紫外線対策アレコレ
さて、今回のお話しはこれからが本番の紫外線対策についてです。
紫外線は目に見えない光で、ビタミンDを生成するのに欠かせません。
その一方で、紫外線を浴びると肌がダメージを受けます。
今回は、この功罪併せ持つ紫外線の「罪」について深掘りをしたいと思います。
紫外線は波長の長さによってUV-A(紫外線A波)、UV-B(紫外線B波)、UV-C(紫外線C波)の3つの種類に分けられます。
そのなかで地表に届くのはUV-AとUV-Bです。
地表に降り注ぐ紫外線の約9割が、UV-Aです。
UV-Aは波長が長く、厚い雲の層やガラスを透過して室内、車内、日陰の場所にも届くため、別名「生活紫外線」とも呼ばれています。
波長の長いUV-Aは、肌の奥の真皮にまで達するので注意が必要です。
浴びてすぐに炎症が起きるわけではないものの、ダメージの蓄積によりシワやたるみの原因になります。
UV-Bは、太陽から降り注ぐ紫外線のなかに1割程度含まれています。
UV-Bは波長が短いので、ガラスは透過せず室内には届きません。
その代わり、屋外での日焼けの原因となるため、こちらは別名「レジャー紫外線」と呼ばれています。
波長が短いUV-Bは、皮膚の浅い部分である表皮にダメージを与えるのが特徴です。
肌が赤くなりヒリヒリする「サンバーン」を引き起こすのがUV-Bで、メラニン色素が沈着してシミやソバカスの原因になります。
世間では、年配の方が日焼け止めを使っている若い人を見て、「自分が若い頃は日焼け止めなんて使わなくても、何の問題もなかった」などと話しているのをたまに耳にします。
ではいったい昔と今で紫外線の量はどう変化しているのでしょうか?
気象庁の発表によると、1990年〜2010年で8.9%増加(つくばで測定)となっています。
実は日本で紫外線測定が始まったのが1990年からで、それ以前の正確な数値は分かっていませんが、オゾン量の変化から推測すると1980年〜2010年で最大18.5%増加している可能性があるとされています。
残念ながら昔と今とは明らかに紫外線量に違いがあり、やるべき対策も全く異なる状況なのです。
また、オゾン量の変化はよく問題視されていますが、他にも原因が考えられています。
過去には大気汚染などが人々の健康を害することから環境問題として大気汚染防止の取り組みが行われた結果、日本では過去に比べて有害物質を含む大気中の様々な物質が取り除かれて来ました。
これはこれで素晴らしいことですが、結果として過去には太陽から地球にやって来た紫外線がこれらの物質により乱反射することで地表の私たちに届くことなく宇宙空間に戻っていったのですが、今や大気汚染が改善され大気中の物質による乱反射が減り、地表に到達する紫外線が増加してしまったことも影響していると指摘する専門家もいます。
紫外線を受けてもその直後の自覚症状は日焼けする程度で、大きな問題が起こるわけではありません。
大きな問題が起こるのは20年〜30年後です。
ですから、現在の紫外線量がどれだけの問題を起こすかは今の段階ではデータも少なく、分からないといったところが本当のところです。
取り返しのつかない後悔をしないように未来を見据えて紫外線対策をすることがとても大切なことだと言えます。
紫外線が肌に与えるダメージは、大きく分ければ2つです。
皮膚がんのリスクが高まるという健康上の問題と、肌の老化を進行させるという美容上の問題の2つです。
まず皮膚がん発症のリスクについて、幸いにも日本はこれまでの発生率は世界的にも低い水準を保っていますが、ここ30年での紫外線量の増加を考えると、このまま低い水準を保てるかどうかは分かりません。
そして2つ目の美容上の問題についてですが、紫外線=シミと考える方も多いかもしれませんが、実はシミだけではありません。
たるみ、シワなど見た目の老化はほとんど紫外線によって進行するのです。
例えば、お尻を見ても、その人の年齢を言い当てることは難しいですが、顔をみればおおよその年齢を言い当てることができます。
これは、お尻は紫外線に当たらないため老化が進行しにくく、顔は紫外線に当たりやすいため老化しやすいということの表われなのです。
それでは、私たちの健康に大きな影響を与える紫外線を防止するために、手軽に使われている日焼け止めについて考察していきましょう。
ここでは、安全な日焼け止めの選び方4つのポイントを紹介します。
◯紫外線吸収剤フリー
紫外線を防御する成分には、お肌の上で紫外線を吸収して熱エネルギーに変える紫外線吸収剤と、お肌の上で紫外線を反射させる紫外線散乱剤の2つがあります。
その中でも、紫外線吸収剤は敏感肌の人や乳幼児の肌にとって刺激となってしまう場合があります。
これらの紫外線吸収剤を使わず、紫外線を反射させる紫外線散乱剤のみで作られている日焼け止めがノンケミカルと呼ばれているものです。
ただ、紫外線散乱剤もお肌に直接触れると負担になることもあるので、表面になんらかのコーティングを施したものがベストです。
◯シリコンフリー
シャンプーなどではノンシリコンが流行っていますが、実は日焼け止めにはシャンプー以上にたくさんのシリコンが使われたものが数多くあります。
