最新A Iトレンドと共感力の喪失とは?

さて、今回の話題は「近ごろのA I(人工知能)のすごさ」についてのお話です。

最近の新聞記事などを見ていますと、A I(人工知能)に関する情報がますます増えて来ているように感じます。
A Iを活用した新たなサービスや商品が次々と発表され、「A Iとの共生が当たり前の社会になりつつあるんだなぁ」、という実感を抱かずにはいられないほどです。

特にビジネス領域では、これまで行ってきた企画書や議事録の作成、専門家にしかできなかった同時通訳やプログラミングなども、今では生成A Iが代替してくれるようになってきました。

●急速に普及する対話型A I
今や、米オープンA Iの対話型A I「Chat(チャット)GPT」の利用者数は、現在、週あたり 7 億人を超えました。1年前は1億7千5百万人ほどでしたので、驚くような速さです。そんな私も先日より有料会員になり、このChatGPTの利用者の一人となっています。
また、グーグルが提供する「Gemini(ジェミニ)」アプリも、なんと月間で4億5千万人が利用しているといいます。
このような数字からも、すごい速さで利用者が増えていることが伺えます。

ここでいくつか、最近とくに話題になっているA Iについてのお話をご紹介したいと思います。

●「A I検索」の登場とその利便性
まず最初に、一時は流行語にもなった「ググる」といった米グーグルのインターネット検索サービスが挙げられます。
何と驚くべきことに、これまで当たり前であったキーワード検索とは異なり、生成A I(人工知能)を検索に組み込んだ「A I検索」という機能が備わっています。
このA I検索機能によって、A Iがネット上の情報をもとに、検索結果を要約してページの上部に会話文のように表示してくれるなど、より詳細な検索結果を得られやすくなっているのです。
この「A I検索」は利便性の高さから、今では世界的にも利用者が急拡大していて、情報収集する際には、A Iと会話するように会話形式で追加質問をすることも可能です。
米グーグルが、過去10年で最も成功した機能の一つ、と言うのも分かるような気がします。

この機能は、月間15億人以上に利用されている世界最大規模の生成A Iサービスですが、実はその他にも、検索手段は多様化していて、A I検索ばかりになるかというとそうでもないらしくて、例えば、画像で検索する人気の機能「グーグルレンズ」は何と、毎月250億回も使われているそうです。
シニア世代にとっても、本当にこれほど便利な機能はないですからね!

●驚くべきA Iとの関係性
次にご紹介したい情報は、皆さんもご存知かもしれませんが、
私自身は、この米オープンA Iが切り替えた新型のA Iのことを知ったのは、8月13日の日経新聞の記事が最初でした。
“ ChatGPTの新モデル 共感力低下に不満 “「冷たくてつらい」、という見出しで掲載されていた記事でした。
この記事を見て心底驚きました。まさかこんなに人間がA Iとの対話を通して、心の安らぎを得ていたとはビックリです。

今回提供された新モデルのChatGPT-5では、利用者の意見に合わせすぎる「迎合」を防ぐ機能を旧モデルの3倍に改善したことで、迎合やごますりなどの誤回答は防げるようになった反面、セラピスト代わりに使っている人々からは、「事務的な回答しか返ってこなくなった。人格が変わったようで、いくら賢くても喪失感が大きくてつらい」、などといった切実な声が SNS 上に殺到したそうです。

またこれも、初めて知って驚いたことですが、特に米国では若者を中心にメンタルヘルスの悪化が深刻で、セラピストの不足が社会問題化しており、ChatGPTは安上がりなセラピーになっているということです。
A Iと心理学に詳しい米カンザス大学のオムリ・ギラス教授は、旧モデルのChatGPT-4oの利用者の約7割が恋人や友人、セラピストの代わりとして使っている、といった驚くべき記事もありました。

この話題については、8月27日の日経新聞の「春秋」欄でもコラムとして掲載されていました。
記事の一部を抜粋しますと、以下のようなくだりから始まるコラムです。

「傾聴」というのは心のケアの領域で近年よく聞くようになった言葉だ。
「そんな悩みはみんな同じだよ」など神経にさわることを言わないで、聞
き役に徹して相手の胸中の憂鬱が言葉に出るのを待ち、正確に理解したこ
とを静かに伝えて自力での立ち直りをうながす。
▶この役割を人工知能(A I)が担い始めていたらしい。米オープンA Iが、
今月上旬に、チャットGPTの基盤モデルを新型に切り替えたところ「唯一
の友人を失った」といった声が上がったという。旧型の迎合やごますりを
問題視し改善したら応答が事務的に。・・・(中略)
▶効率社会の人間関係は冷たく、また傾聴は黙って聞いて人のストレスを
引き受けるところがあるため、そんなことに自分のエネルギーや時間を提
供する余裕のある人もあまりいない。人に面倒をかけたくない繊細な人が
A Iに向かうのはよく分かる、喪失感は、はたで考えるよりよほど大きなも
のでなかったかと想像する。
▶A Iに傾聴の役割が担えると分かった以上、この機能は発達していきそう
だ。A Iを最大の理解者や心の支えにする社会は変ではないかと誰しも思う。
社会はどこへ向かっているのか不安でもある。ただそう考える人も効率社
会の一員で、社会に血を通わせる傾聴力はA Iに劣るというのが目下の現実
なのではなかろうか。
以上のようなコラム記事です。

