「快適なお出かけ」中編

さて、「快適なお出かけ」ができるようにの3回シリーズの2回目は、移動手段の確保と健康維持についてのお話しです。

高齢者の外出支援に関して、ちょっとした外出や移動を快適に行える取り組みとして、最近は「グリーンスローモビリティ」を導入する自治体が増えています。
「グリーンスローモビリティ」というのは、公道を時速20キロメートル未満で走行する小型の電動車両のことで、グリスロとも呼ばれています。
イメージとしては、ゴルフの電動カートのようなものです。

広島県福山市の鞆の浦(とものうら)地区では、実際に活用されています。鞆の浦地区は生活道路が狭く、急な坂道も多いところです。
観光客の移動手段はレンタカーぐらいしかなく、さらにはレンタカーの増加によって地域住民の交通にも支障を来すことになりました。
バスの路線や便数も限られているため、高齢者の外出支援や買い物支援が求められるようになったのがきっかけです。
2018年に「グリーンスローモビリティ」の導入に向けた実証調査が行われ、調査の結果、鞆の浦地区の住民で57%、観光客からも73%が「必要」との回答が得られました。
また、有料運行についてもそれぞれ44%、58%が「利用したい」と考えていることがわかりました。
そこで、地元のタクシー会社と連携して本格的に事業化し、現在は観光客、地域住民の足として運行されています。
電動車両なので低炭素ということもアピール度が大きく、国土交通省としても積極的に推進しているようです。

最近では、バスや「グリーンスローモビリティ」よりも小さい乗り物で、移動を楽にするものとして「WHILL(ウィル)」というものがあります。
電動の車椅子で操作が簡単で、高齢者や障がい者の移動手段として注目されています。
「WHILL(ウィル)」は羽田空港内で活用されていて、自動運転システムを搭載し、乗るだけで搭乗口まで移動できるサービスも始まっています。

JR東日本でも高輪ゲートウェイ駅でパナソニックが開発した車椅子型モビリティ機器「PiiMo(ピーモ)」の実証実験を行っています。
「PiiMo(ピーモ)」は、車両に付いているセンサーが周囲の情報を感知して障害物との衝突を回避する機能も持っています。
これから超高齢化社会を迎えるなかでこうしたロボット特性を備えたパーソナルモビリティサービスは一層充実し、高齢者や障がい者の移動もより快適になっていくと考えられます。

公共交通機関を中心とした「遠距離」、コミュニティバス等の「中距離」、パーソナルモビリティの「近距離」をシームレスにつなぐようになれば、まちに暮らす人の外出はすごく楽になりますね。

一方、外出の利便性と同時に直接的に健康の増進をめざす取り組みもあります。
茨城県つくば市では、医療とMaaSを連携させたヘルスケアモビリティサービスを行っています。
つくば駅と大学付属病院間に水素燃料電池による自動運転シャトルバスを導入し、バス乗降時の顔認証で病院受付、診療費の会計処理を行うなどのサービスを提供しています。

これからはドア・ツー・ドアとはいきませんが、当然ながら医療機関を利用する高齢者の増加で医療機関への交通手段にMaaSを活用するニーズは増えていくでしょう。
移動によるケガのリスクが高い高齢者が、安全でシームレスに交通機関を利用できる世界が近未来に横たわっているといえます。