未来医療を通してQOLを考える
さて、今年最初の話題は「未来医療を通してQOLを考える」についてのお話から始めたいと思います。
今年は午(うま)の年。皆さまは、どのようなお正月を過ごされましたでしょうか。
新年という節目は、これまでを振り返り、これからの生き方をそっと見つめ直す大切なタイミングです。「これからどんな一年を過ごしたいか」を考え、スタートする貴重な時でもあります。
すでに何らかの夢や目標を定めて、走り出しておられる方もいらっしゃるかと思いますが、本年もお付き合いのほど、どうぞよろしくお願いいたします。
〇 初詣で願う「無病息災」と「家内安全」の本当の大切さ
お正月といえば、初詣に出かけられた方も多いのではないでしょうか。
神社やお寺で手を合わせるとき、自然と心に浮かぶ願い事は何でしょう。
多くの方が願うのは「無病息災」や「家内安全」だと思います。
大きな成功や特別な出来事よりも、家族全員が健やかに、安心して穏やかに暮らせること。そこには、QOLの本質が詰まっています。
それこそが、私たちが本当に大切にしている価値なのかもしれません。
特に女性の方は、自分自身のことよりも、家族や周囲の人の健康や幸せを願う方が多いのではないでしょうか。忙しい日常の中で、つい自分の体調や心の声を後回しにしてしまうことも少なくありません。 「少し疲れているけれど、まだ大丈夫」
「自分のことは最後でいい」
そんな思いが積み重なると、知らず知らずのうちにQOLは下がってしまいます。
無病息災とは、単に病気がない状態ではなく、「心と体のバランスが取れ、自分らしく毎日を送れていること」。
自分を大切にすることは、わがままではなく、より良く生きるための第一歩ではないでしょうか。
〇 万博のレガシー(遺産)は、未来医療の現場へ
昨年開催された大阪・関西万博では、「いのち輝く未来社会のデザイン」というテーマが掲げられ、多くの人の心に深い印象を残しました。
いのちを中心に据えた社会とは何か。
テクノロジーや医療は、人の幸せにどう貢献できるのか。
人類共通の課題解決に向けた展示や問いが、会場のあちらこちらで表現されていました。
中でも、大阪ヘルスケアパビリオンでは、iPS細胞による心筋シートなどの再生医療が展示され、未来の医療への期待とともに、いのちの大切さや科学への関心を育む場となりました。
万博は一過性のイベントではなく、その理念や価値観が未来へと引き継がれていくことに大きな意味があります。
これらiPS細胞関連の展示物の一部は、万博の理念を継承する「レガシー」として、未来医療国際拠点「 Nakanoshima Qross (中之島クロス)」に移設されています。
実は昨年末、その中之島クロスで開催されている「未来医療体験ツアー」に参加してきました。
この体験ツアーでは、病院・クリニックの施設見学、iPS細胞についてのミニセミナー、VR(仮想現実)を使った細胞製造プロセスの体験など、未来医療がどのように提供されていくのかを垣間見ることができます。
ご案内いただいた方や関係する研究者の方々からは、中之島クロスが目指す「未来の医療をみんなでつくる」という考え方が、強く、そしてわかりやすく伝わってきました。
〇私たちの日常とつながっている未来医療
未来医療は、私たちの日常と確実につながっています。
中之島クロスでは、再生医療をベースに最先端の研究が進められていますが、同時に、さまざまな民間企業や研究者、起業家などが集まり、民間主導の産学医連携によって未来医療が支えられています。
特に印象的だったのは、治療を受ける側である一般市民の立場から見て、この場所が「研究者だけの場所」ではなかったことです。
紹介状がなくても、まちなかの病院のように受診できる病院やクリニックがあり、先進的な医療環境のもとで治療が受けられる。それは、私たちにとって非常に身近な未来医療の姿でした。
「困難な治療であきらめていたことが、なんとかなるかもしれない」
そんな未来への希望を感じさせてくれる場所でもありました。
そして、ここから生まれる先進医療を、日本だけでなく世界と共有し、実装し、普遍化していく—— 世界中の人々の希望をかなえるという意思、その想いは、中之島クロスが目指す「世界のあたりまえにする」という言葉に込められています。
〇 幸せをかなえる未来の脳科学の世界
昨年12月21日の日本経済新聞朝刊に、「脳科学で迫る幸せの秘訣」というタイトルの興味深い記事が掲載されていました。
一人ひとりで異なる幸福感の高さに、脳の構造や神経活動などが関わっている可能性がある、という内容です。
理化学研究所の佐藤 弥 チームディレクター(心理プロセス研究チーム)らが発表した研究成果(論文)が、米国の学術誌「ヒューマン・ブレーン・マッピング」に採択され、多くの脳科学者の注目を集めました。
研究内容は、主観的幸福感の電気的な神経相関を解明したものです。
幸福感の高低には、頭頂部と後頭部の間にある「楔前部(けつぜんぶ)」と呼ばれる部位が関わっていることが明らかになりました。
楔前部は、自分を低く評価したり、将来を心配したりする時に活発に働くそうで、幸福感が高い人ほど、この部位の活動が穏やかであることがわかっています。
また、家族や友人から手助けを受けたときに感じる「ありがたみ」や「嬉しさ」など、感情の処理などを担う「扁桃体(へんとうたい)」という部位にも注目し、扁桃体と楔前部が連携して活動する人ほど幸福度が高いことも示されました。
人はどうすれば幸せになれるのか。
幸福は、人間にとって究極の目標です。
近い将来には、AI(人工知能)の力も加わり、誰もが幸福を感じることが出来る未来が訪れるかもしれません。
〇 健康寿命、そして「幸福寿命」へ
今、私たちが目指したいのは、最近よく耳にする「幸福寿命」です。
単なる長寿ではありません。
自分らしく元気に過ごせる「健康寿命」、そして、心から幸せを感じながら生きられる「幸福寿命」を延ばすことです。
幸福寿命は、健康面だけではなく、生活の満足度や精神的な充実感も含めた概念です。病気になっていないから充実感がある暮らしをしている のかというと、必ずしもそうではありません。病気であっても生き生きと暮 らしている方は大勢いらっしゃいます。
「幸せだと感じること」そのものが、健康長寿の秘訣です。
未来医療の進歩と、私たち一人ひとりの意識、選択、習慣化や行動が伴ったとき、QOLは確実に高まり、人生はより豊かなものになります。
当法人はこれからも、健康寿命、そして幸福寿命の延伸につながる「学びとつながり」を通して、目的とする「QOLを高め、Well-being(心身の健康・幸福)をかなえる」ことを実践し続けてまいります。
この一年が、皆さまにとって健やかで、安心と幸せを実感できる毎日となりますように!
本年もどうぞよろしくお願いいたします。(ふ)

