自分で選んだ道と覚悟
こんにちは。ウクレレ講演家・盲目のセラピスト、亀ちゃんです。
今回は「覚悟」の話です。
私が勤務していた会社には、従業員の福利厚生の一環として「ヘルスキーパー(産業マッサージ)」のシステムがあり、毎年盲学校から職場見学で学生さんが来ていました。
たまたまその学生さんの話を聞く機会があり、その女性が「もっと早くに、こういった機会があれば、障害者になった時、あんなに悩まなくてよかったのに…」と残念そうに話してくれました。
私は中途失明を体験した人間として「私に何かできることはありますか?」と尋ねたら、「ありますよ」と答えてくれました。それで、ボランティアで盲学校に行かせてもらうようになりました。
ある日、盲学校の先生が「西亀さん、いつもありがとうございます。お礼に“あんま”をしてあげましょう」と、私に“あんま”をしてくれました。初めての体験でしたが、それはそれは気持ちの良いものでした。
私は、カウンセリングは心をほぐすもの、マッサージや按摩は体をほぐすものと考えていました。でも、その時の気持ちは「“あんま”は心と体の両方をほぐしてくれるものだ」と実感しました。
それで、ぜひ私のカウンセリングにこの“あんま”を取り入れたいと考え、会社に相談し、無理をお願いして盲学校に通わせてもらうことになりました。
盲学校での勉強はとても大変でした。毎日の勉強だけでは足りなくて、休みの日もほとんどの時間を勉強に使わなければなりません。ちょうど3か月くらい経ったある日、先輩が「西亀さんは会社と両立で、学校の中でも一番キツイのでは?」とねぎらいの声をかけ
てくれました。
私は、その優しい言葉に反応して「はい、想像の10倍も20倍も大変ですねぇ」と答えました。すると、その先輩が「まあ、自分で選んだ道だからな」と一言。私は、頭を後ろからハンマーで「ガツン」と殴られた気がしました。
考えてみれば、誰が盲学校に行けと言った?誰も言っていません。私が無理を言って「行かせてください」とお願いをしたのでした。不満を言ったら罰が当たると反省し、「もう二度と泣き言は言うまい」と決心しました。
先ほどの先輩が卒業する時に、お礼とお別れを言いに行きました。
すると、その先輩が「学校を卒業したら、お互い目が見えないので町ですれ違っても声をかけられない。お互い、元気にやろうや」と盲人としての「一期一会」を教えてくれました。
それから半年ほどしたある日、私は盲学校の寄宿舎に入っていたのですが、その寄宿舎の電話にたまたまその先輩から電話があり、私も話す機会をもらいました。
それで私が「私の携帯電話の番号をお伝えしますから、今度は携帯にお電話をくださいよ」と言うと、先輩がすぐに「いいよ、番号を言って」と返事がありました。
私が「えっ?メモの準備とか大丈夫ですか?」と尋ねたら「メモなんかなくても覚えるやん」と返ってきました。
私の中には、電話番号をメモを取らずに覚えるという考えがなかったので、とても驚きました。今では私も「覚えるやん」と思うようになりました。
自分で選んだ道だからこその覚悟、町中ですれ違ってもわからないからこその「一期一会」の覚悟、メモに頼らずに覚えてしまう覚悟。いろいろな覚悟を教わりました。
強い覚悟と決意が未来を切り開き、心を鍛え、豊かな人生を築く鍵だと学びました。 にこっ! 幸せの入口屋 亀ちゃん