5月病を正しく理解しよう!

さて、今回はこの季節必ずといっていいほど取り上げられる取り上げられる5月病のお話しです。

5月病とはよく知られた言葉ですが、正式な病名ではなく俗称です。
5月の連休後に、学校や会社に行きたくない、なんとなく体調が悪い、授業や仕事に集中できないなどの状態を総称して「5月病」と呼びます。
初期症状としては、やる気が出ない、食欲が落ちる、眠れなくなるなどが挙げられます。
これらの症状をきっかけとして、徐々に体調が悪くなり、欠席や欠勤が続くことがあります。
このような現象は5月だけでなく、夏休み後の9月にもみられると言われています。

それでは、5月病の原因はどういったところにあるのでしょうか?
5月病は、主にストレスが原因で起こります。
進学や就職、転居などで新しい環境に変わる人が多い新年度は、特にストレスがたまりやすい時期なのです。
5月病は病院などで使われる正式な病名ではありません。
医学的に言えば、適応障害、うつ病、パーソナリティー障害、発達障害、パニック障害、不眠症といった病気などがあります。
5月病の原因で一番多い病気は適応障害ですが、実は発達障害の人もいると考えられています。
発達障害には、自閉症、注意欠如・多動性障害(ADHD)、アスペルガー症候群など、さまざまなタイプがあります。
計算や暗記が得意で学生時代には成績優秀だった人が、社会に出るとうまくいかないという人は、アスペルガー症候群の可能性があります。

5月病のひとつのきっかけはゴールデンウィークにあります。
新入社員などのニューカマー(新人)が、初めての環境で過度に緊張しながら必死に職場に慣れようとしたり、仕事で成果を出そうとしたり頑張り続けることによって、大型連休が張りつめた緊張の糸を切るきっかけになることがあります。
そうなると、それまで緊張の作用でフタをしていた症状が一気に表に出ることになります。
しかし、ゴールデンウィークはあくまできっかけのひとつに過ぎません。
緊張状態で頑張り続けることは、通常1ヶ月くらいが限度と言われています。
そのため、ゴールデンウィークがなかったとしても年度の頭から無理を続けてしまうと、5月半ばくらいには力尽きる可能性が大きいということになります。

慣れない環境に身を置くと、人はその環境に適応しようとします。
その過程では、普段よりもアンテナを大きく広げ、物事に集中し、膨大な新しい情報を脳内で処理している状態であり、周囲の刺激に過敏で、自然と首や肩、背中や腰に力が入った状態になります。
これを所謂、「緊張状態」と呼びます。
この「緊張状態」は普段よりも疲労しやすいうえ、継続すると疲労は回復しづらく蓄積してしまいます。
読者の皆さんも過去のことを思い出していただければ、こういった「緊張状態」にあった経験を思い起こされるのではないでしょうか。
そして、これは新しい環境においては、誰にでも多かれ少なかれ起こる現象だと理解していただけるでしょう。

「5月病」の本質は?
いつもの自分を取り戻すまで、つまり現状に適応できるまで、概ね3~6カ月を要すると言われています。
適応の早さやつまずく結果になってしまうかどうかは、本人側の要因と環境側の要因があると言えます。
本人側としては楽観的、悲観的などの物事の捉え方、これまでの経験や価値観、柔軟さ、コミュニケーションの上手さ、気分転換やリラックスなどのセルフケアを行えているかどうかなどが影響します。
環境側の要因としては、その部署の忙しさや雰囲気、フォローする文化や体制の有無などがあります。

所謂5月病には、次の3つの段階があります。
①新たな環境に身を置くことで、大きな変化や急激な負荷の増大を経験して段階段階
②疲労を抑え込み、無理をして頑張り続けている段階
③ゴールデンウィークという大型連休で気が弛み、抑えていた疲労が症状として表に出てくる段階
まずこの3つの段階を理解しておきましょう。
この3つの段階から、5月病発症に至る仕組みとして、働き方の問題があることが窺えます。
無理をしていることに本人としても無自覚な場合があり、本人の力ではどうしようもない状況もあります。
5月病の場合は、単に適応につまずいた結果症状が出てしまったというわけではなく、その本質は適応困難な状況において「過度な頑張りの継続」と「大型連休をきっかけとした症状の噴出」にあると言えます。

こんな人は要注意!
5月病は、誰でもかかる可能性があります。
なかでも、受験や就職などの大きな目標を達成したことで、燃え尽き症候群(バーンアウト)のような状態に陥っている人や、環境が大きく変わったことで周りにうまくなじめないという人は、ストレスをため込みやすいので注意が必要です。
また、5月病の原因とされる適応障害やうつ病といった病気になりやすいタイプの人もいます。
このような人は、性格的に几帳面でまじめ、責任感があるといった特徴があり、一人で抱え込んですべてをきちんとしようとします。
気負いすぎずに、周りの人に協力を求めるようにしましょう。

【予防のポイント】
5月病を予防するためには、ストレスをためないことが何より一番です。
好きなことをしたり、好きなものを食べたりすることが、ストレス解消につながります。
また、適度な運動や規則正しい生活を心がけることや、同じ境遇の仲間同士で悩みを共有することも、5月病の予防には効果的です。
具体的に4つのポイントを挙げてみます。
①趣味を続けよう!
それまでに続けてきた趣味がある場合は、継続することをおすすめします。
パズル、プラモデル、絵、料理……なんでもかまいません。
好きなことをして、ストレスを発散しましょう。
②運動をしよう!
精神的な疲労は、運動で肉体的な疲労に変えられるといわれています。
精神疲労は数日の休息では回復しませんが、肉体疲労はたいていの場合少し休めば回復します。
「身体が重い」という感覚が何日も続くようならば、身体を動かしてみましょう。
③体のリズムを整えよう!
不規則な生活は、人間が本来持っている体内リズムを乱すため、肉体の健康のみならず、心の健康を害しやすくなります。
また、PCや携帯電話、テレビのライトの刺激によっても体内リズムが崩れることがあります。
深夜までの仕事や、就寝前にデジタル機器に触れることは避けましょう。
④同じ境遇の仲間を探そう!
環境や立場が変わると、強いストレスを感じることがあります。
程度の差はあれ、周りには同じようなストレスを抱えてる人がたくさんいるので、それを共有して、ストレスを発散しましょう。
同世代の友人や職場の仲間と、悩みや愚痴を言い合うだけでも、ストレスの解消につながります。

5月病かもと思ったら?
5月病を疑った場合は、まずはかかりつけの医師の診察を受けましょう。
肉体的な病気が除外されても不調の原因が分からなかった場合は、5月病のような精神的な病気の可能性があります。
「特に悪い所がないので安静にしてください」と言う医師もいますが、症状が2週間以上続くようであれば、精神科や心療内科での診察を検討してみましょう。
精神科と心療内科には明確な区別はありませんので、どちらの科を受診しても大丈夫です。

ストレスは現実と理想のギャップですから、人によっても、事案によっても、環境によっても異なる影響度合いが出て来ます。
そのストレスが主な原因で、誰でもが罹ってしまう可能性を秘めている厄介な病気ですが、5月病のことをよく理解すれば何も恐れることはありませんし、よしんば罹ったと思っても、症状を軽くすることは可能です。
読者の皆さんには5月病を正しく理解して、QOLの向上に繋げていただければ幸いと考えています。(ま)