笑いの効果

さて、今回の話題は「笑いの効果」についてのお話です。

昔からのことわざに、「笑う門には福来る(わらうかどにはふくきたる)」というものがあります。
いつもにこにこしていて笑いが満ちている人の家には自然に福運がめぐって来るという意味ですが、これから新年を迎えるあたって、とってもふさわしい言葉のように感じます。

なぜなら、私たちにとって「笑い」「笑顔」は、身体的にも精神的にも社会的にもより良い状態、「 well-being(ウェルビーイング )」に最も良い影響を与えているからです。
特に心理面での効果として最も素敵なことは、笑っている人自身が幸せを感じることだけではなく、笑っている人を見ている周りの人たちも幸せな気持ちにさせてしまう魔法のような効果にあります。

もしもこの「笑い」がなければ、この人間社会はどうなってしまうでしょうか。

笑顔にデメリットは存在しません。
これまでの人生の中で、大切な人の笑顔に癒やしや幸せを感じられた経験をお持ちの方も多いのではないでしょうか。
笑いは、楽しさ、嬉しさ、おかしさなどを表現する感情表出行動の一つで極めて人間的なものであり、なくてはならないものです。

これまでに、笑いの効果については数々の研究が行われ、人体に良い影響を及ぼしていることを証明するエビデンスが、欧米を先駆けにして数多く発表されています。

笑いの効果が始めて脚光を浴びたのは、1976年頃、米国のジャーナリスト・作家であった Norman Cousins(ノーマン・カズンズ)氏が、ビタミンC の投与と共に、笑いを治療に取り入れることで快復したというエピソードを発表してからだといわれています。

Cousins氏は医師より、治る見込みが500分の1ともいわれた難病「強直性脊椎炎」と診断されましたが、自分のストレスを解消する手段としてコメディ番組や本を見て笑うことで、痛みがなく眠れることに気づいたそうです。
そしてその後も、繰り返し笑いの映像や本などを見て笑うことによって、この難病を克服したこと、その一連の過程を NEJM誌に特別寄稿として発表したそうです。
その寄稿がきっかけとなって、医学界で「笑いの効果」が注目されるようになりました。

笑いと健康の関連性はとっても強く、医学的に捉えると呼吸器系の観点と免疫系の観点、二つの観点があるといわれています。

呼吸器系の観点からは、笑う時には下腹部に力が入り息を短く吐くようになりますが、これは腹式呼吸と同じ呼吸法で呼吸量も多くなり、大声で笑うなどを繰り返すことで筋肉も動かされ、呼吸能力が高まることがわかっています。
また、体内にたまっている二酸化炭素を体外に排出して、沢山の酸素が体内に入りやすくなります。
このように、笑いが呼吸に作用することによって、さまざまな身体の不調も整えてくれるようになるのです。

免疫系の観点からは、笑いが NK細胞(ナチュラルキラー細胞)を活性化して体の免疫力をアップすることがわかっています。

わたしたちが笑うと、免疫のコントロール機能をつかさどっている間脳に興奮が伝わり、情報伝達物質の神経ペプチドが活発に生産されます。
善玉の神経ペプチドは、血液やリンパ液を通じて体中に流れ出し、NK細胞の表面に付着してNK細胞を活性化させるのです。
NK細胞が活性化することで、がん細胞やウイルスなどの病気のもとをやっつけてくれることで体の免疫力が高まります。

そして興味深いことに、大笑いをした後の方がNK細胞が活性化することや笑いは短時間で免疫系の機能を向上させる効果が出ることなどもわかっています。

その他にも、笑いの効果については実にさまざまな研究・検証結果が報告されています。
例えば、笑いの身体的効果としては、痛みの緩和やリハビリテーション、アレルギー患者の皮膚症状の改善、食後血糖値上昇抑制、血行促進や筋力アップ、脳の働きの活性化、睡眠の質向上など、多くの領域で報告されています。
また心理的効果としては、ストレスコーピング、人間関係の確立、緊張・不安の緩和、怒りや敵意の緩和、自律神経の良好なバランス(リラックス効果)、主観的幸福感の向上など、数え上げればきりがないほどです。

笑いの効果ってすごいですね!

シニアにとって気になる検証としては、大阪府立健康科学センターが行った「笑いの頻度と1年後の認知機能との関連についての横断・縦断研究の結果」があります。
「ほぼ毎日笑う人」と「ほとんど笑わない人」では、後者のほうが1年後の認知機能の低下が大きいという調査結果が出ています。

そしてもう一つの紹介したい研究は、近畿大学 医学部 内科学教室(心療内科部門)と吉本興業ホールディングス(株)が共同で実施している「笑い」の医学的効果の検証です。
2017年に実施した第1弾の検証では、笑いが「緊張・不安」「怒り・敵意」「疲労」のスコアを改善することが報告されました。そして、2022年の4月からは第2弾として、「笑い」によるがん経験者の生活の質向上とストレス緩和を目指した検証が実施されました。
がん経験者がお笑いを鑑賞し続けることで、生活の質がどの程度向上するのかなど、今後どのような結果が報告されるのか心待ちにしているところです。

笑い、笑顔にまつわる名言には、「笑いは人の薬」ということわざがあります。
笑うことが心と体の健康にとって良い薬になるいうことを表した言葉です。
また、ご存じの方も多いと思いますが、「泣いて暮らすも一生笑って暮らすも一生」という有名な言葉もあります。
たった一度の人生、どうせなら泣きながら生きるのではなく、日々笑顔で人生を謳歌しましょう!という意味のことわざです。

そして最後に、ぜひご紹介したい名言が、「楽しいから笑うのではない、笑うから楽しいのだ」という言葉です。
これは、元ハーバード大学教授で米国の心理学者、ウィリアム・ジェームズが残した名言で、夏目漱石にも影響を与えたといわれたほど有名な方の言葉です。

「最近何か楽しくないなぁ」と気分が落ち込んだりしたときには、ぜひこの言葉を思い出してください。
そして、作り笑いでも良いので大いに笑ってみてください。
笑顔でいることを心掛けるだけで、気持ちもきっと明るくなってくると思います。(笑うことによって脳内ホルモンであるエンドルフィンが分泌され、自然と心の痛みが軽減され幸福感がもたらされるそうです)

年末年始、特に年始には、初笑い○○○といったテレビのお笑い番組やお笑いライブ、漫才・落語・喜劇・コメディ映画や動画など、盛りだくさんです。
また、笑いを誘発するおしゃべりの機会も多くなることでしょう。
是非来年も「笑いのたえない毎日」となりますように、皆さまの幸せを心より願っております。
それでは皆さま、良いお年をお迎えください!

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