「快適なお出かけ」後編

さて、3回シリーズの最後は、観光×MaaSについてお話ししたいと思います。では、早速お話しを進めていきましょう。

ビジネスパーソンの出張や観光客を想定した移動の取り組みですが、例えばJR東日本では高輪ゲートウェイ駅周辺をスマートシティ化して、MaaSの拠点にするという構想を進めています。
羽田空港や新幹線、開業予定のリニアからの利用客の利便性を高くし、国際会議場やオフィスビル、サービスアパートメントなどを備えて、国際ビジネス交流の場とし、超小型モビリティや人工知能を活用した配車システムなどの新技術を駆使した交通結節点をめざしています。
高輪ゲートウェイ駅の将来構想を見ると、会議で東京を訪れたビジネスパーソンの動きに関して、こんな事例が出ていました。
自宅で事前に予約しておいたモビリティで羽田空港から会議場まで移動している間、荷物は別ルートのモビリティが自動運転でホテルへ運びます。
会議後は友人と超小型モビリティを使って近隣の商業施設で買い物や食事を楽しんでからホテルに帰る…みたいな感じで、さまざまな移動手段をシームレスに活用できる次世代型交通ターミナルの姿が描かれています。
また、NTTアーバンソリューションズが開発する「街づくりDTC」という技術は、まちなかに設置したセンサーや個人が身に付けたセンサーをはじめ、街区のシステムデータなどを収集して、仮想の空間(デジタルツイン)で都市の人たちに提供するサービスをシミュレーションします。
さらにそれを現実のまちに生かしていく技術です。
この技術によって、移動という面では、例えばエレベーターの運行データを取得し、今後の混雑度合いから住民が移動するために最適なタイミングを予測することができます。
目的地に着いたタイミングで、住民の体調・状況に合った食事が配送されたりと、知らないうちに快適な環境が実現することになります。

複数の交通機関を連携させる「マルチモーダル」を観光と結びつけた取り組みとしては、福岡県糸島地区の事例があります。
ここでは昭和グループという地元の交通事業者が中心となって、さまざまなモビリティサービスを提供することで地域の課題解決を支援しています。

糸島半島は観光スポットとして人気がありますが、車以外の移動手段に乏しくて観光客が周遊しづらいという課題がありました。
そこで、バス事業やタクシー事業を展開する昭和グループと地元企業が「よかまちみらいプロジェクト」を立ち上げて、オンデマンドバス、カーシェア、電動サイクルといった複数のモビリティサービスを展開。
さらにワーケーションと組み合わせたり、ルート検索・決済アプリなどのサービス提供も同時に行っています。
もちろん、これらは観光客だけでなく地元の高齢者にも利用されています。

観光周遊を促すためのレコメンドサービスも、開発されています。
個人の嗜好データや旅行スタイル、予算などの条件をアプリに入力することで、AIが最適な観光コンテンツをレコメンドするものです。
ある調査によると、旅行しない理由として、若い世代は「交通費の高さ」や「移動手段がないこと」を挙げていました。
MaaSの充実によって交通の利便性が高まれば、旅行する人も増えるかもしれませんね。
まちにおける「移動」は、より進化していきそうです。

最後に近未来予測をしてみます。
■「外出」が変わる2030年のまち(予測)
・「スローモビリティ」や「オンデマンド交通」で、ちょっとした移動がハードルになっていた高齢者が気軽に外出できる
・「自動運転」によって、車に座っているだけで目的地に到着。移動時間は趣味の時間に活用!
・個人のデータやまちのインフラデータを解析して、携帯端末のアプリがランチの時間に混んでいないお店を提案したり、ストレスな          く移動できる交通手段を提案したりと、まちを快適に過ごせるようになる。
・観光地では、個人の趣味に合った最適なコンテンツを効率的に回れるようになる。
 まちには来訪者が増加し、地元の雇用も拡大。

3回に渡ってご紹介をした事例は近未来おいて高齢者の外出のハードルを下げ、高齢者のQOL向上への足がかりとなります。
また、旅行者などのQOL向上に寄与することにもつながり、経済面へのプラスの影響にも期待が持てます。
ただ、前回に触れた遠距離・中距離・近距離の接続をシームレスなものにするには、インフラ整備やMaaSへの認知度向上を図り、生活の中で極々普通であるといった意識を社会が持つようにならなくてはなりません。

現在の状況は技術が先行していることを強く感じざるを得ないため、それを使いこなす人や社会環境が技術に追いつき、パラレルでQOLの向上へと向かうことを希望したいと思います。