見えない世界で見つけた新たな使命
こんにちは。盲目のセラピスト亀ちゃんです。
今回は「カウンセリングとの出会い」についてお話しします。
医師から「将来は目が見えなくなるかもしれません」と告げられた私は、この先どうやって生きていけば良いのだろう…と悩んでいました。これまでのコンピュータの仕事は、もうできないだろうな…など、いろいろ考えていました。
そんなある時、妻が新聞広告の「カウンセラー養成講座」の記事を教えてくれました。
私は瞬時に「これだっ!」と飛びつきました。
私は会社の仕事があったので、夜間コースを選びました。週1回の夜の講座が数年続き、最後には「インターン実習」というカリキュラムがありました。毎週決められた時間に実習ルームに入り、50分の面接を録音させてもらいます。休みの日には朝から夕方までかけて、その面接内容を一字一句文章に起こし、面接記録のレポートを作り、先生にファックスで送ります。予約を取った日時に先生に電話をかけて、50分の指導をしてもらいます。
一番最初の時は、ファックスがうまく送れないなどの事情で何度か送り直しをしたり、おまけにページを振っていなかったので、先方ではぐちゃぐちゃになっていたようです。
それもあり、内容も悪くて最初から「大目玉」で叱られました。
2回目の面接では細心の注意を払ってレポートを作成し、ファックスも完璧に送りました。
そして2回目の指導の時、一番最初に聞こえてきた先生の言葉が「あなた、何やってんのっ!」という、前回以上の「大目玉」でした。それは私の面接内容を全否定する、厳しい言葉の数々でした。電話を切ってから「あの5時間も、6時間も掛けて作ったレポートは何だ
ったんだろう?」と、叱られるための材料を作ったような…と、とても情けない気持ちになりました。段々指導を受けるのが怖くなり、電話はいつも家族がいない寝室でかけていました。終わってからもしばらく一人で気持ちを整える時間が必要でした。
そんな厳しい指導が続いていた頃、同室の先輩(カウンセリングルームには常に二人がいて、面接の間は一人は隣の部屋で聞かせてもらうシステムでした)と話す機会がありました。先輩も私も同じ先生の指導を受けていたので、私が「私は毎回先生から叱られるばかりです」と伝えると、その先輩が「えっ? 私には “あなた何やってるのよ。同室の西亀さんを見習いなさい” と言われているんですよ」と。この言葉には本当に耳を疑いました。
そんな厳しい先生でしたが、1年くらい経った時「あなた、うまいわねぇ」と言ってもらえた時は、思わず涙が出ました。
カウンセリングの勉強中の私が、ある時職場で男性の話を聴かせてもらう機会がありました。その男性が「西亀さん、カウンセリングってすごいですね。西亀さんはカウンセラーに向いていますよ。西亀さんがこの先、一人でも、たった一人でも(命を)助けることができたら、それだけでこの仕事をした意義がありますね」と言ってくれました。
当時の私には何よりもありがたく、救いの言葉でした。
卒業後、会社が用意してくれたカウンセリングルームで定年まで働き、現在はフリーランスとして活動しています。当時、「これからどう生きていけばいいのだろう」と悩んでいた頃を振り返ると、たとえ目が見えなくても、やりがいと生きがいを持って社会の誰かの役に立てる仕事があることに、心から感謝せずにはいられません。
「勤労感謝の日」というのは、単に仕事に感謝するだけの日ではなく、「働けること自体に感謝する日」なのだと気づかされました。
カウンセリングについて厳しく指導してくださった先生、仕事の場を提供してくれた会社や上司の方々、そしてクライアントの皆さま。さらに、このカウンセラーとしての「幸せの入り口」を示してくれた妻にも、深い感謝の気持ちを捧げたいと思います。
人生は時に困難を伴いますが、支え合い、与えられた役割を果たしていく中で、新たな道が開けていくものだと実感しています。
この経験が、誰かの希望や励みとなれば幸いです。 にこっ! 亀ちゃん