年金を知ると定年後の生活が見えてくる

さて、今週はシニアの持続可能な生活にかかせない「年金」についての話です。

皆さんはもう年金を受給されておりますでしょうか?
どなたでも、定年を迎える年齢になりますと、「年金生活を送る」ことが現実となります。
しかしながら、年金をまだ受給されていない方は、年金についてよく分からないという方も多いのではないでしょうか。

ここでは特に、全体の7割近くを占める第2号被保険者等(会社員・公務員)約4513万人の年金のしくみについて紹介してみたいと思います。
※厚生労働省「2020年度厚生年金保険・国民年金事業の概況」より

まず、年金についての知識を簡単に整理したいと思います。
年金には制度の運営手法によって公的年金と私的年金に分類されます。
公的年金とは、一定期間以上、国に保険料を納めるなどの条件を満たすことで受け取れる「国民年金(基礎年金)」や「厚生年金」のことをいいます。
私的年金とは、企業年金や個人年金を指します。

現在の公的年金の仕組みは「2階建て」になっていて、まず日本に住んでいる20歳以上60歳未満のすべての人が加入する「国民年金(基礎年金)」と、会社や公務員など事業所に勤務している人が加入する「厚生年金」の2階建てになっています。

かつて公務員の方は、共済年金という制度がありましたが、2015年10月から公務員や私学の教職員の方も厚生年金の加入者となり、制度が一元化されました。

年金についての情報で、私たちがよく間違えやすいことの一つが年金の名称や平均月額などの情報です。
国民年金に加入して老齢基礎年金を受け取りますが、その名称を間違えやすく、最近は、国民年金(基礎年金)と表記されることが増えてきました。
また、厚生年金を老齢厚生年金と呼ぶことからさらに間違えやすいところです。

もう一つは、平均月額を紹介している場合にも勘違いすることがあります。
それは例えば、よく厚生年金の金額について、男性平均月16万4742円、女性平均10万3808円、などと紹介されていたりします。
これを見ると、厚生年金だけでこの平均月額?、自分の厚生年金額と比較して、あまりの受給額の高さにしょんぼりしてしまいます。

ここで勘違いをしてはいけないことは、この老後の厚生年金の平均月額には、国民年金(基礎年金)を含んでいることです。

少し、ホットしましたでしょうか?
私も、しょんぼりした者の一人でした。とっても間違われやすいのです。
また、テンションが上がったり下がったりして恐縮ですが、実際の手取り額についても、額面から税金や社会保険料など引かれものが多々ありますので、期待するほどの額面通りとはいきません。
人生100年時代は、健康のためにも、少しでも長く働くことが必要になるかもしれませんね!

公的年金の受給額は、納めた保険料だけでなく、どれくらいの期間、どの年金制度に加入していたかによって変わってきます。
受給見込額を知るには、特に35歳・45歳・59歳の節目年齢時に封書で送られてくる「ねんきん定期便」を見て内容をチェックすることが一番です。
そして、最も新しいニュースとして、昨日より「公的年金シミュレーター」が開設されました。これは年金を個人ベースで見える化できるツールです。
働き方・暮らし方の変化に応じて、将来受給可能な年金額を簡単に試算できるツールがいよいよ試験運用されることとなりました。

年金制度については、この令和4年4月から年金制度の一部が改正されました。
特に対象者であるシニアにとっては、知識のアップデートが欠かせません。
ここでまず改正された項目だけを下記に簡潔に紹介いたしますので、それぞれ詳細内容は改めてご確認をお願いします。
1.繰下げ受給の上限年齢引上げ
  老齢年金の繰下げ年齢の上限が70歳から75歳に引上げ。
2.繰上げ受給の減額率の見直し
  繰上げ受給した場合の減額率が1月あたり0.5%から0.4%に変更。
3.在職老齢年金制度の見直し
  60歳以上65歳未満の方の支給停止基準が28万円から47万円に緩和。
4.加給年金の支給停止規定の見直し
5.在職定時改定の導入
6.国民年金手帳から基礎年金番号通知書への切替え      以上です。

最後になりましたが、年金について最も気をつけたいことは、「年金は自分自身で請求しなければ、年金を受け取ることができない」ということです。
受給開始年齢になれば、年金の支給が自動的に始まるという勘違いをしてしまうことのないようにしなければなりません。

手順は、受給開始年齢の3ヶ月前頃に、日本年金機構から「年金請求書(事前送付用)」という書類が送られてきます。
この年金請求書に必要事項を記入し、必要書類と共に「年金事務所」や「街角の年金相談センター」へ提出することで、初めて請求手続が完了するのです。

年金について分からないことがあれば是非、全国に相談・手続の窓口がある「年金事務所」を活用されることをお勧めいたします。
受給年齢に達していなくとも、個人の相談は、原則、全国どこの年金事務所でも受付けていただけます。
わたくしも、最寄りの年金事務所へ2回ほど相談予約を入れて利用させていただきましたが、親切丁寧に教えていただけました。

年金は、シニアのQOL、持続可能な生活基盤づくりには欠かせません。
「知らなかったからできなかった。やり方が分からなかったからやらなかった」とならないように、この機会に改めてご一緒に学んで参りましょう!