返却可能となっています。
インターネット登録で「電子貸し出し券」も作れるため、予約から返却までの一連の流れが図書館に行かずに完結することが出来てとても便利です。

1年前に先行で運用を始めたのは近鉄大和西大寺駅と学園前駅で、ともに近鉄奈良線の主要駅です。
市によると、約1年間(25年9月末時点)で想定を上回る延べ約7500人が利用し、約1万5000冊を貸し出したという実績を誇っています。
乗り換え客が多い大和西大寺駅では、利用が1カ月待ちの時もあります。
ロッカー関連業務については、市の方は当初週2日程度の処理で良いとみていましたが、予想以上に利用者が多くなり、現在は職員3人が毎日対応しています。
この事業展開によって、図書館へ足が遠のいていた人が再び図書を借りたり、利用したことがない人が新たに登録したりするなど、図書館の本に触れる機会の創出につながっています。
奈良市の取り組みは全国的にみても早い方で、他の自治体の視察もあるといいます。
市民からの増設要望を受け、JR奈良駅、近鉄富雄駅、近鉄学研奈良登美ケ丘駅前のイオンモール内にもロッカーが新設されました。
市は原則として駅利用者が多い順に設置していて、市立中央図書館が徒歩圏内にある近鉄奈良駅(市内で駅利用者数が最多)のように、最寄りに図書館がある駅は今のところ見送っているということです。
このサービスは、奈良市在住、在学、在勤者が利用可能となっていて、利用料は無料となっています。

奈良市のように利用者目線で読書機会を増やす事業を展開している行政体もありますが、現状は文化庁の調査によると、2024年時点で16歳以上の約62.6%が「1か月に本を1冊も読まない」と回答しており、5年前の調査より15ポイント以上増加しています。
これは調査開始以来初めて半数を超え、読書離れが加速していることを示しています。

読書離れが社会に与える影響は多岐にわたります。
読書離れの最も大きな原因は、スマートフォンやタブレット、パソコンといったデジタルメディアの普及です。
現代社会ではYouTube、SNS、ゲームなどの手軽に楽しめるコンテンツが溢れており、限られた時間では読書に充てる時間が減少しています。
特に若い世代や子どもたちは、スクリーンを使う時間が長く、紙の本に触れる機会が少なくなっています。
また、読書が「つらい」と感じられることや、他の趣味に時間を使いたいという意識も関係しているのでしょう。

では、読書離れの進行が個人へどのような影響を及ぼすことになるのかを、具体的に見てみましょう。
4つのことが挙げられると考えられます。

一つ目は、思考力・情報処理能力の低下です。
文章を読み込み、内容を理解し、自分の考えを深めるプロセスが減ることで、物事を多角的に捉え、論理的に整理する力が育ちにくくなります。

二つ目は、語彙力・表現力の低下です。
読書によって豊かな語彙や洗練された表現に触れる機会が減るため、コミュニケーションの質が低下する可能性があります。
最近特に気になるのは、テレビなど映像のメディアにおいて言葉や文字の使い方を誤ってしまい、アナウンサーが後に訂正して謝罪することが多いことです。
特にニュース番組など原稿を確認する時間が限られている場合などは、この種のエラーが多いように感じます。
考えすぎとご指摘を受けるかも知れませんが、エラーの中身を見る限りでは、急いでアナウンス原稿を作成し、原稿に打ち込む担当者の語彙力や文字力の稚拙さが、誤った語法に気づかずにそのままスルーして読み原稿にしてしまうからだと思われます。
そこには自身のスキルをカバーするパソコンやAIの文字変換を、信頼し過ぎるきらいがあるのかと疑いたくなるケースがあります。
こうしたケースに触れると、原稿の制作者が余り読書に親しんでいなかったことを想像して残念に思ったりしてしまいます。

三つ目は想像力・感受性の育成不足です。
物語を通じて他者の気持ちを想像したり、自らの身に置き換えて考えたりする機会が減って、人間形成において他者との重要な感情共有の経験が少なくなることです。

四つめは読解力の低下です。
長い文章を読む習慣がなくなることで、文章の本質を理解する読解力が低下する傾向にあるといえます。
OECD諸国の生徒の学習到達度調査(PISA)でも、日本の読解力ランキングは後退している結果が出ていることがそれを物語っていると言えます。

