疲労大国日本
さて、今回は、日本の疲労状況調査2025についてのお話しです。
日本リカバリー協会が2017年から実施している大規模調査によると、2021年には実に80.7%の人が「疲れている」(慢性的な疲労を含む)と回答しており、また2024年の調査でも約8割の人が疲労を感じていることが報告されています。
2025年の調査では、20〜79歳の約7172万人が「疲れている」と回答しており、これは調査開始以来で最も高い数値となっています。
このことから、日本は「疲労大国」と呼ばれることがあります。
この大規模調査を具体的にもう少し掘り下げてみましょう。
では、現代の日本ではどんな人が疲れているのでしょうか?
意外かもしれませんが、シニア世代よりも20代がより疲労を感じているというデータがあります。
特に30代の疲労は深刻化していると指摘されています。
では、女性の疲労度はどうでしょうか?
2024年の調査では女性の80.4%が疲労を感じていて、男性よりも4.3ポイント高い結果となっていて、女性の方が疲労傾向にあることが分かります。
また、働きすぎと言われ続けている現役の労働者の疲労度はどれほどのものでしょうか?
ビジネスマンを対象としたアンケートでは、8割以上の人が日頃から疲労を感じていると回答しています。
過度な労働やストレスが疲労の原因になることが示唆されており、「過労死」という言葉が海外でも「Karoshi」として知られているほどです。
それでは先ず、疲労と密接な関係がある睡眠との関係について見ていきましょう。
睡眠は疲労回復にとって切っても切れないほど非常に重要です。
睡眠の機能には疲労の回復・記憶の定着・成長の3つがあって、睡眠中に脳の老廃物を脳外へ排出する仕組みがあります。
そのため、排出の仕組みが十分機能する睡眠時間が確保できない場合、ヒトは疲労を感じてしまうのではないでしょうか。
2025年の調査では、十分な睡眠時間をとっている人ほど「元気な人」の割合が高いことが示されています。
具体的には、6時間以上8時間未満の睡眠をとっている人では「元気な人」の割合が「疲れている人」の約1.32倍です。
一方、睡眠時間が5時間未満の人は2023年と比較して増加傾向にあり、全体的に睡眠時間は減少しています。
元気な人の約9割は夜中に目覚めることなく眠れており、疲れている人は中途覚醒が多い傾向にあります。
まず、男女総合(20~79歳)の疲労状況を、最新の2025年データで見てみましょう。
「元気な人」の割合は21.4%となっていて、前年の21.8%からわずかに減少する見込みです。
一方で「疲れている人(高頻度)」は41.5%まで上昇し、「疲れている人(低頻度)」37.0%と合わせると、実に78.5%の人が何らかの疲労を感じる状態が続くと予測されています。
ここから出てくる「高頻度」とは、「示されていることが非常に頻繁に起こるケース」を表わし、「低頻度」とは、「示されていることが希に起こる」ことを表わしています。
計測を開始した2017年からの推移(20~69歳)で見ると状況はさらに深刻で、2025年には「疲れている人(高頻度)」の割合が46.3%にまで上昇する見通しとなっています。
これは「元気な人」の18.0%と比較すると、2.5倍以上の開きがあります。
この数値は調査開始の2017年以降で最も高い水準となっており、人々の疲労度が年々増加状況にあることを示しています。
総務省統計局の人口推計から人口換算を行うと、20~79歳の「元気な人」は1967.0万人、「疲れている人」は7172.0万人【「疲れている人(低頻度)」3385.3万人、「疲れている人(高頻度)」3786.7万人】となっており、2024年の「元気な人」1995.8万人と比べてみると、2025年は28.9万人減少した結果となりました。
次に男女別の比較をしてみましょう。
「疲れている人(高頻度+低頻度)」の割合は、男性が76.9%(高頻度40.2%、低頻度36.7%)、女性が80.2%(高頻度42.8%、低頻度37.4%)となり、女性が3.3ポイント多い結果となりました。
昨年に引き続き、女性の方が疲労状態にあることが分かりました。
シニア世代の「元気な人」が多い中、30代の方々の疲労は依然として深刻な状況にあります。
2025年の年代別疲労状況を見ると、年代が上がるほど「元気な人」が増え、「疲れている人」が減少する傾向は継続しています。
70代では「元気な人」の割合が37.5%と最も高くなっていて、「疲れている人(高頻度)」は19.1%まで低下しています。
