体幹を鍛えよう!

さて、今回は「体幹を鍛えよう!」というお話しです。

体幹とは上肢、下肢、頭部、顔面を除いた身体の部位で、身体の胴体部分、頚部と胸腰部のことを指しています。
体幹という言葉は体幹トレーニングとして用いられている場合が多く、腹部の筋肉のことを指していると思われがちですが、筋肉だけではなく骨格も内臓も含めた身体の胴体部分のことを指しています。
体幹は心臓や肺、腎臓、肝臓、腸など、身体の機能を担っている内臓がおさめられた部分であり、脊柱や骨盤など身体の軸となる骨格部分でもあります。
まさに体幹は身体の中心部として大切な部位であり、体幹の機能を高めることで姿勢の安定や動作のスムーズさ、内臓機能の向上につながります。

「体幹のインナーマッスルを鍛えるとよい」という表現から、体幹とインナーマッスルが混同して認識されていることがありますが、体幹は身体の胴体部分全体を指し、インナーマッスルは身体の深層にある筋肉のことを指しています。
体幹は身体の部位であり、インナーマッスルは身体の筋肉のうち、奥側にある筋肉のことを指しているので全く別のものということになります。

体幹トレーニングは、スポーツ選手も多く実践しており、メディアで取り上げられることも多いですが、お腹や背中の筋肉の筋力強化という意味合いだけではなく、体幹を機能的に使うことを目的としています。
体幹トレーニングによって使われていない筋肉を使うようにして、硬くなりやすい筋肉の柔軟性を引き出し、バランスよく体幹の筋肉を働かすことを目指します。
体幹の筋肉が効率よく働き、柔軟性を得られると姿勢や動作時・歩行時の安定性や、運動のコントロール性が向上し、内臓の働きも高まります。
体幹の働きが弱まると身体機能の低下や内臓機能の低下につながりますが、体幹の働きがよくなることで日常的な身体活動やスポーツにおいて、より軽やかに効率よく動けるようになることが期待できます。
下肢や体幹の筋力が低下すると歩行能力が低下し、生活機能の低下を引き起こします。
高齢者における体幹の重要性は高齢になると、身体の中心部分である体幹の筋肉が弱くなり、細くなることが一般的です。
体幹の筋力が落ちると、姿勢が悪くなったり、歩くのが難しくなったりするため、日常の動作がスムーズに行えなくなるかもしれません。
特に身体を支えたり動かしたりするのにとても大切な「お尻、背中、腰、背骨を支える筋肉」が弱くなりやすいと言われています。
高齢者では加齢とともに衰えやすい歩行機能の低下を防ぎ、生活機能の向上を図るために下肢の筋肉とともに体幹を鍛えることが大切です。

では、トレーニングへ入る前に、自身の体幹が弱いのかどうかをセルフチェックで確認してみましょう。
これらのテストは自宅で簡単に行うことが出来て、体幹の安定性や筋力レベルを把握するのに役立ちます。

【体幹チェック方法】
1 片足バランス
 直立した姿勢で両手を腰につけて、片足を90度に引き上げて20秒間静止します。
 反対側も同様に行い、体の揺れ具合を確認します。
 目を閉じて行う「閉眼片足立ちテスト」も有効で、1分以上キープできれば体幹年齢20~30代と評価されます。
2 飛行機片足バランス
 片足立ちの姿勢から、上体を前に倒し、上げた足を後ろに伸ばして飛行機のような姿勢で静止します。
 体幹から下半身にかけてのバランス能力を測ります。
3 腹筋力チェック
 仰向けに寝て、両手を頭の後ろで組み、息を吐きながらゆっくりと上体を起こします。
 肩甲骨全体が床から浮くかどうか、反動を使わずに起き上がれるかどうかを確認します。
 腰が反ってしまう場合は、インナーマッスルが弱い可能性があります。

では、体幹セルフチェックが済めば、いよいよ体幹トレーニングの方法へと移りましょう。
体幹トレーニングの方法はいろいろありますが、いきなりハードなトレーニングを行っても身体を傷めることに繋がることにもなり、これでは逆に毎日続けることが出来なくなるかも知れません。
体幹トレーニングは毎日少しずつでも続けて、日常生活の姿勢や動作で体幹を意識して使っていくことに意味があります。
では、高齢者のリハビリの現場でもよく行われている、簡単に自宅で行える低負荷の体幹トレーニングの例をいくつかあげていきましょう。

