QOLを左右する水の話題 Part2

さて、今回の話題は「QOLを左右する水の話題 Part2」のお話です。

酷暑の夏がようやく終わり、ここにきて少し肌寒い日も増え、秋が感じられる季節となりました。
酷暑にちなんで、今回は、水の話題第二弾として、「地球沸騰化」がもたらす生活への影響、「水リスク」、その他について、大きく四つの話題を取り上げてみたいと思います。

では、まず最初の話題は、家計に及ぼす物価高の影響について、話しを始めたいと思います。
街中で買い物をすると、気候変動が一因といわれる大規模な干ばつや洪水の影響で、農産物や海産物、食料品などの価格が高騰するなど、異常気象による「水リスク」を身近に感じるようになりました。

エネルギー資源や原材料の多くを輸入に頼る日本は、海外の生産地にほとんどを依存しています。
ですから例えば、最近では世界的な干ばつの影響で、嗜好品のコーヒー豆やカカオ、オレンジなども収穫量が減り、それに伴って原材料が高くなり、製品価格が高騰しています。
自給率の高いお米ですら、昨年度の猛暑による収穫量の減少とインバウンドによる消費の増加によって、「令和の米騒動」と呼ばれる供給不足の状況になってしまう今日この頃です。
あたりまえのように、身近な生活必需品が月を追うごとに値上げされ、物価高に悩まされるようになりました。

おそらく、多くの方々が節約のため価格重視で商品を選別されたり、生活スタイルを工夫されている方がほとんどではないでしょうか。
将来のことを思うと、供給不足に陥らないように、自給率を上げる取り組みをもっと真剣に行っていかなければいけない、と考えてしまいます。

次の2つ目の話題は、健康リスクに関係する「水」の質、安全な飲料水の確保についての話です。
日本は、環境庁が選定した「名水百選」が至るところにあり、水資源の豊かな国でもあり大変恵まれた環境にあります。
そのような中でここ最近、水の質に関する気になるニュースがありました。

NHKのクローズアップ現代(2024.6.12)というテレビ番組で、昨年に続き放送されている、「追跡 “PFAS汚染“ 汚染源は? 健康リスクは?」というタイトルで、汚染の実態と対策を検証するという内容のものでした。
また、PFAS汚染については、日本経済新聞でも度々記事として取り上げられています。

初めて知りましたが、PFAS(ピーファス)とは有機フッ素化合物の総称のことで、自然界ではほとんど分解されず “永遠の化学物質“ と呼ばれており、昨年、一部の地域の河川や水道水から国の目標値を超える値が検出されたことが明らかになったというものです。
このPFASについては、発がん性などの有害性が指摘されている研究があり、政府も汚染の実態を確認するべく全国調査に乗り出しているということでした。

健康志向の高まりからでしょうか、日本のような恵まれた環境にいる方々でさえ、水道水だけではなく、よりきれいで安全な水を求めて、浄水器を取り付けたり、天然水やミネラルウォーター、ウォーターサーバーなど、衛生的で、より健康的な水を提供する商品やサービスが次々と登場し、普段使いとして利用されています。

そして3つ目の話題は、水資源についての話です。
SDGs(持続可能な開発目標)には、目標6の「安全な水とトイレを世界中に」という目標があります。
2030年までに、誰もが安全な水を安い値段で利用できるようにする、誰もがトイレを利用できるようにして、屋外で用を足す人がいなくなるようにすることを目標にしています。

地球に存在する水のうち、河川や湖沼など、私たちが利用しやすい淡水は、地球全体の2.53%といわれています。
そして、世界人口の約4分の1、約22億人が、水道の設備がない暮らしをしています。

「世界中の人々の生活を支えている水」、水資源の確保は持続可能な未来を実現するために欠かすことができない課題です。
壮大すぎて、考えも及ばない未来へ向けての挑戦ですが、宇宙での惑星探査においても「水の有無を調べること」は非常に重要な目的の一つで、特に重要視されているとのことです。
世界の人口は、国連世界人口推計2024年版では、2024年半ばまでに約82億人に達し、今世紀後半まで世界の人口は増え続け、2080年代半ばに103億人でピークを迎えると推計されています。

しかし、その大切な水資源が今、人口増加に対応して食料増産を進めた結果、世界各地で灌漑(かんがい)に使ってきた地下水が減少し、気候変動による渇水によって、水不足は一段と深刻になっています。

さらに最近では、生成AIブームを背景に、水を大量に必要とするデータセンターがあちらこちらに建設されることとなりました。
データセンターは冷却のために大量の「水」、そして多くの「電力」が必要です。
そのため、水の使用量は右肩上がりで増えています。
いずれに対しても、データセンターの省エネ化への取り組みを急がなくてはなりません。

