2025年問題は目前です!

さて、今回の話題は、2025年問題です。

2025年問題とは、団塊世代(1947~1949年生まれ)が後期高齢者となることで、社会保障費の負担増や人材不足が深刻化する問題のことをいいます。
女性や高齢者の労働参加が進んでも働き手は減少するとみられ、1人あたりの社会保障負担はますます重くなることが問題視されています。

厚生労働省が2006年に公表した「今後の高齢化の進展~2025年の超高齢社会像~」では、2025年の日本の社会像を次のように推計しています。
・高齢者人口…約3500万人
・認知症の高齢者数…約320万人
・高齢者世帯…約1840万世帯(うち36.9%の約680万世帯が一人暮らし)
・年間死亡者数…約160万人(うち90%の約143万人が高齢者)
・その他…高齢化の問題は進展の「速さ」から高齢化率の「高さ」に変わり、都市部での高齢化が進んで、高齢者の「住まい」の問題  などが表面化します、と結んでいます。
ただ、この予想から大きく外れる可能性がある項目が出て来ています。
例えば、総務省の人口推計によれば、2023年1月1日現在の日本の高齢者人口は約3617万人で、予測値である約3500万人を超えています。
また、九州大学の研究によれば、認知症の高齢者数は2012年時点で予測値の5割増しの約476万人になっており、2025年には驚くべきことに予測値の倍を超える約675万人になるだろうと指摘しています。
いずれにせよ、認知症の人を含む高齢者の数が今後も著しく増加することは間違いありません。
絶対数が増えることから、身の回りの世話や介護をおこなう人材は、ますます必要になってくるでしょう。
そうしたなかで、団塊の世代が2025年に後期高齢者となるために社会保障費の負担が一気に大きくなるのではないか、働き手不足が加速するのではないかと、次々に心配事が浮上してきたのが2025年問題なのです。

実は2025年問題が生活に与える影響としては、高齢者が周りにいない人々にとっても深刻な問題なのです。
2025年問題は、特に社会保障費の負担増大や後継者不足による雇用の喪失が顕著になることから、現役世代にとって大きな負担となっていくことは否めません。
まず、生活に与える影響の一つとして社会保障費の負担が挙げられます。
社会保障費とは、年金・医療保険・介護保険・生活保護などの社会保障制度によって、国が支出した費用のことです。

社会保障費は大きく9分野に分かれていて、2020年度で総計が約136兆円、人口1人あたりの支出は108万1000円とされています。
その中でも取り分け保健分野と高齢分野の費用が群を抜いて多くなっていて、この二つの分野の合計で100兆円を軽く超えています。
最も支出が大きかった保健分野は、医療の個人サービスや予防接種・健康診断などの集団サービスにかかる費用で、約56兆円です。
次いで高齢分野は、老齢年金や介護保険による介護サービスなどにかかる費用で、約49兆円となっています。
2025年問題では、医療が必要となる人や、老齢年金の支給開始年齢に達する人の増加が確実視されています。
そのため、これらの支出がより一層増加し、働き手の社会保障費の負担がさらに増大すると考えられます。
当然ながら、高齢者・後期高齢者・認知症高齢者の増加により、医療・介護人材のさらなる確保が求められることになります。
厚生労働省は、介護職員数が2019年度時点の約211万人に対し、2023年度には約233万人、2025年には約243万人を確保する必要が出てくるとの予測を、「介護人材確保に向けた取り組み」の中で明らかにしています。
また、2024年度からは医師に時間外労働の上限規制が施行される予定です。
そのため、医療体制の維持についても、介護体制と同様にさらに厳しい状況になると予測されています。

そしてもう一つの、後継者不足の問題に触れておきましょう。
日本にある企業や法人のうち99%が中小企業です。
中小企業の後継者不在率は60代経営者で約50%、70代経営者でも約40%とされています。
このまま後継者不足の問題を放置していると、後継者がいないとして廃業が相次ぐことになり、2025年までに約650万人の雇用と約22兆円のGDPが失われる可能性があると、中小企業庁が警鐘を鳴らしています。

2025年問題は個人の生活だけでなく、企業活動にも大きな影響を与えます。主な影響として上がっているのは以下の2点です。
●人材不足と採用難
労働力人口(15歳以上人口のなかで、就業者と完全失業者の合計)は、2019年の6912万人をピークに減少傾向にあります。
2021年には6907万人でいったん回復したものの、2022年に6902万人と再び減少しています。
15~64歳の生産年齢人口に関しては、1995年の8716万人をピークに減少が続いており、2025年には7170万人になると予想されています。
今後、各企業の新規採用は労働力人口・生産年齢人口の減少とともに、さらに難しくなることが予想されます。
●既存システムのブラックボックス化・維持費用高額化
経済産業省は、ITシステムの観点から、DX(※1)を推進しなければ業務効率・競争力の低下は避けられないとし、競争力が低下した場合の想定として、2025年から年間で約12兆円もの経済損失が発生すると予測されることを「2025年の崖」と表現して、企業に既存システムのブラックボックス化(システムの中身・遂行プロセスが見えない、または理解できないが作動している状態)の放置リスクについて警鐘を鳴らし、見直し・刷新を促しています。

DX(※1):デジタルトランスフォーメーションと呼ばれ、デジタルによる変革を指す言葉で、デジタル技術を使って企業がビジネスを生み出したり、消費者の生活が向上したりすること。

