金融リテラシーについて考える

「持続可能な生活基盤づくり」を行なうに当たって、家計管理や生活設計などの知識は最も身近で、生活する上でも必要不可欠なものです。
諸外国では、日常生活や人生設計を考える上で、金融に関する知識や情報への関心は高く、金融教育が大変重要視されており、資産形成や運用などの知識と共に学校や家庭でも盛んに行われているようです。

しかしながら日本では、金融広報中央委員会の金融リテラシー調査の結果を見ると、金融リテラシー(お金の知識・判断力)はおしなべて低く、「学校において金融教育を受けたことがあると認識している人の割合」は、なんと7.2%しかないという結果でした。

「家庭で教わる機会があった人の割合」も20.3%と少なく、これまでどちらかといえば¨子どもや学生はお金について知らなくて良い¨¨金銭への傾倒や執着は良くないこと¨などと、タブー視する風潮さえ見え隠れする状況でした。

そのようなことからか、日本と米国の「金融知識に自信がある人の割合」比較では、日本が12%に対して米国が76%という調査結果になっています。

このような背景からこの度、約10年ぶりに学習指導要領が改訂され、2022年4月から高等学校の授業で、新必修科目「公共」で金融経済、そして「家庭科」では資産形成の視点にも触れる金融教育が本格的にスタートすることとなりました。

その他、金融教育が急ぎ必要とされる背景としては、時を同じくして、民法の一部改正によって2022年4月1日から成年年齢が20歳から18歳に引き下げられるといったことがあります。

お酒やたばこに関しては20歳のまま維持されますが、この引き下げによって親の同意を得ずに、様々な契約をすることができるようになります。
例えば、一人暮らしのためのアパートを借りる、クレジットカードを作成する、ローンを組んで高額商品を購入する、といったことが18歳でできるようになります。

今までのように、20歳未満の未成年者がおこなう契約について、不利益をこうむらないように保護する「未成年者取消権」を行使することができなくなるため、悪徳商法などの消費者被害の拡大が懸念されます。
又、最近問題となっているネットでの高額課金、利便性を増している後払い決済サービスなど、容易に利用すると想定外に負債が増え過剰債務を抱えることにもなりかねません。

ですから、必要となる適切な消費生活の知識やお金の使い方などを、今のうちに学校や家庭でしっかりと教育する必要があるのです。

ただ、金融リテラシーの習得は負の面への備えだけでは無く、豊かな消費生活を送るために必要であったり、将来に向けての資産形成や運用にも役立つ知識です。

人生100年時代を迎え、「資産寿命の延伸」という言葉も最近はよく使われるようになりました。金融リテラシーは今や、シニア世代にとっても、より身近で必要不可欠な知識でもあります。

何年か前に「老後2000万円問題」が話題になりました。老後資金について考えるきっかけになりましたが、報告書の中で使われたデータは2017年のものでした。
しかしながら、必要な老後資金は一人ひとりの置かれている状況によって異なり、調査年度によっても、その収支は都度変化します。

先ほどの、金融リテラシー調査についての話のつづきですが、その他の調査結果として、「高齢者は若年社会人よりも金融リテラシーは高いものの、望ましい金融行動をとる人の割合は必ずしも高くない」、という結果がでたそうです。

その原因として考えられることは、なまじ知識を持つと自信過剰バイアス(歪み)が働くことによって判断を誤り、情報分析力の過信、過剰なリスク負担、過度の取引、思い込みから結果的に損失を被ることがあると指摘されてもいます。

金融商品の取引では、高いリターンを掲げた商品は高いリスクを伴っていますし、高額の手数料が必要であったりします。リスクとリターンの関係を理解していても、予想外の状況になることも考えられます。
「絶対儲かります」と言う言葉には惑わされないようにいたしましょう!

家計の改善策は、①支出を減らす ②収入を増やす ③お金に働いてもらう 、の3つを行なうと良いと言われます。

読者の皆さま、金融リテラシ-を学び直して、少しでも安心してより良い暮らしができるようにしませんか。
ご自分の老後の収支を想定したり、現在の生活における収支、資産を「分かりやすく棚卸ししてみる」、ことから始めてみてはいかがでしょうか。