肉食のススメ
さて、今回は肉食の必要性について考えてみたいと思います。
どうやら人は高齢になると、肉を避け、魚や野菜中心のあっさりしたものを好む傾向があるように思います。
ただ、このライフスタイルは果たして正しいものなのか、最近の研究結果や専門家の意見を踏まえて深掘りしてみたいと思います。
高齢者の考えとして良く聞く話に「肉はコレステロールが高いのに対し、魚は逆に低く中性脂肪を下げる」との思いがあるからでしょうか。
しかし、実は肉を控えたほうがよいのは太りやすい40代、50代の話です。
反対に「食が細くなって栄養不良に陥りやすい高齢者は、動物性たんぱく質をできるだけ摂ったほうがよい」と肉食を勧める専門家も少なくありません。
肉には転倒による骨折や貧血を防ぎ、老化を遅らせる働きがあります。
肉と魚は、それぞれの長所を補いながら、1対1の割合で1日おきに、交互に食べるのが理想的な食べ方と言われています。
冒頭に言いましたが、人間年をとると若い頃のように肉や脂っこいものをあまり食べなくなる傾向にあります。
かくいう私ももう高齢者の域に入っていますので、どちらかといえば低カロリー、低脂肪で塩分控えめのあっさりした粗食を好む傾向があるように思います。
やはり、肉はコレステロールが高く、健康によくないと思われているからでしょうか。
でも粗食ばかりで肉を食べないでいると、逆に栄養が不足しがちになってしまい、かえって老化を早めてしまうことにならないか心配になります。
一般的に世間では「年をとったら粗食がいい」と思っている人は、意外と多いかも知れませんね。
でも、それは誤解かも知れません。
ここからは、well-beingにつながる、健康な人生を送るための食事の在り方について見て行きたいと思います。
確かに高齢になると、若い頃に比べて活動量・運動量が減り、その分エネルギー消費量も落ちてきます。
しかも、臭覚や消化力も衰えて食欲が低下しますから、必要なだけの栄養さえ摂れなくなる恐れも出てきます。
果たして個人がどういった栄養状態なのか、良いのか悪いのかを判断するためには、その人の血液中のアルブミン濃度を測れば確認できます。
アルブミンは、肝臓でつくられる体内で最も豊富に存在するタンパク質の一つです。
このアルブミンは、水分バランスの調整、栄養素の運搬、毒素や薬物の中和、血液のpH(酸性度)調整を主な役割としています。
私たちにとっては、健康を保つだけでなく、若々しさや長寿にもつながる大切な成分と言えます。
アルブミンの測定は、栄養状態を判断するだけでなく、老化の進行状況をチェックするうえでも欠かせません。
たとえば自分で衣服が着れる、自分で食事が摂れる、トイレにも一人で行けるなど、自分の身の回りのことができる人は、アルブミンの量が十分足りている証拠になります。
一方、アルブミンの量が不足している人は、たんぱく質の摂取量が少ないことを物語っている訳ですから、この状態が続いて栄養が足りなくなると老化が進んでしまいます。
ですから、老化をできるだけ遅らせるためには、良質な肉を日常生活の中で適量摂ることがとても大切なことになります。
肉から得られる良質なたんぱく質は、免疫力をつけるのにも役立ちます。
肉を食べずに、血中コレステロール値が低くなり過ぎれば、血管が弱くな
り、血管が切れて体内で出血を起こしてしまう脳卒中などの病気が起きやすくなります。
低栄養状態に陥らないためにも、肉はしっかり食べるようにしましょう。
しっかりと食べなければいけない肉と一概に言っても、牛肉、豚肉、鶏肉など種類がたくさんあります。
特に牛肉や豚肉では、「肩ロースがおいしい」「ヒレ肉がいい」など、人によっては部位ごとに好みも異なるようです。
それでは、高齢者が老化を防ぐためには、どんな肉を、どのように食べればよいのかを具体的に見て行きましょう。
何といってもお勧めは、豚のヒレ肉でしょう。
豚肉には、食ベ物の中でもトップクラスのビタミンB1が含まれ、牛肉と比べてもその量は、約10倍あるともいわれています。
豚肉を100g~150g食べるだけで、1日のビタミンB1の必要量が確保できるほどです。
豚のヒレ肉は、同じ豚のバラ肉と比べても、ビタミンB1の量は約2倍。
しかも、脂肪やカロリーも少ないため、肥満や生活習慣病などの予防にもよいとされています。
ビタミンB1には、ご飯やパンなどに含まれている糖質をエネルギーに変える働きもあるので疲労回復にはもってこいの食材と言えます。
豚肉料理といえば、すぐに頭に浮かんでくるのが沖縄です。
沖縄の食文化を考える時、豚肉料理抜きには考えられません。
「豚に始まり、豚に終わる」といわれるぐらい庶民の間に浸透し、その消費量は全国平均の約1.4倍もあります。
それでいて高齢者の生活習慣病は少なく、つい最近までは沖縄県は長寿県といわれてきました。
豚肉を茹でこぼして食べる沖縄独特の調理方法や、いろんな食材と組み合わせたバランスのよい食生活が沖縄の長寿の一因だったのでしょうね。
茹でこぼして食べるのは、実に理にかなった調理法だと思います。
また、蒸したり、網焼きにするのも、余分な脂がカットできる点でお勧めできます。
