健康日本21を学ぶ(後編)

さて、今回の話題は「健康日本21を学ぶ(後編)」についてのお話です。

前編に続き、「健康日本21 」についてのお話しをさせていただきます。

早いもので、年が明けて既に2週間以上が経ちましたが、正月には初詣に行かれた方も多いのではないでしょうか。
初詣の願い事は、感謝と共に一つだけを祈願するのが良いと言われていますが、初詣の願い事ランキングでは、「健康祈願」や「無病息災」を祈願される方が毎年上位を占めているようです。
やはり、ご家族揃って元気で過ごせることは、どなたにとっても最も大切な共通の願いです。

そこで前編に引き続き、今回も皆さまの健康増進に役立つよう、健康に関する知識と情報をお伝えしたいと思いますので、少しかたいお話しもありますがお読みいただければ幸いです。

前回のおさらいとなりますが、健康日本21の正式名称は、「21世紀における国民健康づくり運動」と言いますが、今回は特に、健康増進についての考え方を含め、今年の4月から始まる「健康日本21(第三次)」を紹介させていただきたいと思います。

健康増進(Health Promotion)の考え方は、昭和 21(1946)年に世界保健機関(WHO)が提唱した、「健康とは単に病気でない、虚弱でないというのみならず、身体的、精神的そして社会的に完全に良好な状態を指す」という健康の定義から出発しています。
また、当時一般的ではなかった、Well-being(ウェルビーイング)という英語表現がこのWHO憲章で使われたため、その後の健康を表す言葉として世界的に注目を集めるようになったと言われています。

健康増進の考え方は、時代によってその内容は少しずつ変わってきていますが、高齢化が進展している中で、医療・介護費の増加などの課題も相まって、「健康寿命の延伸」など、その重要性は高まっていく一方です。

そのような背景からか、健康の社会実装への取り組みが、平成 27(2015)年9月に国連総会で採択された「持続可能な開発目標(SDGs)」に引き継がれることとなりました。
SDGsは、“誰一人取り残さない” を基本理念として、国際社会が令和 12(2030)年までに持続可能な社会を実現するため、17の目標が設定されましたが、保健分野におい ても、「すべての人に健康と福祉を」(Goal 3)が目標として設定され、世界全体で推進されているのです。

そして日本でも、健康増進への取り組みは、数次にわたる施策を経て、昨年の令和5年5月、厚生労働省による「国民の健康の増進の総合的な推進を図るための基本的な方針」の全てが改正され、この令和 6(2024)年度から、「健康日本21(第三次))」 が開始されることとなりました。

健康日本21(第三次)の実施期間は、令和 6年度から令和 17 年度まで実施されるもので、新基本方針では、全ての国民が健やかで心豊かに生活できる持続可能な社会の実現に向け、①誰一人取り残さない健康づくりの展開と、②より実効性をもつ取り組みの推進に重点が置かれています。
そして、国民の健康の推進に関する基本的な方向として、下記の4項目の取り組みを推進することになりました。

○国民の健康の増進の推進に関する基本的な方向

1 健康寿命の延伸と健康格差の縮小
2 個人の行動と健康状態の改善
3 社会環境の質の向上
4 ライフコースアプローチを踏まえた健康づくり
※ライフコースアプローチ(胎児期から高齢期に至るまでの人の生涯を経時的に捉えた健康づくりをいいます。)

更に、こうした方向に基づき、50項目程度の具体的目標を設定し、中間及び最終評価も行われることになっていますが、健康日本21(第二次)の結果を踏まえ、悪化した項目などに対処するために、以下の5点を検討すべき課題として挙げています。

・自治体が健康づくり施策を効果的に進めるための方策
・データを利活用してより効果的に住民の行動変容を促すための方策
・社会環境整備などを通じ、健康に関心が薄い者を含めた健康づくり施策をさらに進めていくための方策
・性差や年齢なども加味した健康づくりの方策
・新型コロナなど新興感染症の感染拡大による生活習慣の変化などを踏まえた健康づくり