では、こういった読書離れの現状が、社会へどういった影響を生むのかを見てみましょう。
読書離れは個人の問題に留まらず、社会全体に大きな影響を及ぼす可能性があります。
先ずは国際競争力の低下です。
論理的思考力やコミュニケーション能力が低下すると、知識社会やグローバル社会において、日本が世界市場での競争力を失うリスクがあります。
次に社会性の発達への影響です。
Z世代と言われている新入社員や学生に見られる傾向として、意見と事実の区別ができない、説明者の意図を正確に理解できない、議論で解決策が見いだせないといった問題が挙げられています。
もう既に問題は顕在化しつつある段階に来ていると言えます。
文化庁も、この結果を受けて読書を通じて国語力を伸ばすことの重要性を指摘しており、文字・活字文化の衰退を懸念しています。
読書推進の取り組みとして文部科学省は、子どもの「読む・調べる」習慣の確立に向けた実践研究事業や「子どもの読書サポーターズ会議」を設置し、読書活動の推進に取り組んでいます。
学校図書館の充実もその一環として重視されています。

5年ごとに文化庁が実施する「国語に関する世論調査」の2023年度の調査によると、電子書籍を含む本を1カ月で何冊読むか尋ねたところ、「読まない」が最も多くなっていて62.6%となっています。
その他では「1、2冊」が27.6%、「3、4冊」が6.0%、「7冊以上」が1.8%、「5、6冊」が1.5%という結果でした。
1冊も読まない人は、これまでの調査では4割台で推移していましたが、今回の調査で急増しています。
「読まない」と答えた人でも、SNSやインターネット記事など本以外の活字については、その75.3%が「ほぼ毎日読んでいる」と回答しています。
読書量が以前に比べて減っているか、増えているかを尋ねたところ、「減っている」が69.1%、「それほど変わっていない」が24.5%で、「増えている」は5.5%に留まりました。
読書量が減った理由(2つまで回答)については、「携帯電話、スマートフォンなどで時間が取られる」が43.6%とトップになっていて、次いで「仕事や勉強が忙しくて読む時間がない」(38.9%)、「視力など健康上の理由」(31.2%)、「テレビの方が魅力的である」(19.8%)などの順となりました。
また、雑誌や漫画を含めて電子書籍の利用について尋ねたところ、「よく利用する」が15.0%、「たまに利用する」が25.3%で、両方を合わせた利用者の割合は40.3%となりました。
「紙の本・雑誌・漫画しか読まない」は38.2%、「紙の本・雑誌・漫画も電子書籍も読まない」は20.6%となっています。
年齢別にみると、電子書籍の利用は40歳以下では半数以上が「よく利用する」「たまに利用する」と回答し、30代だけを対象とした場合は72.4%が「よく利用する」「たまに利用する」と最も高くなりました。
電子書籍の利用者(全体の40.3%)に「電子書籍と紙の本とでどちらを多く利用するか」尋ねたところ、「電子書籍の方が多い」が40.5%、「紙の本・雑誌・漫画の方が多い」が29.5%、「同じくらい」が21.4%、「電子書籍しか読まない」が7.9%でした。

文化庁の調査によって、社会全体としての方向性はデジタルメディアの普及によって読書離れが急激に増加し、読書機会が減少していることが確認されています。
このことは、社会の流れの中で仕方がないことではないかと認めるべきかも知れません。
しかしながら、読書離れの進行が個人へどのような影響を及ぼすかをみてみると、いくつかのネガティブな影響が懸念されています。
特に読書は、その継続性によって個人のスキルアップを図る手法と言えますので、今後子どもたちが教育の中で読書機会が減ることのないようにしなければ、コミュニケーション能力や情緒的な理解力、言葉の裏にある本質を見抜く力の低下を招く心配があります。
これらの低下は、個々人のQOLの向上を阻害してしまわないかを危惧してしまいます。
読者の皆さんにはQOLの向上を図るためにも、継続は力なりの実践として、読書の習慣化を図っていただければと願って止みません。(ま)

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