ある論客の発言

さて、今回の話題はある論客の発言のお話です。

それはサントリーホールディングスの新浪剛史社長が放った発言です。

9月9日、経済同友会の夏季セミナーにオンラインで出席した際に、ウィズコロナの時代に必要な経済社会変革について、「45歳定年制を敷いて会社に頼らない姿勢が必要だ」との発言が波紋を広げています。

政府は従来から、社会保障の支え手拡大の観点から、企業に対して定年の引き上げなどを求めています。
一方、新浪氏は今回の発言で社会経済を活性化し新たな成長につなげるには、従来型の雇用モデルから脱却した活発な人材流動が必要との考えを示した訳です。 

SNS(ネット交流サービス)上では、「45歳での転職は普通の人では無理」「単にリストラではないか」といった批判が相次ぎました

その後10日の記者会見で発言の真意を聞かれ、「45歳は節目であり、自分の人生を考え直すことは重要で、スタートアップ企業に行くなど社会がいろいろなオプションをできる仕組みを作るべきとの発言があり、『首を切る』ことでは全くない」と弁明しました。

さて、皆さんはこれについてどう感じ、どう思われましたか?
私は、賛否があるのは当然で、むしろこの発言をきっかけとして転職、独立、パラレルキャリアなどへの議論が深まることがとても大切だと思います。

2019年5月、経団連会長とトヨタ自動車社長が相次いで「日本では終身雇用制度が維持できない段階に来ている」「雇用体制の変革が必要」との旨の発言を行いました。

そもそも終身雇用は新卒一括採用とセットで考えられ、日本の就職活動は新卒で入社した会社に定年まで働き続けることを前提とした制度設計がなされてきました。
日本では大量生産を均一にやっていれば経済成長が可能な時代は終焉を迎え、世界的にはIT・デジタル技術の進化によって、ビジネスモデルは劇的に変化しました。
これらの変化に対して日本が経済成長を続けるには変化に柔軟に対応できる体勢を整え、労働生産性を向上させないと対応しきれません。
「新卒一括採用・年功序列・終身雇用でジェネラリストを育て、均一の労働を長時間させる」日本型の仕組みでは乗り切れないのです

企業と個人の関係も、雇用を守る代わりに会社の都合のよいようにジョブローテーションを行う主従関係のようなものから、スキルに紐付いて必要な人材と企業が向き合うようになる、対等な関係に変化するのではないかと考えるべきでしょう。

これからはキャリアを会社任せにせず、自分のキャリアを主体的に築いていくことが重要となるでしょう。
海外のビジネスマンは人材の流動性が高く、転職を繰り返してステップアップしていく人も多々居られます。
将来的には、日本でもこうした海外のモデルに近づいていくことが予想されます。

その時に「〇〇社の社内事情に通じています」というだけの働き方は通用しません。
また、単純作業やルーティンの多い業務を担っている場合は、AIなどに代替されるリスクは当然考えておかなければなりません。

新浪剛史社長の発言を聞いて「まだまだそんな状況にはほど遠い。」と対岸の火事を決め込むより、今から出来ることを些細なことでもいいので自身のスキルアップとして取り組んで行くことが重要であり、自分自身や家族のリスクマネジメントに繋がるのではないでしょうか。
今一度、人生設計のカスタマイズを考えてみましょう!