これらの多くの企業での人材不足や多額の経済損失が予測されることから、2025年問題に対して、国も相当な危機感をもってさまざまな施策をおこなっています。
2025年には、前述したように約243万人の介護職員が必要になると予測されています。
国では、介護未経験者の参入を促進するために、介護に関する入門的研修の実施を推進しています。
また、国は都道府県と連携して、介護事業所に対して選択的週休3日制度や季節限定勤務制度などの導入を促しています。
これらの取り組みにより、離職の防止・人材の定着に効果的な介護事業の働き方モデルを模索しているところです。

社会保障費の多くを占める保健・高齢分野に属する医療・介護に関して、社会保障費の負担を減らしつつ、各世代間の負担を均一化するための取り組みがおこなわれています。
取り組みの一つは「地域完結型」の医療・介護提供体制の構築です。
病院の機能分化と地域の連携を重視した地域完結型の医療・介護提供体制を整えることにより、地域の特性に応じた医療支援・介護予防が可能となります。
ゆくゆくは社会保障費の削減にもつながることでしょう。

また、後期高齢者の医療費負担は、2022年10月から一定以上の所得がある人に限り1割から2割負担に変更されました。
その他にも薬価改定など、社会保障費の負担に偏りが生じないようにする取り組みがおこなわれています。

経済産業省は時代変化のなかで企業のDXに関する自主的な取り組みを促すため、経営者に求められる対応を取りまとめた「デジタルガバナンス・コード2.0」を公開しました。
実践の手引きの公開や、地域別の説明会もおこなっており、既存システムのブラックボックス解体や不要なシステムの廃棄など、システム刷新を企業に促しています。
2025年問題に向けて、企業も人材不足や既存システムの課題について対策を進める必要があります。
企業に求められる主な対策としては以下のことが挙げられます。
●働き続けられる職場環境作り
生産年齢人口の減少が急激に加速していくなか、人材採用や人員定着がより困難になっていくことが予想されます。
企業は育児・介護による離職を防ぎ、多様な人材が働けるように、雇用形態を複数用意したり、育児介護休業をはじめとした国の制度を伝えたりなど、働き続けられる職場環境作りが求められます。
●M&A(※2)を含む事業承継の検討
中小企業庁では、事業承継計画の策定やM&Aのマッチング支援など、事業承継の支援をおこなっています。
後継者がおらず廃業となれば、従業員の雇用だけでなく、それまでの経営ノウハウやネットワークも失われてしまいます。
中小企業庁の事業承継支援策には親族内後継者の育成研修も準備されています。
後継者がいない経営者の人は一度詳細を確認してみるのもよいでしょう。

M&A(※2):企業・事業の合併や買収の総称のこと。
具体的な手法としては、吸収合併、株式の取得・移管(TOB(株式公開買い付け)を含む)、事業譲渡、会社分割、合併などがあります。
広義には、合弁会社設立を含めた資本提携や業務提携、OEM(他社ブランドの製品を製造すること)の提携などを含みます。

●既存システムの見直し
先述した「2025年の崖」課題に対して、既存システムの見直しが必要となります。
既存システムに過剰なカスタマイズ(使用していない・現代技術で削減できる部分など)がないかなどを見直して、システムを仕分けすれば、維持管理費用の削減が期待できます。

また、SDGsは2030年までに達成すべき17の目標と169のターゲットから構成されていますが、17ある目標のうち次の4項目に、2025年問題対策と特に深い関連があります。
●目標1「貧困をなくそう」
内容 あらゆる場所のあらゆる形態の貧困を終わらせます。
関連性 貧困問題を放置すると、社会保障費の負担増大につながります。
●目標3「すべての人に健康と福祉を」
内容 あらゆる年齢のすべての人々の健康的な生活を確保し、福祉を促進します。
関連性 医療・介護の提供体制が整えば、健康寿命が延びて保健・高齢分野での社会保障費の削減が期待できます。
●目標8「働きがいも経済成長も」
内容 包摂的かつ持続可能な経済成長及びすべての人々の完全かつ生産的な雇用と働きがいのある人間らしい雇用(ディーセント・ワーク)を促進します。
関連性 経済成長が進めば、1人あたりの社会保障費の負担低減が期待できます。
また、多様な人材や働き方を社会全体で認めることで、働きがいを感じられます。
●目標11「住み続けられるまちづくりを」
内容 包摂的で安全かつ強靱(レジリエント)で持続可能な都市及び人間居住を実現します。
関連性 地域完結型の医療・介護体制の提供によって、高齢者や障がいのある人などを含めて、だれもが安全で使いやすい公共の場所作りが期待できます。
日本は、高齢化率が世界で最も高い国です。
日本の高齢化対策が各国のヒントとなり、SDGsの目標達成に寄与することが期待されています。

2025年問題の対策で重要なのは、各個人ができることから始めることです。
高齢化の進行を止めることはできませんが、一人ひとりが認知症予防のための運動習慣を身につけるだけで、社会保障費の抑制につなげられる可能性があります。
現在就業中の人が、今後介護をすることになった場合、介護休暇や介護休業制度などを利用して、離職せず働き続けることも企業の人材不足の一助となり得ます。
今後は、一人ひとりが自分ができることから対策をおこない、また企業も労働者の働きやすい制度の充実を行うことで2025年問題に対処し、ひいてはそれを乗り越えていっていただければと思っています。
2030年がゴールのSDGsが目指す持続可能な社会を構築していけば、いずれ個々のQOLを高めることになり、well-beingを叶えることへと繋がることでしょう。(ま)

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