健康寿命の延伸につながるBLUE ZONES(ブルーゾーン)のライフスタイルとは

さて、今回の話題は「BLUE ZONES(ブルーゾーン)」についてのお話です。

大阪国際会議場で開催された、ある健康・医療関連のシンポジウムに参加したときの話です。
各専門分野の著名な先生方が、普段は聴けない健康に関する貴重な研究課題を、私たちにも分かりやすくお話してくださいましたが、その中に「健康寿命の延伸」についての話がありました。
健康寿命の延伸は、当法人の活動の主要なテーマでもあり、特に興味深く、一語一語こころに刻むように聴かせていただきましたが、その時初めてこの「BLUE ZONES(ブルーゾーン)」という言葉を知りました。

ここで問題です。さて、皆さんは下記の5つの地域に共通することは何かお分かりになるでしょうか?
○イタリアのサルデーニャ島
○日本の沖縄
○アメリカ・カリフォルニア州のロマリンダ
○中米コスタリカのニコジャ半島
○ギリシャのイカリア島

答えは、いずれの地域も “ 100歳以上の割合が特に多い長寿地域 “ であるということです。
「BLUE ZONES(ブルーゾーン)」とは、全米でベストセラーとなり、その後も世界中で反響を巻き起こしたダン・ビュイトナーの著書、「The Blue Zones, Second Edition 」(2012年)で紹介されている “ 100歳以上の割合が多い世界の長寿地域のこと“ を指します。
まさに上記の5つの地域がその世界の長寿地域(ブルーゾーン)なのです。

講演の中では、このダン・ビュイトナーの著書を翻訳・監修された荒川雅志さんの「The Blue Zones 2nd Edition 世界の100歳人に学ぶ健康と長寿9つのルール」(祥伝社)が紹介されました。

専門家たちの見方によれば、ここに紹介されている適切なライフスタイルを身につけられれば、「むざむざ失ってしまうかもしれない10年もの年月を取り戻すことが可能だ。健康に過ごせる年限を少なくとも10年は延長できる。つまり、人生にクオリティの高い10年を追加できることになるのだ」とまで言わしめた邦訳本です。
お話を聴き、この本の内容がとっても面白そうなので、早速取り寄せて読んでみることにしました。

荒川雅志さんは、ウェルネス研究の第一人者で琉球大学の教授をされていますが、近年注目される「健康寿命(健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間)」に触れ、平均寿命と健康寿命の差が9年以上に及ぶ日本の状況に課題を感じておられます。※日本の健康長寿は131カ国中60位との報告もある

この数字を一人ひとりの人生に置き換えてみて、思うところは、やはり大切なのは長生きの中身で、活き活きと輝く日々を過ごしながら長生きすることです。
日本の次なる課題として、生きがいある健康長寿をいかに達成するかが、今問われており、そのヒントは「ブルーゾーン」に暮らす長寿者の生活にあると、荒川教授は述べておられます。

では早速、その秘訣「世界の百歳人に学ぶ 健康と長寿の9つのルール」についてご紹介しましょう。文面はほとんどそのままを転記していますが、またその一つ一つのルールを「習慣化する」ためにはどうすれば良いか、についても記載のあったその方法を転記してみました。

【ルール1】適度な運動を続ける
適度な運動を習慣化するには、
・身の回りを不便にする
・毎日を活動的に楽しむ
・毎日歩く
・仲間と一緒に散歩する
・草花を植える
・ヨガのクラスに出席する
※毎日、どんな運動に取り組むかは医者と相談して決めるべきだが、有酸素運動とバランス運動、それに筋力トレーニングをミックスしたものが望ましい。ロバート・バトラー教授は、体幹の筋力トレーニングを少なくとも週2回はすることをすすめている。

【ルール2】腹八分で摂取カロリーを抑える
腹八分を習慣化するために、
・取り分けたら料理は片づける
・食事を大きく見せる工夫をする
・小さめの器を使う
・おやつは見えないところに
・買いものでは小さいほうを選ぶ
・毎日、体重計に乗る
・ゆっくりと食べる
・食事に専念する
・食事はテーブルで
・食事は早い時間帯に