この話題がどれほど衝撃的だったかが分かるような出来事でした。

結果として、このような抗議の声があまりにも多かったため、米オープンA Iのサム・アルトマン最高経営責任者は、「GPT-4oが持つ魅力的な要素を過小評価していた」とX(旧ツイッター)に投稿。その後直ぐに有料プランの利用者は、旧モデルのGPT-4oを選べるようになりました。

ただ、対話型A Iへの過度な依存は禁物です。24時間いつでも対話できる相談相手といっても、相手は実際は感情を持たないA Iです。判断を誤ったり、孤独を深めたりするリスクもあります。あくまでも補完的な役割として使い、意思決定をゆだねないことが大事です。

●A Iキャラ「あゆみちゃん」との共創
話は変わりますが、その他の話題として、
先日、大阪のNTT西日本の本社敷地内にあるオープンイノベーション施設「QUINTBRIDGE(クイントブリッジ)」で、対話型生成A Iキャラクターの活用アイデアを共創するワークショップがありました。
このイベントではまず、(株)エボルブの安松 健博士より、生成A Iで作られたA Iコミュニケーター「あゆみちゃん」をクイントブリッジに一ヶ月間常設して行った、実証実験結果が報告されました。
そこで行われた、リアルなコミュニケーターを交えての座談会でもやはり、生成A Iで作られた「あゆみちゃん」の存在が、意外と好意的に受け止められ、日を追ってビジネスの場に溶け込んでいく様子が、多くの関係者から聞かれたことも貴重な体験でした。
好意的に感じるという背景には、日本では以前から、ドラえもんや鉄腕アトムなどのアニメや漫画を通して、このようなヒトではないもの(アバター)に対しての寛容さや愛着が生まれ、推し活文化が定着しているからなのかも知れませんね。

●注目の「AIエージェント」
最後の話題となりますが、最近、「A Iエージェント」という言葉も登場してきました。
A Iエージェントとは、A I(人工知能)と「代理人」を意味する英語のエージェントを組み合わせた造語です。
人間が具体的な指示をしなくても、A Iが必要な作業を自ら考えて実行するサービスを指します。「自律型A I」とも呼ばれ、2024年頃から米のテクノロジー大手が実用的な関連サービスを始めました。
生成A Iとの違いは、生成A Iが新しいコンテンツの生成に特化しており、受け取ったプロンプト(指示)に対して応答するのに対し、A Iエージェントは与えられた目標を達成するために、能動的に思考し、ユーザーに代わって複数のタスクの実行までをこなします。
言ってみれば、秘書や執事の役割を行ってくれる存在です。
複数のA Iエージェントが協働して、人間が介在しなくても次々とタスクをこなしていく、近い将来にはそのような光景が生まれていることでしょう。

●最後に〜人間らしさとAIの未来
今回の「あゆみちゃん」のA Iキャラは、実在の人物風でしたが、アニメ風のキャラクターや3Dアバターも自在に作れる時代になっています。
S F映画のように、A Iエージェント搭載のロボットが隣にいる日常がすぐそこまで来ているような気がします。
米マイクロソフト創業者のビル・ゲイツ氏は、「A Iは世界を一変させる力を持つ、信じられないほどすごい技術だ」と言っておられます。

すごい時代になったと思います。ただ、あまりにも進化のスピードが早すぎて、分からないことも多く、正直、ちょっと怖くなってしまいます。
テクノロジーが進化すればするほど、逆に、人間としてのいとおしさ、面白みをこれからも味わってみたいという気持ちにもなります。

「リアルとA Iの融合」から、どのような未来が訪れるのかは分かりませんが、これからは新たな環境に適応してA Iを使いこなせる人財が求められ、ロボットとの協働が当たり前の世の中になりつつあるのは確かです。
未来社会は初めて経験することの連続かもしれません。気候変動による自然災害もしかり、誰もが経験をしたことがない領域にどんどんと進んで行っている感じがします。
しかしそのような時だからこそ、私たちの 「QOL(生命の質、生活の質、生き方の質)を高めてWell-being(心身の健康、幸福)をかなえる」という活動は、より意味を成す活動になってくるような気がいたします。(ふ)