お雑煮あれこれ

さて、今回はお正月に欠かせないお雑煮に見る、地域の食材と歴史文化を紐解く「お雑煮あれこれ」というお話しです。

お正月になると家族の健康を願い、各家庭で作られる家庭料理「お雑煮」。
温かいおつゆにお餅の入った、日本人なら誰もが知る料理だが、実は地域ごとにまったく違う具材や味付け、調理法でつくられているということは、あまり知られていないのではないでしょうか。

まず、お雑煮には欠かせないお餅とおつゆから参りましょう!
分け目は岐阜県の関ケ原のようです。

一般的に東日本は醤油ベースのすまし汁で、西日本は味噌ベースの汁でお雑煮を作ることが多いようです。
お雑煮発祥の地は、実は京都です。
京都の食文化の影響を受け、関西地域では味噌ベースの文化が広がったんだそうです。
京都では白味噌を使いますが、日本海側の地域や一部の山間部では、赤味噌でお雑煮が作られています。

ここからは、もう少し掘り下げてみましょう!

●角餅×すまし汁 (例:東京都江戸雑煮)
北は青森県から岐阜県の関ケ原町に至るまでの地域は、お餅をのして包丁で切った「角餅」と言われる四角い餅の文化圏になっています。
一説によると餅が一般庶民に広がった江戸時代に人口の多かった江戸の町では、一つずつ手で丸めるよりも効率的に早く作れたため四角い餅が定着したということです。
出汁や具の素材は地域により様々ですが、醤油ベースの澄んだすまし汁が基本となっています。

●丸餅×味噌仕立て (例:京都府白味噌雑煮)
関ケ原町から西の地域は丸餅文化圏になっています。
関西地方から四国の香川県、徳島県にかけては味噌仕立ての出汁で、味噌の味も地域によって微妙に異なります。
例に挙げた京都は味噌汁と同じく白味噌仕立てが主流です。
丸餅文化圏で多く見られる丸く切った具材には、「家族円満」「ものごとを丸く収める」などの縁起をかけているそうです。

●丸餅×小豆汁 (例:鳥取県小豆雑煮)
少数派の文化圏ですが、山陰地方は「小豆雑煮」が盛んな地域になっています。
「小豆雑煮」とは、他の地域では「ぜんざい」や「しるこ」と呼ばれるものに近く、この地域では元日の朝から「雑煮」として食べられています。
昔は塩を少し入れて煮た小豆汁だったそうですが、現在では最初から砂糖を入れて煮たものが一般的となっています。

●丸餅×すまし汁折衷 (例:福岡県博多のブリ雑煮)
中国地方から四国、九州、沖縄までは丸餅とすまし汁の折衷文化圏です。
東北や関東地方と同様、地域によって出汁も具も素材が異なっています。
例に挙げた福岡のお雑煮はあご出汁です。
「あご」とはトビウオを干したものです。
主に長崎県の五島列島で漁獲されるトビウオですが、最大の消費地域は博多となっています。
あご出汁に干し椎茸も入った風味豊かな汁に、出世魚のブリが入るのが福岡流です。

「お雑煮」は、年神様に供えた餅を下げ、野菜や鳥、魚などの具材を加えて食べたのが始まりだそうです。
その歴史は古く、室町時代にまで遡るそうです。
当時は貴族や武士などの間で食され、上流階級では新年の豊作や家内安全を祈るお祝いの食事となっていたようです。
お餅は昔から特別な日に食べる「ハレ」の食べ物で、当時は高価なものだったそうです。
お雑煮が庶民の間に定着したのは、庶民でもお餅が手に入るようになった江戸時代以降だとか。
また、元日から3日にかけては祝いの膳にお雑煮を添えますが、「食い上げる」と言って、毎日1個ずつ餅の数を増やしていくと縁起がいいという言い伝えがあります。

ご紹介をしたお雑煮の他にもまだまだたくさんのお雑煮が全国各地で食されています。
お雑煮を食べるという基本のところは、家族単位で、この1年の感謝と向こう1年の無病息災を祈る儀式であることに変わりはないようです。
ただ、余りにも多様な食材を使うところは、その土地土地で収穫される食材の種類の豊富さによるところが大きく影響しているのではないかと考えられます。
現代社会になって、多くの人が仕事や結婚で全国各地へ移動する現状においても、未だ脈々とお雑煮の地域性が受け継がれていることは、小さい頃からの食文化の継承によって健康な心身を育んでくれた他には代えがたい故郷のお雑煮への感謝の念があるからではないでしょうか。
お雑煮を食することはwell-beingを叶えることに繋がることを多くの先達たちは理解していて、絶やしてはいけない大切なものとして連綿と続けてこられたのではないかと信じるほかないように思えてなりません。
健康への感謝やご先祖さまへの感謝は、そのままwell-beingを叶えることに直結し、QOLの向上へと導いてくれることでしょう!