退職金と人生100年時代
さて、今回は退職金と人生100年時代という話題です。
ひと昔前までは、退職金で、住宅ローンを完済したり、子育ても終わって悠々自適に老後を過ごしたりといったことが可能だったかもしれません。
しかし、これから老後を迎える世代にとっては、どうやらそうもいかなそうなのです。
では、実態はどうなっているのでしょうか。
◆退職金はこの20年間で1000万円ダウン
厚生労働省の「就業条件総合調査」によると、退職金(大卒、就業20年以上)は1997年の2868万円をピークに、2002年2499万円、2007年2280万円、2012年1941万円、2017年1788万円と20年で1000万円以上減っている計算となっています。
退職金制度がある会社も全体の約4割で、しかもその割合は年々減って来ています。
◆退職金がゼロだとどうなる?
60歳から65歳は、ライフイベントや第2の人生の門出としての出費が多い時期です。
でも退職金がゼロになったら、上記のようなイベントはもちろんすべて中止となります。
それどころか、夫だけでなく、妻も何らかの形で夫が定年退職した後に働き続ける必要が出て来ます。
「50代で子どもたちに教育費がかかり、それまでの貯蓄が切り崩されても、退職金があるからなんとかリカバリーできる」というのが、今までの日本人の一般的なライフプランでした。
しかし、退職金がなくなると、多くの会社員が老後破たんを迎えてしまうのは間違いないのです。
◆退職金クライシスを回避するには
さて、では破綻を回避するにはどうしたらいいのでしょうか。
まず、定年を迎える前から老後のお金まわりについての準備をすること。
子育てが終わったからと気を緩めて贅沢をしてしまわずに、収入が多いうちに日々の生活費をダウンサイジングしましょう。
「なんとかなるだろう」と問題を先送りにせず、コツコツ貯金を増やしておくことも大切なことです。
また、公的年金を受給できる原則65歳になるまでは、雇用継続や転職などで年300万円程度のフルタイム勤務を続けるのは今や常識となっています。
65歳以降も70歳までは、月10万円程度の収入があれば、公的年金をもらいながらも貯蓄を切り崩さず、生活していくことができるでしょう。
子どもなどが独立した50代後半は人生最後の貯め時なので、運用を怠らず、「つみたてNISA」や「iDeCo」といった非課税制度を利用して、手持ち資金の運用や余剰資金の積み立て投資をしていくことも大切なことだと言えますね。
◆人生100年時代の設計
ここまでは退職金にまつわる話をしてきましたが、これは取りも直さず人生100年時代の設計図の一部として考えていただければと意図してお伝えさせていただいた次第です。
さてここからは、「人生100年時代」を幸せに生きる方法としてのお話しを差し上げたいと思います。
これからお話しすることが、あなたのwell-beingを叶えるための気づきになれば幸いです。
◆「人生100年時代」を幸せな時代にするには
人生が100年になると、60歳から65歳で仕事をリタイアして、そのあとは前述した退職金や年金によって悠々自適に過ごすという人生設計では、老後が長くなりすぎます。
「人生100年時代」という言葉が生まれるきっかけとなった「ライフシフト」の共著者リンダ・グラットン氏は、多くの人が100歳以上長生きするようになれば、人は75歳から85歳まで働かなくてはならなくなると予想しています。
このように聞くと「一生働き詰めの人生なんて嫌だ」と思う人もいるかもしれません。
確かにその通りで、せっかく長生きしてもそれがつらいものになってしまっては意味がありません。
そのため私たちは、これまでの学び方、働き方、人生設計などを見直すことが必要となります。
来たるべき「人生100年時代」を長生きすることが幸せな時代にするためには、個人の意識だけではなく社会システムも含めた大きな改革・改善が必要になると言えます。
◆人生100年時代を生きるための働き方とは
超長寿社会に向けて、世界中の人事の専門家の間で共通に理解されていることは、「長く生きるためには、長く働かなければならない」ということです。
人生100年時代を生きるための「働く」とは、もちろん生活のためでもありますが、それ以上に長い人生をより豊かに生きていくためでもあります。
そうした視点で「働く」ということを考えた時に、「苦手なこと」「不得意なこと」では、効率的に成果を上げて、新しい価値を生み出すことは難しいのではないでしょうか。
長く働くために大切なことは、時間を忘れて熱中できること、いつまでも飽きずに取り組めることを見つけることです。
自分が大切にしたい価値観に結びついている「働き方」を見つけることが必要です。
ここで考えるべきは「働く」ということの多様性です。
サラリーマンのように決まった時間に毎日会社に通勤するといった固定的な考え方ではなく、もっと柔軟で幅広い「社会参加」の形としての「働く」の再定義が必要です。
時間や場所、雇用形態にとらわれず、個人事業へのチャレンジ、NPOなどの非営利活動やボランティアなど、幅広い新しい働き方で、社会参加を続けていくことが大切になってくるのです。
そうした時代の流れを認識し、自分なりの働き方を考えていく時に大切にすべきなことは、「好きなこと」「得意なこと」「人の役に立つこと」の三つです。
「働く」ことが広い意味での社会参加の一環であることを考えれば、その目的は何らかの形で「人の役に立つこと」でしょう。
人は人の役に立つことをしている時に、最も幸福感、well-beingを得られるともいわれます。
自分の好きなことや得意なことで働き、人の役に立てる。
そんな働き方を意識して、超長寿社会をポジティブに生きていきましょう。
◆「人生100年時代」は既に始まっています
厚生労働省は、2019年時点で全国の100歳以上の人口は71,238人と発表しています。
これは49年連続で過去最高を更新しており、100歳以上の人口は年々増加しているのです。
誰も自分がいつまで生きるのかわかりません。
しかし、この数字を見ている限り、誰が100歳以上生きても、さほど驚くことではなくなっています。
つまり「人生100年時代」は既に始まっているといっても過言ではないのです。
長い人生をより幸せに生き抜くために、新しい生き方を考え、それに伴った新しい働き方を模索する。
私たちは、いずれ訪れる変化に備え、そろそろ本格的な準備を始めなければならないところへ来ているのかもしれませんね。