【ルール3】植物性食品を食べる
健康な食生活を習慣化するために、
・毎日、4~6種類の野菜を食べる
・肉類は制限する
※ブルーゾーンの百歳人は、肉の量を制限していた。彼らを見習うには、肉の摂取を週に二、三度に制限しよう。
・くだもの、野菜を目立つ場所に置く
・豆類を食卓の主役に
・毎日ナッツを食べる
・ナッツを常備しておく

【ルール4】適度に赤ワインを飲む
健康的な飲酒(グラス一杯)を習慣化するために、
・上質の赤ワイン(色の濃いもの)をケースで買う
・「幸せなひととき」を自分へのご褒美に
・節度をもって、飲みすぎは厳禁

【ルール5】はっきりした目的意識を持つ
沖縄の人たちは、それを「生き甲斐」と呼び、ニコジャの人たちは「人生の目標」と呼んでいるが、どちらの文化でもそのことばの本質は「朝、目覚める理由」と置き換えられる。
目的意識をはっきりさせるために、
・自分の目標宣言を書く
・パートナーを見つける
・新しいことを学ぶ

【ルール6】人生をスローダウンする
なぜ長生きにつながるのだろうか。その答えは慢性の炎症と関係があるようだ。炎症とはストレスに対する体の反応だ。軽いストレスなら、むしろプラスになるが、慢性的な炎症となると、私たちの体が自分自身を攻撃するような状態になる。スローダウンすることで、慢性的な炎症を抑制し、それと関連した疾病を食い止めることにつながる。

健康上のメリットのほかにも、スローダウンすることで、生活に豊かさを与えることもできる。正しい食事を取り、睡眠の質を高め、友だちを大事にし、魂と向き合う時間を持ち、家族を優先し、目的ある生活を送るー。
こうしたことは、スローダウンしなければ実現がむずかしい。
人生をスローダウンするために、
・電子機器などを使う時間を減らす
・目的地には早めに着くようにする
・瞑想する

【ルール7】信仰心を持つ
どの国でも、健康な百歳人は信仰心を持っていた。
信仰心を持つために、
・より深くかかわる
・新しい伝統や信仰を探す
・まずは週に一時間、八週間続ける

【ルール8】家族を最優先にする
ブルーゾーンで出会った幸せな百歳人たちは、家族を最も大事にしていた。
彼らは結婚し、子どもをもうけ、それを核に生活を築いていた。彼らの生活は、家族への義務や家族の儀式を優先し、家族がともにいることを強く求めるなど、家族を軸にした生活だった。
家族を最優先するために、
・家族の距離を近くする
・家族の儀式を作る
・家族の祭壇を作る
・家族を第一に

【ルール9】人とつながる
おそらく、これがライフスタイルを改善するうえで、最も強力なポイントだ。
ブルーゾーンの住人にとっては、当然のことなのだが。
社会的なつながりを強化するために、
・価値観を共有できる人をリストアップする
・人に好かれるようにする
・仲間と一緒の時間を作る

いかがでしょうか。
著書の中でも、また講演の中でも、「人とつながる」ことが最も長寿に良い影響を与える大事な要素であると教えていただきました。
コミュニティやつながりが希薄になってきている現状の中、私たちはどうすればば良いのか、お一人おひとりがその解決に取り組むことは、健康寿命の延伸を左右する大変大事なことと感じます。

以上のように、世界のブルーゾーンには何世紀あるいは数千年にわたって培われてきた人類の体験が隠されています。
百歳人(センテナリアン)の人々が何を食べ、どのような形で隣人たちと付き合い、ストレスを発散させ、自分たちの気分を癒やし、病を退けてきたのか。どのような世界観を持っていれば長寿が実現できるか。
お分かりになりましたでしょうか。

一挙に9つのルールに取り組む必要はありません。
まずは、取り組みやすいことから始めること、家族または友人と一緒に取り組むこと、自分へのご褒美を忘れないこと、などの方法を使い習慣化することが大切です。
私たちが100歳に到達できる確率はどれくらいあるのかはわかりませんが、まずは皆さんも、ブルーゾーンへの旅を始めてみられませんか。
百寿者の生きざまに耳を傾けようという気持ちさえあれば、きっとこれからの人生が豊になること請け合いです。(ふ)