○ヒップリフト(お尻上げ)
ヒップリフトはバックブリッジとも呼ばれ、腹部とお尻、下肢の筋肉を鍛えることができます。
【手順】
1 仰向けに寝て両ひざを立てます。
2 息を吐きながらお腹を凹(へこ)ませていき、床と腰の間に空間ができないようにします。
3 ゆっくりと「1.2.3.4.5」と数を声に出しながら、腰だけを反らさないように気を付けてお尻を上に上げます。
4 「1.2.3.4.5」と再び数を声に出しながらお尻を下におろしていきます。

○クランチ(上体起こし)
クランチは主に腹部の筋肉を鍛えることができます。
【手順】
1 仰向けに寝て両ひざを立てます。
2 おへそをのぞき込むように頭を起こします。
3 息を止めてしまわないように、ゆっくりと「1.2.3」と声に出して数を数えながら頭を起こしましょう。
4 再び声に出して「1.2.3」と数えながら頭を元に戻していきましょう。

○仰向けでもも上げ
仰向けの状態でもも上げを行うと、体幹・下肢(腸腰筋)の筋肉を鍛えることができます。
【手順】
1 仰向けに寝て両ひざを立て、息を吐きながらお腹を凹ませていき、腰と床の間に空間ができないようにします。
2 ゆっくり「1.2.3」と声に出して数えながらももをあげるように片足をあげていきます。
3 次にゆっくり「1.2.3」と声に出して数えながら足を下ろしていきましょう。
4 足を上げるときにはお尻や腰を浮かさないようにして足の付け根から足を動かすようにします。

○お尻歩き
腸腰筋を鍛えることが出来るトレーニングです。
【手順】
1 床に座って脚をまっすぐ伸ばします。
2 お尻の左右を交互に動かしながら、骨盤を少し持ち上げて前に進みましょう。
3 同じようにお尻を交互に動かしながら、今度は後ろに移動しましょう。

○身体ねじり運動
座位で出来るトレーニングですが、脊柱の整形疾患を持っている場合はねじる、ひねる動作が禁忌のこともあるので、事前に主治医に確認しておきましょう。
【手順】
1 椅子に座って背筋を伸ばして頭の後ろで手を組みます。
2 右肘を左肘につけるイメージで斜めに状態を倒して戻します。
3 反対も同じようにやってみましょう。これを10回繰り返します。

椅子に座ってもも上げを行う運動や、スクワットも体幹を使う運動ですので、無理なくチャレンジしてください。
また、歩くときに背筋を伸ばすだけでも体幹を鍛えることができますので、実践していきましょう。

最後に体幹トレーニングの主な注意点について触れておきます。
○呼吸を意識すること
体幹トレーニングは呼吸と連動させて行うことが大切です。
特に難しい動きをする時は息を止めがちになりますが、常に息を吐くことを意識しましょう。
深く呼吸することで、体の奥深くにあるインナーマッスルが活性化されやすくなります。
○筋肉を意識しすぎないこと
本来、人間が体を動かす時には、筋肉や体幹を意識することは少ないです。
そのため、トレーニング中も意識を集中しすぎると、本来の運動目的からずれてしまうことがあります。
自然な体の動きを妨げないよう、意識しすぎないことが重要です。
○正しい姿勢を保つこと
トレーニング中は、背中が丸まったり腰が下がったりしないよう、常に正しい姿勢をキープすることが大切です。
腹筋を意識して体を支えることで、腕や足、腰への負担を減らし、効果的に体幹を鍛えることができます。
○段階的に無理なく行うこと
体幹トレーニングは、運動習慣のない方にとっては怪我につながる可能性もあります。
テレビやSNSで有名人が行っているからといって、いきなり難しいトレーニングを真似しないようにしましょう。
まずは初心者向けの簡単な動きから始め、徐々にレベルアップしていくことが推奨されます。
例えば、最初は30秒を目安に2~3セットから始めると良いでしょう。
○無理をして行わないこと
すでに怪我をしている方や、安静にしていても痛みがある方、足に強いしびれや麻痺がある方は、無理に体幹トレーニングを行わないでください。
心配な場合は医師に相談しましょう。

巻頭で言いましたが、体幹は心臓、肺、腎臓、肝臓、腸など、身体の機能を担っている大切な内臓がおさめられた部分で、脊柱や骨盤など身体の軸となる骨格部分です。
体幹は、私たちが健康で充実した生活を送るための身体の中心部として大切な部位であり、体幹の機能を高めることで姿勢の安定や動作のスムーズさ、内臓機能の向上につながっていきます。
読者の皆さんが、体幹トレーニングを継続的に無理なく行うことでQOLの向上が図られ、目指すwell-beingを叶える道筋を確固たるものとしていただければ幸いと考えています。(ま)