自分なりに備える高齢化
さて、今回は、内閣府から令和7年8月に公表された令和7年版「高齢社会白書」の話題です。
高齢社会白書は、高齢社会対策基本法に基づき、平成8年から毎年政府が国会に提出している年次報告書で、高齢化の状況や政府が講じた高齢社会対策の実施の状況、また、高齢化の状況を考慮して講じようとする施策について明らかにしているものです。
では早速ですが、高齢化の状況及び高齢期の暮らしの動向に関する報告内容を紹介しましょう。
先ず、現状把握として高齢化率はどうなっているかをみていきましょう。
・我が国の総人口は、令和6年10月1日現在、1億2380万人です。
・65歳以上人口は、3624万人で、総人口に占める65歳以上人口の割合(高齢化率)は29.3%です。
・「65~74歳人口」は1547万人で、総人口に占める割合は12.5%です。
「75歳以上人口」は2078万人で、総人口に占める割合は16.8%です。
この数字は、65~74歳人口を上回っています。
・45年後の令和52(2070)年には、2.6人に1人が65歳以上、約4人に1人が75歳以上の推計となっています。
次に、私たちがよく口にする高齢者の定義を見てみましょう。
高齢者の用語は文脈や制度ごとに対象が異なり、一律の定義がありません。
「高齢社会対策大綱」(令和6年9月13日閣議決定)では、便宜上、 一般通念上の「高齢者」を広く指す語として用いています。
この白書においても、各種の統計や制度の定義に従う場合のほかは、一般通念上の「高齢者」を広く指す語として用いることとしています。
なお、高齢者の定義と区分に関しては、日本老年学会・日本老年医学会の「高齢者に関する定義検討ワーキンググループ報告書」(平成29年3月)において、75歳以上を高齢者の新たな定義とすることが提案されています。
また、「高齢社会対策大綱」においても、「我が国の平均寿命は世界で最も高い水準となり、高齢者の体力的な若返りも指摘されています。
また、65歳以上の就業者等は増加し続けており、その意欲も高い状況にあります。このような状況を踏まえれば、65歳以上を一律に捉えることは現実的ではない。」とされているところです。
それでは、いくつかの高齢者に関しての状況を見ていきましょう。
【健康寿命】
健康上の問題で日常生活に制限のない期間(健康寿命)は、令和4年時点で男性が72.57年、女性が75.45年となっており、令和元年までは延伸していましたが、令和元年と4年を比較するとほぼ横ばい状態となっています。
【就業】
65歳以上の就業者数は21年連続で前年を上回っています。
また、就業率では平成26年と比較して65~69歳で13.5ポイント、70~74歳で11.1ポイント、75歳以上で3.9ポイントそれぞれ伸びています。
【一人暮らし】
・65歳以上の一人暮らしの者は男女ともに増加。
・昭和55年には65歳以上の男女それぞれの人口に占める一人暮らしの者の割合は男性4.3%、女性11.2%でしたが、40年後の令和2年にはそれぞれ男性15.0%、女性22.1%となり、令和32年には男性26.1%、女性29.3%になると見込まれています。
では続いて、高齢者の経済生活をめぐる動向については果たして白書ではどうなっているかを見ていきましょう。
我が国の平均寿命は世界で最も高い水準にあって、長い人生をより豊かに過ごすことができる社会を実現していくことが重要課題です。
高齢期に差し掛かると、多くの人が仕事や収入、心身の機能、人間関係等、様々な面で変化を経験することになります。
また、我が国全体をみても、近年の国内外の経済・社会情勢は大きな変動の渦中にあると言えるでしょう。
そのような中、特に経済的な観点から高齢期も安定して豊かに暮らすことができる社会の実現に資するために、内閣府が令和6年度に実施した「高齢社会対策総合調査(高齢者の経済生活に関する調査)」を基にして、高齢者の経済生活に関する状況や意識について分析が行われました。
ここからは、令和6年度高齢社会対策総合調査(高齢者の経済生活に関する調査)調査の概要を個別にみてみましょう。
〇調査地域 :全国
〇調査対象者:60歳以上(令和6年10月1日現在)の男女
〇調査時期 :令和6年10月1日~11月8日
〇有効回答数:2,188
具体的な調査結果は次のようになっています。
〇収入を伴う仕事をしている割合は増加していて、「現在、定期的に収入を伴う仕事をしている」又は「現在、不定期ではあるが、収入を伴う仕事をしている」と回答した割合(仕事をしている割合)は4割を超えており、前回調査(令和元年)時と比較して上昇しています。
なお、65歳以上について見てみると、定期・不定期合わせて「仕事をしている」と回答した割合は35.6%となっています。
〇仕事をする理由は「収入のため」が最も多くなっています。
全体で見ると、「収入のため」と回答した割合が5割以上で最も高く、次いで、「働くのは体によいから、 老化を防ぐから」、「自分の知識・能力を生かせるから」と回答した割合が高くなっています。
なお、65歳以上について見ると、「収入のため」と回答した割合が最も高いものの、「働くのは体によいから、老化を防ぐから」と回答した割合が3割弱となり、全体と比較して高くなっていることが目を引きます。
〇高齢期における就業意欲は高まっているかを見てみると、「65歳くらいまで」と回答した割合が約2割で最も高い一方、「働けるうちはいつまでも」と回答した割合も2割を超えており、「75歳くらいまで」、「80歳くらいまで」又は「働けるうちはいつまでも」 と回答した割合を合計すると4割を超えます。
