脳疲労してませんか?

さて、今回の話題は「脳疲労」についてです。

情報まみれの現代人に「脳疲労」が急増している理由は?
「日記は冷静さを、SNSはストレスをもたらす」といった気になる記事を目にしました。
SNSによって人々は以前よりストレスを感じ、「本当の自分」がわからなくなってしまうといった言葉も添えられていて、「脳疲労」はwell-beingを叶えるための大きな障害になるのではと思えてきたりします。
では、詳しく見ていくとしましょう!

■チャッターが脳疲労を起こす
人間はそれ以上動くと故障してしまうというとき、最大出力が出ないように、あらかじめ脳がコントロールして、心拍数を上げたり、痛みを感じさせたり、体の疲労を感じさせたりするというアラームを発します。
これと同じで、ずっと脳を使って内なる声「チャッター」としゃべりすぎてしまうと、「疲れた」「やる気が出ない」という状態になってしまい、結果的に「脳疲労」を起こします。
チャッターとは頭の中のひとりごと(内なる声)と言われていて、「循環するネガティブな思考と感情」で構成され、それが自分に悪影響を及ぼすと言われています。
自分をコントロールできない状況になると、人間はストレスを感じて疲れてしまいます。
すると、やる気がなくなって当然のことながらパフォーマンスも落ちます。
脳疲労そのものは、昔からあることですが、特に現代においては、情報があまりにも多くなり、しかも、ねたみ・そねみという類の感情が身近に忍び寄ってくることになり脳疲労が顕著になります。
SNSのなかった時代では大富豪の生活ぶりなんて見えませんでした。
だから、自分が今いるコミュニティでの生活に十分満足できていました。
ところが現代は、ちょっとSNSを覗くと他人のきらきらした生活が見えてしまい、「なぜ自分は不遇なのか」といった感情が湧いてきてしまいます。
それは自分では中々コントロールできないことですから、当然のことながらストレスになっていきます。
この感情を如実に表している「親ガチャ」という表現が生まれたのも、自分ではコントロールできないものという意味を含んだものであることはお分かりいただけるかと思います。
このような環境においては脳疲労が起きやすくなり、メンタル不調の人が増えているように感じます。

■言葉にすることで感情が強まってしまう
脳疲労を起こすと、前頭葉のコントロールが利かなくなってしまいます。
すると、人間は本能のまま感情を抑えられなくなり、攻撃的になったり、欲を抑えられなくなったりします。
お酒を飲みすぎると、怒りっぽくなる人もいるし、泣いてしまう人もいますが、それはお酒によって前頭葉の機能が落ちて、感情がコントロールできない状態になるからです。
同じように、疲労しているときに、SNSに自分の感情を書いてしまうと、ますます感情を強化してしまうことがあります。
昔は「ことだま」と言われましたが、口に出したり書いたりすることで、無意識下の優先順位が高まり、その言葉に自分が囚われて、ますます感情が強まってしまうのです。
感情を書くことが、すべて悪いというわけではありません。
しっかり書き出して、そこから離れようと思えば、自分を第三者的に見ることもできます。
しかし、SNSの場合は、リアクションが何倍にもなって跳ね返ってくることがあるため、どうしてもストレスになってしまうのです。
自分にとっては正義だと思っていても、それは、他人にとっての正義になるとは限りません。
SNSでは、違う正義どうしの戦いが起きてしまうのです。
「善」か「悪」かではなく、「自分にとっての善」と「その人にとっての善」との戦いですから、どうしても対立になってしまいます。
『チャッター』には、日記を書くことで、問題からズームアウトし、自分の内なる声と対話するという「日記の効能」が紹介されていますが、これは、自分にしか見られないように日記を書きなさい。ということを表しているのだと思います。
自分の意見をSNSで不特定多数に見せようとすると、「それはあなたの意見でしょ。」と否定されかねませんが、自分で自分を客観的に分析したいなら、第三者に見せる必要はありません。
ですから、自分だけの日記を書くというところがポイントになるでしょう。

■「本当の自分」は青い鳥?
とはいっても、自分との距離をとるのはなかなか難しいことですよね。
いろんな成功モデルがあふれていますし、失敗した人を見て不安になることもありますし、本当の自分が見えなくなってしまいます。
私は「本当の自分」なんて存在するのかなということもよく考えます。
どこかに「本当の自分」があるのではないかと思い、自分探しをしたところで、それは青い鳥のようなものなのではないだろうか。
自分探しは「自分を探す」ということにとらわれている状態でもあります。
それが高じて、「自分のいる職場はここじゃない」と思い込み、転職をくり返す思考につながることもあります。
月並みな言葉ですが、やはり、バランス感覚が大切でしょう。
そのためにも、チャッターをコントロールすることが重要となってきます。
一方、客観視というものも、やりすぎると1つのことに集中できなくなってしまいます。
そういうときは「足るを知る。」と言う言葉がいいと思います。
自己との対話はとても大事です。
自分が何をしたいのか、どこにいるのか、まわりに振り回されず常に現在地点を知り、自分軸を持つ必要があります。
SNSの時代は、他人の価値観に振り回されることがよくあります。
今回の題材と同名の『チャッター』という著書は、それによって内なる声が湧き出て邪魔をするということと、それに対処するためのテクニックを紹介していますが、結局のところは「しっかりと自分を持ちましょう」
ということを語っている本なのだと感じました。

■重要なことは?
内なる声は心の中の物語であり、自分のアイデンティティを構築していくためにも役立つものだといえます。
グローバルに活躍していくためにも、民族的なアイデンティティを超えて、個人として自分がどうしたいのかという感覚を養うことが大切です。
かつては、いい学校を出て、いい会社に就職してという敷かれたレールの上を歩む時代でした。
そして現在は「多様性」とはいわれますが、実際には「誰かの意見の多様性」にすぎず、実は、他人の価値観に基づいて生きている人が多いのではないでしょうか。
多くの情報が満ち溢れているなかで、それに乗っ取られやすくなっていることで、本来自分自身はどうしたいのかといった一番大事な部分がなおざりにされていることに一刻も早く気づくとともに、その軌道修正を図って本当の自分を取り戻さなければならないと言えます。
QOLの向上は正しく自分自身にとっての人生や生活の質の向上ですから、是非とも「自分がどうしたいのか」を問い続けていただきたく思います。