一方、現役世代では20~40代の疲労状況が深刻で、特に20代は「疲れている人(高頻度)」が55.9%と最も高く、「元気な人」はわずか14.4%に留まっています。
世代間での生活の質に大きな差が見られる状況が続いているといえます。
また、2025年の疲労状況を男女で比較すると、全体的に女性の方が「疲れている人(高頻度)」の割合が高くて、「元気な人」の割合が低い傾向にあります。
特に20~30代では、女性の「疲れている人(高頻度)」が約58%となっていて、男性(約52%)を上回っています。
また、逆に「元気な人」の割合では、70代でも男性が39.4%に対して女性は35.9%と差が見られます。
男女ともに年齢が上がるにつれて疲労度は改善されますが、全年代を通じて女性の方がより疲労度が高い状況が続いていると言えます。
次に都道府県別の疲労状況を見ていきましょう。
「元気な人」の多い都道府県は、1位和歌山県(25.3%)、2位青森県(24.7%)、3位広島県(24.4%)、4位滋賀県(24.1%)、5位三重県(24.0%)という結果となりました。
一方、「疲れている(高頻度)」が多い都道府県は、1位沖縄県(46.5%)、2位鳥取県(44.8%)、3位富山県(44.6%)、4位山形県(43.7%)、5位山梨県(43.6%)という結果となりました。
特に沖縄県は「疲れている(高頻度)」の割合が他県と比べて顕著に高い状況となっています。
2024年から2025年にかけての「元気な人」の割合の変化を都道府県別に分析すると、和歌山県は2024年の26.4%から2025年には25.3%と1.1ポイント減少したものの、依然として都道府県別で最も高い水準を維持しています。
また、2024年に上位だった奈良県(24.6%→23.6%)や京都府(24.3%→23.5%)も若干の減少傾向が見られますが、引き続き「元気な人」の割合が高い地域として位置づけられています。
全体的な傾向として、2024年から2025年にかけて、ほとんどの都道府県では「元気な人」の割合が0.8〜1.5ポイント程度減少しており、全国的に疲労度の上昇傾向が観察されます。
次は疲労状況に深い関わりを持つ睡眠時間の状況です。
2025年の睡眠時間は、5時間未満20.9%、5時間以上6時間未満23.0%、6時間以上8時間未満49.8%、8時間以上6.3%という結果となりました。
2024年と比較すると、5時間未満の人は20.3%から20.9%と0.6ポイント増加しましたが、その他の時間帯はほぼ横ばいで推移していて、全体的な睡眠時間の分布に大きな変化は見られない結果となりました。
疲労度合別に見ると、5時間未満睡眠では疲れている人(高頻度)26.8%に対し、元気な人は14.0%となり0.52倍、6時間以上8時間未満では疲れている人(高頻度)43.1%に対し、元気な人は58.5%となり1.36倍という結果となりました。
この結果、やはり元気な人ほどしっかり睡眠をとっているということが分かりました。
また、8時間以上の睡眠でも元気な人の割合が高く(1.19倍)、十分な睡眠時間の確保が心身の健康に重要であることが示唆されています。
続いて、睡眠中の中途覚醒の有無から睡眠の質の状況を見ていきましょう。
2025年は、中途覚醒が有る人が24.7%となって、2024年の24.1%と比較して0.6ポイント増加している結果となりました。
一方、中途覚醒が無い人は75.3%と、前年の75.9%から0.6ポイント減少しており、睡眠の質にわずかな低下が見られます。
また、疲労度合別に比較すると、疲れている人(高頻度)では中途覚醒が有る人は39.7%となり、元気な人の8.1%と比較してみると、4.9倍も多い結果となりました。
逆に、中途覚醒が無い人の割合は、元気な人が91.9%であるのに対し、疲れている人は60.3%と大きな差が見られます(1.52倍)。
これらの結果から、睡眠の質が疲労度合へ大きな影響を与えていることが明確に示されています。
今回は他の先進国などとの具体的な比較はしませんでしたが、先進国を中心にした世界33カ国のうち日本の睡眠時間はもっとも短く、1日あたり7時間22分となっています。
個人差はありますが、7時間を下回るとパフォーマンスの低下は勿論、健康リスクが高まるとされています。
近年では、睡眠不足がメンタルヘルスの悪化と関連することが明らかになっていて、健康面だけでなく、幸福感にも大きく関わっていると考えられています。
現状分析をすればするほど、日本人の幸福感を高めるための一番の近道は、一にも二にも睡眠不足の解消にあることは明らかな様ですね。(ま)


