オーラルフレイル対策してますか?

さて、今回の話題は「オーラルフレイル」についてです。

オーラルフレイルとは、口腔機能の軽微な低下や食の偏りなどを含み、加齢に伴って心身が衰える虚弱(フレイル)の一種です。
オーラルフレイルが進行すると、咀嚼(そしゃく)や嚥下(えんげ)、唾液の分泌、発声などの機能が低下して、「口腔(こうくう)機能低下症」という病気として診断されることとなります。

この「オーラルフレイル」という言葉が知られるようになったのは、東京大学高齢社会総合研究機構が高齢者約2000人を対象に2012年から実施した大規模調査がきっかけでした。
この調査で、オーラルフレイルと判定された高齢者は、その4年後に全身のフレイルになるリスクが2.4倍、要介護リスクが2.4倍、総死亡リスクが2.2倍それぞれ上昇していたのです。
オーラルフレイルが老化の引き金になり、全身の衰えや寝たきりにつながるケースが多いことが、この調査を通して分かったのです。

口腔機能の低下を示す症状には、実にさまざまな症状があります。
例えば以前と比較して、
・食べ物が噛みづらくなった。
・硬いものが食べにくくなった。
・食べ物が口に残ってしまうようになった。
・この頃ちょっと食べ物が飲み込みにくくなった。
・口の中が乾きやすくなった
・食事の時、むせやすくなった
・滑舌が悪くなった
・食事の時間が長くなってきた。
などの症状が代表例です。

オーラルフレイルは、健康と機能障害の中間にあって、可逆的であることが大きな特徴です。それはつまり、上記の様な軽微な症状にも早く気づくことができれば、適切な対応をすることで元の健康に近い状態に戻せる可能性があるということです。

健康寿命を延伸するには、「お口の健康(口腔ケア)」が重要な要素です。
厚生省(現・厚生労働省)と日本歯科医師会では、1989年(平成元年)より「8020(ハチマルニイマル)運動」を展開しています。
8020運動とは、「80歳になっても20本以上の自分の歯を保とう」という、お口の健康を啓発する運動です。

20本以上の歯があれば、食生活にほぼ満足することができると言われており、「生涯、自分の歯で食べる楽しみを味わえるように」との願いを込めてこの運動が始まりました。

日本歯科医師会のホームページによれば、8020達成者は非達成者よりも生活の質(QOL)が良好で、社会活動意欲があるとの調査結果や、残っている歯の本数が多いほど寿命が長いという調査結果が出ているようです。

その他にも、食べ物をしっかり噛むことができれば、全身の栄養状態も良好になり、よく噛むことで脳が活性化され、認知症のリスクが軽減するという調査結果も出ています。 

特に最近では、歯周病が全身に及ぼす影響が非常に注目されるようになりました。
歯周病は歯そのものではなく、歯を支える歯ぐきや歯を支える骨(歯槽骨:しそうこつ)に炎症性の変化が起こる病気ですが、その原因となるのは、歯垢(プラーク)の中にいる細菌です。

歯みがきが充分でないと、歯垢や歯石が歯と歯ぐきの間に繁殖し、この中にいる歯周病原菌といわれる細菌が歯周病を引き起こします。
そして困ったことに、この歯周病原菌は歯の周りにとどまらず、肺炎をはじめ心筋梗塞や脳卒中、糖尿病など、生活習慣病に悪影響を与えることが、科学的に分かってきているのです。

この様に、全身の健康と口腔の健康に関する科学的根拠については現在進行形で、多方面の研究・調査が進み、オーラルフレイルの重要性もますます高まってきています。

どれくらい高まっているかと言いますと、驚くことに、この「オーラルフレイル」などの口腔の健康については、なんと令和4年の6月7日に閣議決定された、「経済財政運営と改革の基本方針2022」、第4章「2.持続可能な社会保障制度の構築」の中でも触れられているくらいです。

(以下抜粋)「全身の健康と口腔の健康に関する科学的根拠の集積と国民への適切な情報提供、生涯を通じた歯科健診(いわゆる国民皆歯科健診)の具体的な検討、オーラルフレイル対策・疾病の重症化予防につながる歯科専門職による口腔健康管理の充実・・・に取り組む」と記載されています。

この基本方針の発表を受け、一部メディアでは「国民皆歯科健診の義務化」などと報道がされたのは、まだ記憶に新しいことではないでしょうか。

私たち高齢者にとって、「食べること」「話すこと」はとっても大切です。
そして年を重ねるごとに、まず何よりも「飲み込む力を衰えさせないこと」が重要です。
食べることは、生きることに直結します。
QOL(生活の質)を維持するためにも、いつまでも「自分の口で食事ができること」が、私たちの理想とするべき目標です。

そのためにも、半年に一度はかかりつけの歯科医院に行き、「生涯を通じた歯科健診」と「オーラルフレイル対策」、「疾病の重症化予防」などの口腔健康管理を継続することが必要不可欠です。

口腔機能の低下を予防するために、サンスターでは、オーラルフレイルケアプロジェクトとして、無料のスマートフォンアプリを提供しています。
「おくち元気チェック」アプリではお口の元気度が簡単にチエックできますし、「毎日パタカラ」アプリでは、「パ」「タ」「カ」と連続発声する機能を測定して、楽しくお口周りの筋肉を鍛えるメニューが揃っています。

もし宜しければ、試しに一度体験してみてはいかがでしょうか。