国際ブランド指数
さて、今回は、日本の国際的な立ち位置を表す指標に関する話題です。
国際的な市場調査会社のイソプスが、2023年度版「アンホルト-イプソス国家ブランド指数(NBI)」を発表し、日本が初の首位を獲得しました。
国家ブランド指数というのは、当該国に対する世界的イメージを明らかにすべく、15年以上連続で毎年発表されている連続調査です。
日本は2019年に5位となって以来、着実に順位を上げて来ていました。
イソプスのグローバルCEOは、「ここ数年の日本の世界的な人気の高まりと、その結果として最も印象的な国となったことは目を見張るものがある」とのコメントを発表しています。
2023年度版「国家ブランド指数」ランキングは、次のような順位となっています。
7位のスイスを除き、上位8ヶ国のすべてをG7参加国が占めています。
かっこ内は2023年の評価スコアを示しています。
1位:日本(69.85)
2位:ドイツ(69.43)
3位:カナダ(68.91)
4位:イギリス(68.80)
5位:イタリア(68.69)
6位:アメリカ(68.43)
7位:スイス(68.24)
8位:フランス(67.95)
9位:オーストラリア(67.80)
10位:スウェーデン(67.75)
では、国家ブランド指数に関しての簡単な説明をさせていただきます。
国家ブランド指数は2008年から毎年、イソプス社と国家イメージ分野における権威のサイモン・アンホルト氏が共同で実施しています。
評価対象国は60ヶ国で、「輸出」「ガバナンス」「文化」「人材」「観光」「移住と投資」の6つのカテゴリーにまつわる認識を調査して、国家のブランド力を算定しています。
各カテゴリーに設けられた3つから5つの評価質問に対して、調査回答者は1(最低または最悪)から7(最高または最良)までの数値で回答します。
2023年度調査は、世界各地域の20ヶ国に住む18歳以上の計6万人以上を対象に、オンラインで実施されました。
調査対象国は回答者にランダムで割り当てられ、対象国1つあたり約500件の回答を得ています。
調査結果は、年齢・性別などの人口統計学的特性を反映するよう、重み付け(評価する項目ごとにその重要度に応じて5・3・1などの重みを付けて集計して総合評価を出す方法)という手法を用いて集計されました。
2023年度版では、それまで6年連続で首位を占めていたドイツを抜いて、日本が初めてトップに立ちました。
アジア・太平洋地域の国として、首位に立つのは初めてのこととなります。
これまでの経過においては、日本は2018年に初めて2位を獲得して首位に迫っていました。
翌2019年には5位と大きく順位を落としたものの、同年から毎年ランクを着実に1つずつ上げ、2023年に初の首位獲得に至りました。
国家ブランド指数の創設者であるサイモン・アンホルト氏は、「日本が今、地球上で最も称賛される国になっているという事実は、ドイツとアメリカを除けば、このポジションに到達した最初の国であり、世界のソフトパワーバランスが目の前で変化していることを裏付けています」とコメントし、これまで首位となった国としては、ドイツとアメリカしか事例がなかったと指摘しています。
アンホルト氏はさらに、「新しい秩序の時代、2023年アンホルト-イプソス国家ブランド指数は、アジア世紀が幕を開けた最初の紛れもないサインです」と続け、日本の首位躍進は世界的な傾向の変化を代表しているとの見方を示しています。
なお、トップ10の顔ぶれは2022年調査と変わっておらず、2ランク上昇から3ランク下降の範囲内で入れ替わりが見られるのみとなっています。
2位転落となったドイツも各カテゴリで堅調なスコアを見せましたが、すべてのカテゴリで好調の日本が、総合スコアで上回る結果となりました。
日本の順位は総じて向上しており、6つのカテゴリーすべてで上位10ヶ国に入っています。
特に強みが現れたのは、従来からスコアの高かった「輸出」カテゴリーです。
このカテゴリーで設けられた3つの評価質問は次のとおりです。
◯この国は科学および技術の革新に対して大きく貢献している
◯この国は、先端的なアイデアと新しい考え方に富んだクリエイティブな国である
◯この国で製造された製品を購入する
これらの項目のすべてにおいて、日本が1位を獲得しました。
そのほか、「人材」「観光」カテゴリーでのスコアも高く、「採用条件を満たすこの国の人をどれくらい採用したいか」及び「この国には、活気あふれる都市的生活とアトラクションがある」の評価質問で高スコアを得ています。
イソプス社は2023年調査から新たに、国家ブランド指数の算定には含まないが、国のブランド認知において重要だと思われるテーマについて調査を実施しています。
本ランキングの算定基準外となったこうしたテーマにおいても、日本は強みをみせています。
新たに設けられた6つのテーマのうち、「私はこの国で製造された製品を信頼している」「この場所は他のどの場所とも異なっている」の2つにおいて、日本が首位を獲得しています。
国際社会においてユニークな存在でありながら、なおかつ製造分野において高い信頼性を得ている現状が浮き彫りとなりました。
加えて、「私はこの国がグローバルな経済的リーダーだと思う」のテーマについては、アメリカに次ぐ2位を獲得しました。
国内では日本経済の弱さが叫ばれるなか、世界的な国家ブランド認知は予想外に堅調のようです。
2023年調査ではさらに、国に対する「パーソナリティ特性」の質問が加わりました。
ランキングには影響しませんが、回答者が調査対象国に対してどのようなイメージを持っているかを探るものだと言えます。
「信頼できる」「好意的」などポジティブな項目に加え、「傲慢」「うそつき」などネガティブな項目も用意されました。
回答者はこれら合計17の項目に関して当てはまると感じる3ヶ国を選ぶとしています。
集計の結果、日本はポジティブな「創造的」の項目で1位を獲得しました。
同じくポジティブな「有能」の項目でも、日本は2位となりました。
この項目では1位はドイツ、3位は韓国となっています。
一方、ネガティブな項目で日本が3位以内に入ったものはありませんでした。
総合評価での日本以外の国の動向としては、ドイツが好調ながらも順位としては2位に下降し、カナダはトップ3を維持、昨年6位だったイギリスが4位に回復などとなっています。
アメリカは2020年の10位転落から今年は6位と回復基調です。
一方で2019年に2位だったフランスは今年8位となり、下降傾向にあります。
あくまでイメージベースの調査ではありますが、上位諸国がある程度の入れ替わりをみせるなかにおいて、日本に対する世界的な印象は上昇してきている様子が伺えます。
こうした調査結果をみて、私は日本人として素直に喜んでいいと思います。
第二次世界大戦の敗戦後、色々な国際情勢の荒波の中を駆け抜けて来た日本丸が、ここまで評価を高められたことは、戦後日本を支え続けていただいた先人達のたゆまぬ努力と、職人気質ばりのこだわりが全世界の人たちの良いお手本となった証だと強く感じることが出来ます。
人によっては「私はもっと評価されるべき」との考えを持っておられる方もおられます。
私は自己評価を否定はしませんが、他人がされる私の評価は、自己評価を超える一番確かなものであり、そのまま受け取っていいと思っています。
全世界の人が、客観的に数値で表された国家ブランド指数において日本を紛れもなく総合1位であるとの評価を下したことは、今後日本人のQOL向上に寄与すると思いますし、1位が取れなかった項目について改善の努力をすることで来年、再来年と首位をキープできれば、well-beingを叶える道筋が見えてくるかも知れません。
更に高みを目指していきましょう!(ま)