しかし、豚のヒレ肉にも、ビタミンB1が汗や尿からすぐに排出されやすいという欠点があります。
ビタミンB1の体内への吸収率を高めるためには、タマネギやニラなどに含まれる「アリシン」というイオウ化合物と一緒に摂るのがよいでしょう。
ただ、豚肉や牛肉に含まれる動物性脂肪は、中性脂肪やコレステロールを増やす「飽和脂肪酸(肉の脂身や乳製品などの動物性脂肪やココナッツオイルに多く含まれている成分)」が多く、その摂り過ぎは、肥満や動脈硬化の一因にもなりかねませんので要注意です。
その点、脂肪が少なく、肥満を防ぐのによいのが鶏肉です。
特に胸の部分には、「カルシノン」という栄養成分が含まれ、これが筋肉の疲労物質である乳酸を中和してくれるため、疲労が抑えられ、元気でいられることができるのです。
このようなことから、肉は一種類に偏ることなく、いろんな種類をバランス良く食べて、それらの肉が含んでいる体にとって良いものを摂取していくことが大切だと言うことですね。
適量の肉は、加齢による筋肉の低下に伴う転倒やビタミンの欠乏による貧血を防ぎます。
でも、同じ動物性たんぱく質でも年齢を重ねるにつれ、「肉より魚のほうがいい」という人も結構います。
実際、70歳以上になると、魚と肉の摂取比率は約2対1といわれ、高齢になるほど魚介類を食べる人が増えているようです。
最近になって魚に含まれるDHA(ドコサヘキサエン酸)やEPA(エイコサペンタエン酸)などの栄養素が注目されるあまり、「魚がよくて肉はダメ」と思っている人が意外と多いようです。
確かにDHAやEPAには動脈硬化を防ぎ、老化を遅らせる働きがあるため、「魚は健康によい」と思っても無理はありません。
実際、魚をよく食べる人に認知症の人が少ないことも最近の研究でわかってきています。
でも、ここで見逃してほしくないのが、たんぱく質の量です。
魚といえども、その量においては、肉にはかないませんから、やはり魚と肉とのバランスが大切となって来ますね。
魚にもタイやヒラメなどの白身魚、イワシやサバなどの青魚、カツオやマグロなどの赤身魚などがあります。
このように色々な種類の魚がありますが、何といっても鮭が一番です。
野菜の王様がブロッコリーなら、魚の王様は文句なしに鮭でしょう。
鮭には強力な抗酸化作用があるだけでなく、ビタミンA、B2、Dなどのビタミン類のほか、コレステロール値を下げるDHAやEPAも豊富に含まれており、生活習慣病を防ぐにはピッタリの魚といってもよいでしょう。
鮭の赤い身の色素成分は「アスタキサンチン(高い抗酸化作用を持つ天然色素)」で、「海のカロテノイド(黄、橙、赤色などの天然色素の一群)」 とも呼ばれています。
抗酸化力の強さではビタミンEがその代表格ですが、鮭の持つアスタキサンチンは、「ビタミンEの約500倍の抗酸化力がある」といわれています。
また、抗酸化力の強い野菜として知られるトマトの赤い色素「リコピン」と比べても数倍強いとの指摘もあります。
この抗酸化力の強い鮭はアンチエイジングにもピッタリで、朝食だけでなく、昼も夜も食卓に載せていただきたい魚の一つです。
「魚好きの人は認知症になりにくい」「魚をよく食べる男性には糖尿病の人が少ない」などとも聞きます。
まさに魚は健康によい食べ物の代名詞のようにいわれていますが、中でもイワシ、サバ、アジなどの青魚が持てはやされていることをもう少し掘り下げてみましょう。
実は北極圏に住む先住民であるイヌイットの人たちは、アザラシの肉を主食にしています。
他にクジラや鮭などもよく食べますが、野菜や果物はほとんど口にしないようです。
脂質の多い食事の割には、心筋梗塞や脳梗塞の人がほとんどいないといわれています。
その理由は、主食のアザラシの肉に含まれるDHAやEPAなどの「不飽和脂肪酸(植物油や魚介類に多く含まれている脂肪の構成成分)」にあります。
牛肉などに多い「飽和脂肪酸」の摂り過ぎは、血液中のLDLコレステロール(悪玉コレステロール)を増やし血液がドロドロになりやすいのに対し、魚の脂に多いDHAやEPAには血液をサラサラにする働きがあり、血液中のコレステロール値や中性脂肪を下げて、動脈硬化などの生活習慣病や脳血栓、心筋梗塞などの予防にも良いとされています。
このDHAとEPAが特に多く含まれているのが、イワシやサバ、サンマなどの青魚なのです。
こうした魚は、比較的安くて、おいしくて、栄養満点です。
このように3拍子そろった大衆魚である青魚をできるだけ食卓に添えたいものです。
ここまで多種多様の肉食について深掘りをしてきました。
結果として、肉食には種類によって、またそれを食する方の年齢によって長所や短所を持ち合わせていることが理解できたと思います。
ただ、どの種類においても、それは絶対食べてはダメですといった結果が出て来てはいません。
どちらかといえば、肉の構成要素であるたんぱく質を取ることの基本を外さず、その肉の持つメリットを享受するために、色々な種類の肉をバランス良く食することが求められているんだと思います。
特にアンチエイジングを目指すための肉食の重要性を理解していただくことで、皆さんのQOLの向上のために一定の肉食を進めていただければ幸いです。(ま)


