より良い睡眠とは

さて、今週の話題は「より良い睡眠」についてのお話しです。

健康を維持し病気を予防するための、健康の三大要素が「運動」「食事」、そして「睡眠」です。
「病気にならないための最初の対策は睡眠にあり」とも言われるように、特に近年睡眠の科学的研究によって眠りの解明が進み、数多くの知見が発表されています。

私たちにとって、睡眠は多くの重要な役割を持っています。
単に疲れを取るだけではなく、起きている時間にはできない体の修復という大切な役割があることが分かっています。
眠りの研究において、睡眠と覚醒を切り替えるスイッチ現象の存在や、疲労した脳の神経細胞の修復など、まだまだ解明されていない部分も多いようですが、解明が進めば睡眠医学には飛躍的なパラダイムシフトが起こるだろうといわれています。

日常の生活において、夜な夜な訪れる人生の3分の1を占める眠りの時間が、残り3分の2を占める日中のパフォーマンスを左右するといわれているのです。

このように重要な役割を持つ睡眠ですので、健康志向の高まりと共に、どうすれば良質な睡眠を取ることができるか、という方法を探ることへの関心は高まるばかりです。
ここで特に、科学的根拠のある「より良い睡眠」をとるための代表的な知見を書きしるしてみますと、

1. 睡眠の質を決める上で最も大切なことは、「眠り始めの90分間の睡眠の質」によって決まる。
※最初の最も深いノンレム睡眠に無事たどり着くことが肝心、「90分の黄金法則」ともいわれ、寝ているだけで自律神経が整い、成長ホルモンが最も多く分泌され、脳のコンデイションが良くなる。
2. 起床時間は一定にして、朝の太陽の光を浴びることで体内時計を整えると良い。
※眠気を生じさせる睡眠ホルモン(メラトニン)は、朝に光を浴びてから14~16時間後に分泌される。
3. 入浴を、就寝したい時間の90分前くらいに済ませる。直ぐ寝る時は、ぬるめの湯かシャワーで済ます。
※人は深部体温が下がるときに眠くなる。入浴によりまず皮膚温度を上げ、熱放散すると、深部体温が下がり入眠できる。

「睡眠」についてのリテラシーを学ぶには「スタンフォード式 最高の睡眠」という書籍(著者:米国スタンフォード大学医学部 西野精治教授)がとても参考になりました。
スタンフォード大学睡眠研究所は、「世界一の睡眠研究所」と称されている処です。

この本には、睡眠の役割を「5つの睡眠ミッション」として分かりやすく記載されていますので、項目だけを簡潔にご紹介したいと思います。
① 脳と体に「休息」を与える。②「記憶」を整理して定着させる。
③「ホルモンバランス」を調整する。④「免疫力」を上げて病気を遠ざける。
⑤「脳の老廃物」をとる。とあります。

そして米国において睡眠への意識が高まったきっかけは、2002年に行なわれた110万人を6年間にわたり調べた大規模調査からだと紹介されています。
この追跡調査の結果、「7時間睡眠の人たちが最も死亡率が低い」ことが明らかになったことが分岐点になったようです。

その他にも、「睡眠」についてのリテラシーを学ぶには、以前に厚生労働省から公表された「健康づくりのための睡眠指針2014」が参考になります。
専門家の知見に基づき、睡眠12箇条として具体的な指針にまとめられていますのでとても分かりやすく役に立ちます。
睡眠指針によりますと、快適で良質な睡眠が確保されているかどうかの評価は、睡眠時間や睡眠パターンは個人差が大きいので、まずは日中しっかりと目覚めて過ごせているかを目安に、評価をしてみると良いようです。

睡眠はQOL(生活の質)に大きく影響します。
睡眠不足や睡眠障害などの問題があると、疲労が蓄積してストレスが解消されずに、ココロと体への負担が増し、QOLの低下につながります。
睡眠不足が長期にわたると交感神経系優位が持続され、生活習慣病やうつ病などのリスクが高まることも分かっています。

眠りの研究者は、睡眠が足りていない状態を「睡眠不足」ではなく「睡眠負債」という言葉を使って表現するそうですが、日本は睡眠負債を抱える「睡眠不足症候群」の人が外国に比べて多い、といわれています。
経済面での睡眠負債についての研究では、睡眠不足による日本全体のGDPの損失は15兆円以上になる、との試算もあるほどです。

私たちが目指す、「QOLを高めてWell-beingを叶える」ためにも、「より良い睡眠」をとることが、一つの「カギ」になるかもしれません。
どうか読者の皆さまには、適度な「運動」を行い、腸内環境にも良い「食事」と共に、「快適で良質な睡眠」をとっていただけることを切に願っております。