育休を取ろう!
さて、今回は男性の育児休業に関する話題です。
厚生労働省は、7月31日に「イクメンプロジェクト」による「令和5年度男性の育児休業等取得率の公表状況調査」(速報値)の結果を公表しました。
これは、2023年4月に施行された改正育児・介護休業法により、男性の育児休業取得促進のため、常時雇用する労働者が1,000人を超える事業主は、育児休業等取得の状況を1年に1回公表することが義務付けられたことによるものです。
厚労省は去年10月、従業員が5人以上の事業所を対象に育休の取得状況などについて調査を行い、およそ3500の事業所から回答を得ました。
その結果、2021年10月からの1年間に妻が出産をした男性の育休の取得率は30.1%で前の年よりおよそ13ポイント増え、1996年度の調査開始以来、過去最高となったことが分かりました。
また、男性の育休取得期間は前回調査と比べ2週間以上取得する人が増え、「1か月から3か月未満」の選択肢が28%と最も多くなっています。
厚労省は男性の育休の取得率が伸びた理由について、「おととし4月から育休制度の周知や取得の意向を確認することなどが企業の義務となった影響が考えられます」とした上で、まだ政府の目標とは開きがあるとして、「男女とも仕事と子育てが両立できるように環境整備を進めたい」としています。
また、高校生や大学生などおよそ3000人の男子学生を対象とした調査では、8割以上の男子学生が「育休を取得したい」と回答していて、そのうち3割ほどが育休期間を半年以上取得することを希望しています。
これらをうけて、2023年7月31日に、厚生労働省「イクメンプロジェクト」による「令和5年度男性の育児休業等取得率の公表状況調査」(速報値)の結果が公表されました。
育休等取得率の公表状況は、次のようになっています。
6月末までに公表が必要となる企業(3月末決算の企業)のうち、調査時点ですでに男性の 育休等取得率を公表している企業の割合は58.3%(1,066社中621社)でした。
そして調査時点で未公表の企業445社のうち、304社が6月中に公表予定との回答であったことから、合わせて86.8%(1,066社中925社)の企業で6月中の公表が完了予定であることが分かりました。
回答した企業における男性の育休等取得率は46.2%で、男性の育休等平均取得日数は46.5日となっています。
また、男性の育休等取得率と平均取得日数には、男性の育休等取得率が高いほど、平均取得日数が短くなる傾向が見られるといった、弱い負の相関が確認できました。
一方、「取得率を公表した効果・変化」では、「社内の男性育休取得率の増加(33.1%)」「男性の育休取得に対する職場内の雰囲気のポジティブな変化(31.5%)」「新卒・中途採用応募人材の増加(8.3%)」 の順で回答が多く、男性育休取得率を公表することが育休取得の促進だけでなく、人材獲得の面でも効果を感じている企業が多いことがわかりました。
男性の育児休業取得率向上の取り組みによる効果として挙げられたものでは、「職場風土の改善」「従業員満足度・ワークエンゲージメントの向上」「コミュニケーションの活性化」の順で回答が多かったことから、男性の育休取得率向上に向けた取り組みが、育休の取得を希望している当事者だけではなく、他の従業員のワークエンゲージメントや人材確保といった企業全体へも好影響を及ぼしている可能性があることを物語っているようです。
育休等取得率向上に資する取り組み内容としては、育児・介護休業法では育児休業を取得しやすい職場の環境整備を企業に義務づけており、その取り組み状況を育休取得率別に見ると、男性の育休等取得率の高い(80%以上)企業群では、取得率が低い(20%未満)企業群と比べて、「自社の労働者の育児休業・産後パパ育休取得事例の収集・提供」や「育児休業・ 産後パパ育休に関する研修の実施」の取り組み割合が高い傾向が見られました。
また、男性の育休等取得率の高い企業群では、すべての取り組みの実施率が総じて高くなっていました。
このことから、本調査結果から因果関係ははっきりとは言えないものの、これらの取り組みが、男性育休等取得率向上に寄与している可能性 があることが伺えます。
次に2022年4月から義務づけられている「育児休業に関する個別の周知・意向確認」の実施者を育休等取得率別に見てみると、男性育休等取得率の高い(80%以上)企業群では、取得率が低い(20%未満)企業群と比べて、個別の周知・意向確認を「直属の上司」が行っている割合がやや高くなっていました。
また、男性育休等取得率が20%未満の企業群では、「人事部門の担当者」が行っている割合が他の企業群よりやや高くなっていました。
このことから、本調査結果から因果関係は言えないものの、個別周知・意向確認は、直属の上司が行うことがより効果的な結果をもたらす可能性があると言えるでしょう。
個別の周知・意向確認の方法を育休等取得率別に見ると、男性育休等取得率の高い(80%以上)企業群では「電子メール」や「対面またはオンラインによる面談」を行っている割合が相対的に高くなっていて、男性育休等取得率が低い(20%未満)企業群では相対的に低くなっていました。
また、男性育休等取得率の高い企業群では「書面交付」を行っている割合が相対的に低くなっていました。
このことから、本調査結果から因果関係は言えませんが、個別周知・意向確認は、書面交付よりも、電子メールや対面・オンラインでの面談により行うことがより効果的な可能性があるのではないでしょうか。
では、簡単に調査結果のおさらいをしておきましょう。
- 男性の育休等取得率の公表により、社内の男性育休取得率の増加、男性育休に対する社内の雰囲気のポジティブな変化、新卒・中途採用応募人材の増加にもつながります
- 男性の育休取得率向上のための取り組みが、職場風土の改善や従業員満足度・ワークエンゲージメントの向上、コミュニケーションの活性化など職場全体へも好影響を与えるといえます
- 社内の育休取得事例の収集・提供や社内研修の実施が、男性の育休等取得率向上に効果的といえます
- 「個別の周知・意向確認」は、直属の上司が行うことが効果的です
- 「個別の周知・意向確認」は、電子メールや対面またはオンラインでの面談により実施することが効果的です
厚労省のHPには、「イクメンプロジェクト」では、今後も男性育休取得の更なる促進を図っていきますという、力強いメッセージも添えられていました。
政府では、予てより男性の育休取得率を2025年までに50%、2030年までに85%に引き上げることを目標として掲げています。
この目標が着実に向上していくことで、子どもの年齢に応じた柔軟な働き方を実現するための措置が益々充実していくことに期待がもてるでしょう。
何よりこの制度を利用する男性だけでなく、職場の全ての従業員が制度の目的を共有し、このことで個々人のQOLが向上すれば、副産物として大変大きな成果が得られるのではないかと期待します。
また、もちろんですが、家庭内において保育される側の子ども達や力を合わせて子育てを行うパートナーのQOLが向上することは言うまでもないことでしょう!(ま)