QOL向上に役立つ腸活のすすめ

食は生きる力の源泉。「医食同源」と言う言葉もあるように、日頃からバランスの取れた美味しい食事をとることで病気を予防し、治療しようとする考え方が昔からあり、QOLの向上には欠かせません。

もとより食生活は、生命を維持し、健康や幸福を表すWell-beingを叶えることにも大きく影響する営みです。

健康志向の高まりを受けて、現在は「食生活と健康」に関する情報が身の回りにあふれていますが、私たちシニアには栄養面でも「バランスの取れた食生活」を送ることの重要性は増すばかりです。

そして最近は、以前にも増して「腸活」「腸内環境を整える」という言葉が良く出てくるようになりました。
シニア仲間で健康談議をすると、「腸内環境を整えると体全体に良いらしい」といった話題になることが多く、加齢による便秘などの症状もあり、意識してこの取組み、「腸活」をしていらっしゃる方が多いようです。

食品関係の企業広告でも「腸内環境を良くする腸活」という表現は至る所で使われています。その影響からか毎朝、発酵食品であるヨーグルトや食物繊維となる野菜、ミニトマト、バナナなど、健康を意識した食事を摂っている方が非常に多くなっています。

そのようなことから最近では、健康は「腸内環境が決め手」とまで言われるようになりました。

腸には大腸と小腸があり、小腸は食べたものを消化吸収し、大腸は栄養を吸収した後の残りカスを排泄する機能があります。
いづれも生命維持には欠かせない働きをしていますが、医学の進歩によって、腸は食べ物の消化・吸収・排泄という機能だけではなく、生活習慣病やがん、免疫力の調整など、全身の健康状態にも関与している臓器であることが分かってきたのです。

私たちの腸にはおよそ1000種類、100兆個以上の細菌が住んでいます。
それぞれに、働きや性質の似かよった細菌同士が集まってコロニー(集落)をつくって、腸全体の中で一つの生態系を形づくっています。この状態を品種ごとに集まって咲くお花畑(flora)に見えることから「腸内フローラ」と呼ばれるようになりました。
正式な名称は、「腸内細菌叢(ちょうないさいきんそう)」というそうです。

腸内フローラは一人ひとり異なり、その人の食生活や環境によって影響を受けていますが、一番大きな影響を与えるものは母親の腸内環境だといわれています。
生後3~5日の赤ちゃんは善玉菌であるビフィズス菌が腸内フローラの95%以上を占めている状態で、腸内フローラの原型は3歳までにつくられるといわれます。
そして驚くことに、形成された腸内フローラのパターンは一生変わらないとされています。

腸内細菌は大きく分けて、善玉菌・悪玉菌・日和見菌という3種の菌があり、3種の菌はお互いに関係し合いバランスを取っています。
健康にはこのバランスが重要で、一般的には、善玉菌2割、悪玉菌1割、日和見菌7割がベストとされています。

3種の菌、それぞれの特性を簡単に紹介しますと、

善玉菌(ビフィズス菌、乳酸菌) : 体に良い働きをする菌たち。腸内で有機酸やビタミンなどの体に有用な物質をつくり出す。悪玉菌の侵入や増殖を防ぎ、腸の運動を促すことによってお腹の調子を整えてくれる。また免疫機能を高め、血清コレステロールを低下させる効果も報告されている。

悪玉菌(ウエルシュ菌、大腸菌・有毒) : 体に悪い働きをする菌たち。腸内で硫化水素やアンモニアなどの体に有害な物質をつくり出す。悪玉菌が増えるとお腹の調子が悪くなる。

日和見菌(バクテロイデス、大腸菌・無毒) : どちらにも属さない菌たち。
腸内の善玉菌が優位なときは善玉菌をサポートするように働き、悪玉菌が増えて優位な時は一緒になって悪い働きをする。

QOLを高める食生活「腸活」とは、この善玉菌、悪玉菌、日和見菌のバランスを整え、腸内フローラの良い環境を維持することです。「腸活」を意識して行なうことで善玉菌を増やし常に優位にしておくことが健康維持につながります。

以上のように、健康維持には「腸内環境を整えること」が何より重要ですが、加齢に伴って、腸年齢の老化(悪玉菌の割合が増える)は進んできます。

シニアには、腸年齢の老化を抑えるためにも「腸活」が効果的です。
野菜やきのこ、海藻に含まれる食物繊維は腸をきれいに掃除してくれますし、発酵食品であるヨーグルトは特に、善玉菌であるビフィズス菌や乳酸菌をそのまま体に摂取でき、効率よく腸内環境を改善してくれます。

読者の皆さまの中にも、「食べることが一番の愉しみ」という方は多いと思います。
美味しいものを食べて楽しく時間を過ごすことは大切です。会話をすることで笑顔にもなれますし、ささやかな幸せを感じることができます。

考えてみますと、こんなに素敵なQOL向上の方法は見当たりません。
長期間に及ぶコロナ禍で外食の機会も少なくなり、大勢で食事をすることも制限される状況ですが、少しでもQOLを高める食事を意識し、毎日の食卓を心豊かに愉しんで参りましょう。

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