懐かしさは蜜の味

さて、今回の話題は「懐かしさは蜜の味」についてのお話しです。

ここ数日間、とみにQOLが低下しがちな状況に陥りました。
身体の具合がどこかしら変調をきたし、病院や歯医者へ治療に行く機会が増え、これまで当たり前にできていたこともしづらくなっているような感覚になり、気持ちの上でもぱっとしない状態です。
病は気から。このような時は、QOLを高めるどころか、QOLを低下させないようにするのが精一杯で、自然とため息もでてきがちです。

そんな中、ふと目にした記事が日本経済新聞「私の履歴書」での村井邦彦さんの執筆記事でした。
村井さんは、日本の作曲家、音楽プロデューサーでアルファレコードを創立され、これまで数々のヒット曲を世に送り出されていらっしゃいます。
ジャンルは、ポップス、グループサウンズ、フォークソングが中心で、シニア世代には懐かしい曲ばかりです。
例えば、森山良子の「雨上がりのサンバ」、ザ・テンプターズの「エメラルドの伝説」、赤い鳥の「翼をください」やトワ・エ・モアの「或る日突然」などの作曲、またプロデューサーとして荒井由実(現・松任谷由実)やイエロー・マジック・オーケストラ(YMO)などを世界に送り出し、成功に導かれた方でもあります。

デビュー作は、1967年に発売された、ギリシャ出身の女性歌手、ヴィッキーの「待ちくたびれた日曜日」という曲です。
まだ子どもだった頃に、何となく聴いたことがあるような、ないような、不思議な回顧の想いから、パソコンで YouTube 検索をして探してみると、その昔に見たことのあるレコードジャケットの写真とともに、その曲が見つかりました。

早速、聴いてみると何とも心地よい感覚を覚え、その懐かしいメロディーについつい引き込まれてしまいました。
そこからは、手当たり次第に若い頃に好きだった歌を次から次へと検索し、立て続けに聴きました。

すると、あれほど気が滅入っていた自分が、まったく異なった自分になっていて、知らず知らずに幸せな気持ちに包まれていました。

後からわかったことですが、「懐かしい歌を聴いたり、回顧や回想をすることで心と身体が元気になる」ということが、さまざまな脳科学の研究で報告されているそうです。

脳の発達や加齢のメカニズムを研究されている、東北大学加齢医学研究所の瀧 靖之教授によれば、懐かしさはストレスを解消し、脳の健康にとっても良いらしいのです。

瀧教授は、脳のMRI画像を用いた延べ約16万人にも上るデータベースを作成して解析し、どういう生活をすると脳がどう加齢するのか。どうすれば認知機能が保たれるのかを研究してこられた脳科学研究の第一人者です。

私たちは昔を懐かしんでいるときに、甘酸っぱいとか切ないとか、ちょっとした幸せ(主観的幸福感)を感じることがあります。
昔を回想することで、脳の中の心地よさに関わる神経伝達物質であるドーパミンが分泌され、心身の状態を改善する効果が期待できます。

瀧教授は、回想することを「幸せの自家発電」と呼んでおられます。頭の中には記憶がたくさんあり、それを少しでも上手く使うことで、幸せが感じられ、ストレスのレベルが下がります。
結果的に動脈硬化に関わる高血圧や糖尿病のリスクを下げ、さらには将来の認知症のリスクも下げることがわかっているのです。

素晴らしいことですね!
瀧教授の著書、「回想脳 脳が健康でいられる大切な習慣」(青春出版社)には、このような興味深い研究報告が満載なのですが、他にも2022年に監修された「ノスタルジック・オルゴール~回想で心と身体が元気になる脳活性CD」というCDが発売されているそうです。
※このCDに収録されている「α波オルゴール」の美しい響きには、大脳生理学的に配慮された微妙な音のゆらぎ信号が含まれているそうです。

「懐かしさ」が脳にいい!
まさしく、「懐かしさは蜜の味」効果といえるのではないでしょうか。

ここで、少し話しは変わりますが、皆さんは最近、ラジオ番組は聴いていらっしゃいますでしょうか?
テレビの放送波コンテンツの視聴は減少しているらしいのですが、ラジオの視聴状況は以前と変わりなく、その人気が継続しているらしいのです。

ラジオは100年近く続いている番組もあり、中には、学生時代に聴いた懐かしい番組が続いていたりします。おそらく多くの皆さんが試験勉強の傍ら、ラジオの深夜放送を聴いておられたのではないでしょうか。

ここでいくつかの番組を紹介しますと、例えば、現在も放送中の長寿番組では、1967年(昭和42年)~放送されている、ニッポン放送の「オールナイトニッポン」や、TOKYO FM の「JET STREAM」があります。
そのオールナイトニッポンではこの2月、55周年を記念して、55時間スペシャルが放送されたところです。
また同じく、1967年から放送されていて一旦終了していた、MBSの「ヤングタウン」が何と22年ぶりに再び夜の定番として放送されています。

他にも、今は終了していますが、懐かしいラジオ番組がたくさんありました。
1966年(昭和41年)~放送されていたABCの「ヤングリクエスト」、また1968年(昭和43年)~52年間放送されていて、つい2年前まで放送されていた文化放送の「走れ!歌謡曲」などもありましたね。

今想いだしても、懐かしさがいっぱいのラジオの深夜番組でした。
昔を回想することで、何とはなく気持ちも若返ってきたような感じになりませんでしたでしょうか?
それでは、懐かしさはひとしおですが、ここで最後に、過去ではなく未来に続くラジオも紹介させていただいて終わりたいと思います。

最近は本やブログなど、本来読む内容を音声で聴くことができるサービスが増えていますが、皆さんは「インターネットラジオ」というものをご存じでしょうか?

その中でも今回は、「ラジオの新しいカタチ」として2015年に大阪府の門真市から始まり、現在では、全国12カ所のスタジオと800名以上のパーソナリティを擁するラジオ放送局「ゆめのたね」、というインターネットラジオをご紹介したいと思います。

開局のきっかけは東日本大震災で、その時にボランティア活動をしていた現創業者が、「目のあたりにした被災地の現状や現地で必要な物資」について、インターネットラジオを通じて発信されたそうです。
すると、そのラジオを聴いた若者たちが全国から駆けつけてきたことを機に、その可能性を感じて開局に至ったという曰く付きのラジオ放送局です。

ゆめのたね放送局は、「ご縁・応援・貢献 人の夢を応援するラジオ」をキャッチフレーズに、「あなただけのラジオ番組が持てる!」という応募で集まった多様な人々が、月会費を払ってパーソナリティになり、毎週決まった30分の番組を企画・放送するものです。

実は、私のコワーキング仲間の西野美宏さんも、パーソナリティをされています。すごいですね!
いつも素敵な番組「人のトリセツ話」を聴かせていただき、学びや遊び目線での様々な話題や知識の豊さには驚くばかりです。

ゆめのたねでは、創業者お二人による、SNSを超える「第4の居場所」という本も出されています。多様なパーソナリティのお話しを聴くことで、ガンバル人たちを応援したり、QOLの向上につながる新たな気づきや「ゆめのたね」を発見することができるのですね!

幸せな気持ちに浸りつつ、今回は「懐かしさは蜜の味」、そして過去から未来へ!とつづく夢のある話題、そんなお話しでした。