前回調査時と比較すると、「75歳くらいまで」、「80歳くらいまで」又は「働けるうちはいつまでも」と回答した割合は上昇していて、高齢期における就業意欲の高まりがみられる状況です。
〇就業に対するニーズは個々人の属性に応じて多様化していて、仕事をする理由としては、前述のとおり収入を挙げる人が最も多い一方で、実際に仕事を選ぶ際には、給与等が希望に適っていることよりも、自分の経験やスキルを生かせること、自宅から通いやすいこと、仕事のやりがいがあることを重視する傾向がみられました。
また、おおむね年代が低い層ほど経験やスキルが生かせることを重視し、年代が高い層ほど仕事内容について体力的な負担が少ないことを重視するなど、個々人の属性に応じて就業に対するニーズは多様化の傾向が強いと言えます。
〇仕事をしたいと考えているが就業に至っていない人の理由は様々です。
現在、収入を伴う仕事をしていない人のうち、今後仕事をしたいと考えている人について、仕事をしていない理由を見てみると、「健康上の理由」に次いで、「年齢制限で働くところが見つからないから」、「仕事の種類(職種)で合うところが見つからないから」、「勤務場所・時間など条件が合うところが見つからないから」と回答した割合が高くなっています。
こうした傾向を踏まえると、高齢期においても希望に応じて働き続けられる環境の整備や、高齢期の就業ニーズを踏まえたきめの細かなマッチングの推進を図っていくことが重要であると言えます。
〇家計に対する不安は、高齢女性(75歳以上)において高い結果が出ました。
全体で見ると、「家計にゆとりがあり、まったく心配なく暮らしている」又は「家計にあまりゆとりはないが、 それほど心配なく暮らしている」と回答した割合(心配なく暮らしていると回答した割合)は前回調査時と比較、一方、75歳以上の女性は、同年代の男性と比べて心配であると回答した割合が高く、高齢女性が抱える経済的不安への対応も求められています。
また、家族形態別で見ると、ひとり暮らしの人は、心配であると回答した割合がひとり暮らし以外の人を大きく上回っています。
〇具体的な不安として特に物価上昇を挙げる人が多い 経済的な面の不安について見てみると、「物価が上昇すること」と回答した割合が7割以上で最も高く、次いで、「収入や貯蓄が少ないこと」、「自力で生活できなくなり、転居や有料老人ホームへの入居費用がかかること」、「災害により被害を受けること」、「自分や家族の医療・介護の費用がかかりすぎるこ
と」が高くなっています。
こうした傾向を踏まえると、高齢期における就業促進による安定的な収入確保のほか、若年期からの資産形成の促進や介護予防の推進を図っていくことが重要であると言えます。
〇高齢期のリスクに応じた備えは全体的に進展してきています。
全体で見ると、「生命保険」と回答した割合が最も高く、次いで、「病気やけがのための保険」が高くなっています。
また、前回調査時と比較すると、「生命保険」、「病気やけがのための保険」、「個人年金」、「介護のための保険」、「企業年金」と回答した割合はいずれも上昇し、「いずれも加入していない」と回答した割合は大きく低下しており、収入面や健康面等、高齢期のリスクに応じた備えは全体的に進展しています。
〇ほとんどの人は認知機能の低下等に備えた財産管理の必要性の認識が薄いことが指摘されています。
老後のために必要だと思う備えを全体的に見ると、「健康に関する備え(健康の維持・増進、介護予防、保険、病気やけがの治療等)」と回答した割合が最も高くなっています。
次いで、約4割の人が「終活関係の準備(自身の葬儀やお墓の準備、財産等の整理・相続の準備)」を挙げている一方、そのうち約3割が実際に準備を行っておらず、こうした準備の必要性を感じつつも、実際には取り組むことができていない層が一定程度存在していることが明らかになりました。
また、「財産管理に関する備え(認知機能の低下等に伴う、財産管理の相談(金銭管理サービスの利用等))」 が必要と回答した割合は1割以下となっています。
加齢に伴う認知機能が低下すると、自身がそういった状態にあること自体を認識できなくなる可能性もあり、特に、頼れる家族や親族等がいない場合には、日常的な金融経済活動や意思決定等の場面で支障が生じるおそれがあることから、認知機能の低下等に伴う財産管理の備えの必要性についての認識を高めていくことや、地域において必要に応じて金銭管理や意思決定支援等の日常生活支援を受けられる体制を構築していくことが大変重要なことです。
私たちが高齢者となった際に経験するであろう健康寿命の延伸や、老後を経済的に支えたり心の拠り所とする就業問題、また一人暮らしとなる可能性などは、自らが動くことで解決しなければならない課題と言えます。
放っておいても国や自治体の行政や地域社会の誰かが、はたまた家族や親戚が必ず良い方向に解決してくれるものではないことを肝に銘じることが肝要です。
自分の老後は自分が持っているいくつかの選択肢を組み合わせて構築し、自分なりに納得する形でなければQOLの向上には結びつきませんし、勿論心身ともに満たされ、良好な状態が持続しているwell-beingを叶えることは出来ません。
読者の皆さんには高齢化白書を見て理解することで、日本の高齢者の現在の立ち位置を確認して、自分のQOLの向上やwell-beingを叶える方策の一助としていただければ幸いです(ま)