皆さんのお考えはいかがでしょうか。
以上のように、今回の健康日本21(第三次)の策定については、社会がより多様化していることや、人生100 年時代が本格的に到来していることなど、ライフコースアプローチを踏まえた健康づくりが示されたことは本当に良いことだと思います。
また、健康づくりガイドなどで示されている推奨事項では、科学的根拠に基づき、日本人の現状値等を考慮して設定されたものであることや、実際に取り組むに当たって、個人差(健康状態、 身体機能、生活環境等)を踏まえ、可能なものから少しでも取り組むことを促すなど、全体の方向性が示されていることも良かったと思います。
これらは、より実効性をもつ取り組みにおいて、新たな健康課題や社会背景、国際的な潮流等を踏まえながら取り組んでいくためにも必要なことといえるでしょう。

厚生労働省では、健康日本21(第三次)について、今回変更された内容がどのようなものなのか、動画や図解でわかりやすく特設Webコンテンツなどでも紹介しています。

「スマート・ライフ・プロジェクト」の 健康イベント&コンテンツにある、第五次国民健康づくり 健康日本21(第三次)でご覧いただけます。

スマート・ライフ・プロジェクトとは、厚生労働省が行っている、国民の皆さんの健康づくりをサポートするプロジェクトです。
このプロジェクトでは、健康寿命の延伸など「健やかな国ニッポン」を目指し、健康を保つための適度な運動、食事、睡眠、健診など、役立つ健康情報をWEBサイトなどで発信されています。
例えば、下記のような健康を保つために役立つコンテンツなども発信されていますので、ぜひ視聴されてみてはいかがでしょうか。

▼喫煙と健康:禁煙して心身の健康を取り戻そう、
▼毎日かんたん!ロコモ予防、
▼骨粗しょう症予防:骨活のすすめ、
▼令和5年度健康増進普及⽉間:めざせてっぺん!地域対抗みんなでウォーキングチャレンジ、
▼女性の健康週間:大人の相談室~女性の更年期障害って?、
▼おうちで+10(プラステン):超リフレッシュ体操、
▼楽しく学ぼう正しい睡眠:睡眠教室ムービー
といった、健康・保健分野で役立つコンテンツも数多く公開されています。

世間では健康志向は続いていて、さらに健康への意識も高まっています。

日本での健康づくり運動は、数次の取り組みを経て行われてきましたが、まだまだ「健康日本21」については周知できていないことも多く、具体的なビジョンや取り組み、推奨される課題や目標数値などは殆ど知られていない状況です。
やはり、個人一人ひとりがこの運動の存在を知り、健康リテラシーを身に付け、できることから少しでも実践することが大切ではないかと思います。

社会人になった時、社内研修で講師の先生がこのような話をされたことがありました。それは、「何かができなかった場合、どうしてできなかったのでしょうか?」というテーマでした。
一般的に、その原因には下記のようなことがあるそうです。
①知らなかったからできなかった。
②やり方がわからなかったからできなかった。
③やる気はあったんだが結果としてできなかった。
④やる気がしなかったからできなかった。

皆さんは、当てはまることはありますでしょうか?

「どうしてできなかったのか?」。その大半の原因が、「①知らなかったからできなかった」、ということです。

当たり前かもしれませんが、やはり何ごとも「学ぶ」ということは大事だと思えた体験でした。
ぜひ皆さんも、このブログをお読みいただいた後は、⑤既に少しやっています。「健康日本21を学び、取り組みをできるところから始めています」、などとお応えいただけると大変嬉しいのですが・・・

これまで、健康や幸せを表す「Well-being」については、このメルマガでも幾度となく取り上げさせていただきました。
実は、わたしは「健康マスター普及認定講師」をしていますが、健康リテラシーを学べる「日本健康マスター検定」を受験するまで、「健康日本21」のことは知りませんでした。

ですから、健康日本21による健康づくりの基本的な考え方が、一人ひとりが「自分の健康は自分で守る」という自覚を持つことが基本である、というところは、とっても腑に落ちたところでした。

そしてWell-beingを実現するためには、やはり基本は、何ごとも「自ら考え行動する」という自律的な活動が必要であると考えるようになりました。
健康とQOL(生活の質)とは相関関係にあります。
当法人の取り組みの大きな柱の一つが「健康寿命の延伸」です。
どうぞ本年も、「QOLを高めてWell-being(健康・幸せ)を叶える」活動に、お付き合いいただきますようによろしくお願いいたします。(ふ)