ですから、皆さんを不安におとしめる意図はまったくありませんが、これらの「水リスク」にどう備えるかが、喫緊の世界的課題であることは間違いがありません。
考えすぎかも知れませんが、このままでは、水資源をめぐって侵略や紛争が起こらないか、心配になります。
おそらくは、このようなニュースや情報の影響で、これまで以上に水ビジネスや、水についての課題を解決できる最新技術を持っている企業への投資が一段と盛んになるかも知れませんね。
海水・かん水の脱塩処理や河川水・地下水の浄化処理、産業排水の再利用など、造水や水循環システムを社会実装することによって、水不足で苦しむ人の数を大きく減らすことができるかもしれないのです。

まとめとして、わたしたちが今しなければいけないことは、脱炭素化社会の実現と水使用量の削減の両方を同時に行う必要があるということです。
アメリカのパリ協定からの再離脱など、今後の世界の趨勢は気がかりですが、この11月に発表された、国連の「排出ギャップ報告書2024」では、各国は直ちに排出量を削減しなければならないと指摘しています。そして、気候危機は正念場を迎えていると警告が発せられました。

皆さんはどのように感じられていますか?
以上のような状況を学び、この酷暑や自然災害のむごさを見聞きして、改めてその必要性を考えさせられました。

では最後の話題になりますが、話の内容を180度変えて「水」から学ぶべきこと、をご紹介して終わりたいと思います。
文章が長くなり申し訳ありませんが、お付き合い願えれば幸いです。
水については、いにしえより日本人の心の拠り所となる格言などが数多く残されていますが、皆さんは、「水五訓」という言葉を聞かれたことはありますでしょうか。
水五訓とは、水のもつ性質を捉えた人生訓ですが、作者については、戦国時代の武将である黒田官兵衛(如水)が残したと言われたりすることもありますが、本当のところは分かっていないようです。
いわゆる名言の一つとして、わたしも現役の会社員時代には、創業社長から訓話として拝聴し、よく朝礼の中で唱和をした記憶があります。
良いお話しでしたので当時習ったことを簡単に紹介させていただきます。

【水五訓】
一つ、自から活動して他を動かしむるは水なり
率先垂範して事にあたりなさい。自らやって範を示し、積極的に行動してください。自ら活動せずして、前向きに積極的に推進できるはずはないのです。
二つ、常に己れの進路を求めて止まざるは水なり
その実践を通じて「自らの道を拓いて」いってください。自ら道を求め、熱意を持って努力してください。「自ら進路を求めた(熱意があった)」といえるかどうか、その方向を今一度再確認していただきたいのです。
三つ、障害に逢ひて激して勢力を倍加するは水なり
わたしたちの進む道では、しばしば、行手を遮ぎる大きな壁に直面します。
そんな時、「自分の力ではとても無理だ」などといってあきらめてしまっては、成長は望めません。
問題に直面した時に、人はその真価を問われ、それに真剣になって取り組み、克服する過程で能力の伸長もはかれるのです。
問題から逃げず、敢然として立ち向かってほしいものです。
四つ、自ら潔くして他の汚濁を洗ひ清濁合せ入るる量あるは水なり
わたしたちの人生の目的はかならずしもひとつではない。いろいろな目的をもっているわけです。ですから中には誤った考えや、けしからん考えの者もいるかもしれないのです。
そんな時、あんなけしからん考えのやつは追い出せ。といきまく前に、「長所をみつけてそれを生かせ」と常々いってますが、清濁合せてひとつにまとめ、目的に向かって集約していくことが重要です。
五つ、洋々として大洋を充たし発しては蒸気となり雲となり雨となり雪と変じ
霧と化し凝しては玲瓏たる鏡となり而も其性を失はざるは水なり

あらゆる変化に対処できるようにしてください。いかに事に対処するか、ということです。
水は温度の変化によって、また器の形によってつぎつぎと自らを変えていくのです。しかしその本性は、一切変化することがありません。
このように新しい変化に対処していく心構えをつねに持ち、生かしてください。

以上が「水五訓」です。いかがでしょうか。
水に学ぶべき教訓はいろいろあります。水と名のつくものには、畏敬の念を抱かずにはおられない自然由来のものや、水の神とも呼ばれる龍神伝説など、数えあげればきりがありません。
そして、清らかな清流や、幸豊かな海は、私たちの「いのちの水」であるばかりか、もっとも安らげる心の癒やしの場ともなります。
広く、大きな意味で「水」は、私たちのQOL(生活の質)を左右する、絶対的な要素ともいえます。

「水」は、わたしたちにとって当たり前にあるものですが、これからも多様な生物が生存できるように、よりよい地球環境が未来永劫続くことを願わずにはおられない今日この頃です。(ふ)