シリコンが入ることによって、汗や水で流れにくくなるのですが、その反面、石けんで洗った程度では落とすことができなくなってしまい、お肌に残ってしまい、後々酸化してお肌に刺激を与えてしまう場合もあります。
シリコンが入っていないものは、確かに汗や水にやや弱いのですが、ある程度の時間で塗り直すことで効果は持続させることができますし、お肌に残ることを考えればその方がお肌に負担をかけずにすみます。
◯界面活性剤フリー
どんなにお肌にやさしい日焼け止めであっても、お肌から日焼け止めが体に吸収されることは決していいことではありません。
実は、日焼け止めがお肌に吸収されやすくしてしまうのが界面活性剤です。
界面活性剤は乳化剤と名前を変えたり、「合成界面活性剤不使用」などと書かれているものの中には、天然由来の界面活性剤が使われている場合があります。
合成であっても天然由来であっても界面活性剤は界面活性剤です。
きちんと、お肌に吸収されないように作られているものを選ぶことが大切だと言えます。
◯オイルフリー
日焼け止めを使っていたら、ポツポツと吹き出物が…。ということも良くあります。
これは日焼け止めにはニキビや吹き出物の原因となる油がたくさん使われているものが多いためです。
さらに、油分には界面活性剤と同様に日焼け止めを吸収されやすくする特徴もあることから、油分のないものを使いたいものです。
以上、この「4つのフリー」を基準にして日焼け止めを選べば、トラブルを起こすことなく安全に日焼け止めを使うことができるでしょう。
次に、日焼けを防ぐアイテムや工夫など、日焼け止め以外にできる紫外線対策を紹介しましょう。
まず1つ目は、帽子や日傘などのグッズを活用することです。
帽子は、頭皮や髪を紫外線から直接守ることができます。
日焼け防止効果の高い、UVカット加工が施されている帽子を活用するのもひとつの方法です。
日傘はUVカット率の高いものを選びましょう。
また、遮光率の高い日傘を使うことで、強い日差しを効果的に遮り、日陰にいるような快適な状態を保てます。
2つ目は、紫外線は顔だけでなく体の皮膚にもダメージを与えるため、全身の日焼け対策を心がけるようにすることです。
特に、腕や脚など、露出することが多い部分を、しっかりと紫外線から守ることが大切です。
簡単に紫外線対策を行う方法として、UVカット加工が施されているパーカーやTシャツなどを着るのもよいでしょう。
紫外線量は時間帯によって変化するため、外出時間を調整することが3つ目の方法です。
紫外線量は、一般的に10時~14時の間にピークを迎えるといわれています。
特に、夏の強い日差しが照りつける10時~14時の外出は、できるだけ控えるのが望ましいでしょう。
どうしてもこの時間帯に外出する予定がある場合は、日焼け対策を行った上で日陰を歩いて移動するとよいでしょう。
日陰でも屋外ですので紫外線は降り注いでいますが、日向に比べて約半分の紫外線量といわれているため、紫外線による肌へのダメージを軽減することができるでしょう。
そしてもうひとつ、紫外線に負けない食生活も大切なこととなります。
お肌の害になるのは、紫外線そのものというより、紫外線によってお肌の中に発生する「活性酸素」です。
この活性酸素がお肌の細胞や組織、DNAを傷つけてしまうのです。
この活性酸素は、ビタミン((βカロテン)・ビタミンC・ビタミンE・ポリフェノール類などの抗酸化成分を食べ物から摂取することで、発生を抑えることができます。
紫外線の強い時期にはこのような抗酸化成分を豊富に含む食材をバランス良くとることが大切です。
肌老化の7割は、紫外線による光老化です。
紫外線を全く浴びていなくても年齢とともに生理的老化は起こりますが、日に当たりやすい手の甲や顔には光老化も加わります。
露出しにくい太ももや腕の内側の肌と比べると、その違いは明らかです。
屋外では、太陽からの「直射光」だけではなく、直射光が大気中の分子に当たって散乱した「散乱光」、直射光が壁や地面で反射した「反射光」と、3方向からの紫外線を浴びることになります。
日傘や帽子だけでは、散乱光や反射光を防げません。
サングラス、UVカットの洋服やスカーフ・手袋、日焼け止めなどが有効ですので、適宜シチュエーションにあわせて良い方法をとっていただければと思います。
また、屋内でも日中はリビングなどでは照明器具を使わないでも十分明るいと感じる場合は、日光が屋内に入り込んでいることを表わしているので、普通の窓ガラスは紫外線を70%くらい通してしまうことから、UVカットのカーテンをかけたり、屋内でも日焼け止めを塗るなどの対策をしましょう。
特にUV-Aは天気や季節に関係なく地表に届くといわれるので、曇りや雨の日でも紫外線対策は必要です。
UV-Bは7月がピークですが5月頃から急増するので、過ごしやすい季節から夏と同等の対策を行いましよう。
これからの紫外線対策は、紫外線の強度が増しているため、過去の経験や知識をアップデートする必要があります。
今では老若男女を問わず、紫外線対策は必須のものとなって来ています。
読者の皆さんも、特に高齢者の方は「もう歳だから、今更必要ないでしょう。」と考えず、人生100年時代を見据えて、紫外線が起こす「罪」に対する対策を取っていただければ、QOLの向上へと繋がっていくのではないでしょうか!(ま)