ヤングケアラー続報!

さて、今週の話題は以前にもこのメルマガで書かせていただいた「ヤングケアラー」に関する厚生労働省の実態調査のニュースについてです。

家族の介護や世話を18歳未満の子ども「ヤングケアラー」について、政府は7日、全国の公立校に通う小学6年生を対象に実施した初の実態調査の結果を発表しました。
6.5%(約15人に1人)が「世話をしている家族がいる」と回答し、既に調査結果を公表している中高生同様に、低年齢層でも一定程度が家族ケアに追われる実態が判明しました。
一方、大学生への調査も初めて行われ、進学や就職の不安につながっている実態も分かりました。

児童調査は1月に全国350校で実施されました。
調査票(無記名)を郵送で回収する方式で9,759人から回答を得ました。
2020年度に実施した中高生の調査では、公立中学2年生の5.7%、公立高校2年生(全日制)の4.1%がヤングケアラーとされましたが、今回はこれらを上回りました。
しかし、今回は児童が混乱する可能性などを考慮し、ヤングケアラーの具体的な事例を説明せずに調査しており、過度な負担ではない「お手伝い」なども含まれているとみられ、実態より大きな数字が出ている可能性があるといいます。

その上で、児童がケアする相手(複数回答)は、きょうだい(71.0%)が最も多く、母親(19.8%)、父親(13.2%)、祖母(10.3%)、祖父(5.5%)と続いています。

ケアの理由(複数回答)は、相手がきょうだいの場合「幼い」(73.9%)が突出し、弟や妹の世話や家事などをしているとみられています。
両親の場合は「分からない」(33.3%)が最多で、「その他」(19.6%)、「無回答」(15.2%)と続き、家族の病気や障害への理解が児童には難しい状況が浮かんできます。
次いで「日本語が苦手」(10.9%)が多く、日本語が母国語ではない親の通訳などを担っている状況がうかがえます。
「心の病気」は8.7%、「身体障害」は8.0%でした。

ケアを始めた年齢は7~12歳が約7割で、6歳以下も約2割いるといった結果がでています。

ケアの内容は家事や身体介護、見守りなど多岐にわたっており、その頻度は「ほぼ毎日」が約半数となっています。

ケアに割く時間は平日の1日平均約2.9時間で、3時間未満が約半数を占め、6時間以上も約1割もいました。
世話の「大変さ」を感じる児童も一定数おり、心身の健康への悪影響が懸念されます。

ケアがあるためにできていないこと(複数回答)は「特にない」(63.9%)が最多でしたが、「自分の時間がとれない」(15.1%)、「友だちと遊べない」(10.1%)が続いています。
また、相談経験の有無は「ない」が76.1%に上りました。

一方、大学生は21年12月~今年1月、全国396校の3年生を対象にウェブで回答を求めたところ9,679人から回答を得ました。
「世話をしている家族がいる」は6.2%、「今はいないが、過去にいた」は4.0%でした。
一般的にヤングケアラーの定義は18歳未満ですが、家族ケアの負担が進学などに与える影響を明らかにする目的で実施しました。

将来の不安(複数回答)は「自分の時間がとれない」(20.1%)▽「1人暮らしができるか」(15.9%)▽「恋愛・結婚」(14.4%)▽「希望する就職先・進路の変更を考えざるを得ない」(13.6%)などです。

ケアの相手(複数回答)は母親(35.4%)、祖母(32.8%)、きょうだい(26.5%)の順に多く、母親の場合の理由は精神疾患が最多となっています。

大学入学前からケアを担っていた学生は、その3割弱が進学の際に経済的な不安を抱えていました。

調査の検討委員会座長は、児童について「子どもがケアの状況を理解したり、負担を自覚したりするのは難しい。だからこそ、支援には周囲の気付きが大切になります。
先生や福祉の専門職、地域の民生委員・児童委員ら周りの大人側の啓発を進める必要がある」と指摘しています。

大学生については「ケアが必要な家族がいても、自分の人生を歩むことができるよう、自立のための支援が重要で、どのような制度を使えばいいのか相談できる人が必要で、奨学金制度の使い勝手など経済面の支援の充実も期待したい」と話しています。

以上がニュースの内容です。

QOLジャパンでは、今回出された実態調査と既に調査済みの中高生の実態調査の内容をあわせて周知し、もう一度介護保険制度導入によって、家庭で担うことを社会で担うように変えた福祉政策を広く知っていただきたいと考えています。
特に今回の対象となったヤングケアラーを実践している子どもたちに、是非とも知っていただきたいと切に希望し、教育現場等で介護保険制度のレクチャーをする機会が増えることに期待したいと思います。
この実態調査により、国や自治体がヤングケアラーが担っている介護の部分を、出来るだけ社会により担っていく方向へ軌道修正をしていただき、子どもたちのQOL向上へと繋がる道筋を考えるトリガーにしていただきたいと考えています。
QOLジャパンとしては、そもそもの介護のあり方が「介護は家庭でみるもの」といった先祖返りを防ぐために、引き続き色々な機会を通じて情報を発信し、ヤングケアラーの方や読者の皆さん方と情報共有できるよう精一杯頑張って参ります。