男性更年期障害
さて、今回は男性の身体に関するお話しですが、女性の方にもこのブログで、パートナーなどの男性への理解を深めていただければと思いますので、男性のお話だとスルーせずにお読みいただければ幸いです。
中高年の男性の中には、気分の落ち込みや集中力の低下が長く続くとき、ストレスや過労のせいだと見過ごす人もいれば、うつ病ではないかと疑い始める人もいるかもしれませんね。
しかし、こうした精神的な症状の背景には、男性ホルモンの変化が関係する「男性更年期障害」が潜んでいる可能性もあるのです。
「男性更年期障害」は年齢とともに男性ホルモン(テストステロン)が減少したり、生活習慣やストレスによってホルモンのバランスが乱れたりすることにより、身体面・精神面・性機能面などにさまざまな症状がみられることをいいます。
男性ホルモンの分泌量は一般的に20歳代でピークに達し、徐々に減少するといわれています。
そして男性では、40歳を過ぎると生涯にわたって、いつでも「男性更年期障害」を引き起こす可能性があります。
「男性更年期障害」は「女性更年期障害」と比べると、症状が現れるタイミングや期間、症状の内容などに個人差があることが特徴です。
では、自分が「男性更年期障害」かどうかを判断するにはどうすればいいのでしょうか?
もし専門医の診察を受けた場合、精神面だけでなく体や生活の変化についても尋ねられるでしょう。
いつ頃から調子が落ち始めたのか、睡眠の質がどのように変わったか、働き方に影響する出来事がなかったか、などなどです。
不調の背景をより具体的に探るために、症状の時間の流れ、いわゆる症状発症の時系列を整理することが大切なのです。
更に、前述の男性ホルモンのテストステロン値や甲状腺ホルモン、炎症反応、肝機能などを確認するための血液検査が行われます。
こうした問診内容と検査結果を組み合わせることで、加齢やストレスによるものなのか、生活習慣などによるホルモンの変化が関与しているのか、あるいは別の病気が隠れているのかを、より総合的に評価できます。
「男性更年期障害」の主な原因としては、男性ホルモンであるテストステロンが減少したり、ホルモンバランスが乱れたりすることであると考えられています。
テストステロンが減少する主な原因は、何と言っても加齢です。
しかし、近年は生活習慣や環境によっても、その分泌量が左右されることが分かっています。
糖尿病や肥満症、メタボリックシンドロームなどの生活習慣病との関連も報告されており、テストステロンの少ない人はこれらの病気にかかりやすいともいわれています。
ただ、「男性更年期障害」の中には、まれに男性ホルモンの減少を伴わないものもありますので、自分自身で判断せずに専門医の診察を受けることが大切だといえます。
では、ここからは「男性更年期障害」の症状についてみていきましょう。
「男性更年期障害」の症状は人によって大きく異なりますが、主に体の痛みなどの身体症状、イライラしやすいなどの精神症状、性欲が低下するなどの性機能症状の3つに区分されます。
3つに区分された症状別に、具体的にみていきましょう。
【身体症状】は次のとおりです。
・関節の痛みや筋肉痛を感じやすくなる
・筋肉量の減少
・頭痛
・疲れやすい
・汗をかきやすい
・体のほてりが生じやすい
・手足が冷えやすい
・太りやすい(肥満、メタボリックシンドローム)
・トイレが近くなる(頻尿)
・骨が脆くなる
などがあります。
【精神症状】は次のとおりです。
・イライラしやすい
・不安やパニック状態になる
・気分が落ち込む(うつ状態)
・眠れなくなったり、夜中に起きてしまったりする(不眠)
・以前よりも興味や意欲が湧きにくい
・仕事などでパフォーマンスの低下がみられる
・集中力や記憶力が衰えている
などがあります。
【性機能症状】は次のとおりです。
・勃起障害(ED)
・性欲が低下してきた
・朝の勃起がなくなった
などがあります。
もう少し深掘りして、検査・診断に関しても、具体的にみてみましょう。
「男性更年期障害」を疑う症状がみられた場合、血液検査や質問票を用いた問診、胸部X線検査、心電図検査、尿検査、身長・体重測定、BMI(注)の確認などが行われます。
多様な症状がみられるため、「男性更年期障害」以外の病気の可能性も考慮して診断されることが一般的です。
(注) 肥満や低体重の評価に用いる数値。体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)で算出し、日本では25以上が肥満と判断されています。
また、血液検査で男性ホルモンのテストステロンが250 ng/DL未満の人は性腺機能低下症と診断され、ホルモン療法などの治療が検討されます。
ホルモン治療の適応を決定するため、泌尿器科系臨床検査を行うこともあります。
問診では、症状の内容や程度を評価するためにAMSスコアと呼ばれる質問票を使用することが一般的です。
心理的因子・身体的因子・性機能因子を含めた計17項目の質問に答えて点数をつけ、症状の程度を評価します。
その他、骨粗鬆症の診断に用いられる骨塩定量の検査や体脂肪率の検査、精巣や外陰部、前立腺の触診、体毛の状態の確認などを検討される場合もあります。
では、これらの症状への治療方法について見てみましょう。
「男性更年期障害」は、症状の程度や血中テストステロンの値によって治療方法が異なります。
まず生活習慣の改善が検討され、それでも改善がみられない場合に薬物療法やホルモン療法が検討されることが一般的です。
特にビタミンDや亜鉛が不足しているとテストステロンの低下を招きます。
【生活習慣の改善】
・規則正しい生活
・十分な睡眠時間の確保
・テストステロンの産生を増やす食べ物(にんにくや玉ねぎなど)を取る
・たんぱく質(肉や卵、乳製品など)を取る
・適度な運動をすること
・ストレスをため込まないこと
・ビタミンD、亜鉛を含むサプリメントの摂取
【薬物療法】
生活習慣を改善しても症状がよくならない場合には、症状に応じた薬物療
法が行われることがあります。
たとえば、性機能の低下に悩んでいる人の場合、EDの治療薬が処方される
こともあるほか、不安症状に対する抗うつ薬・抗不安薬の処方や、骨粗鬆
症を予防するための治療薬などが処方されます。
また、元気がなく疲れやすい人に処方されることのある補中益気湯などの
漢方薬の処方が検討されることもあります。
【ホルモン療法】
「男性更年期障害」に対するホルモン療法はアンドロゲン補充療法(ART)
といいます。
日本では、テストステロン製剤と呼ばれる治療薬を定期的に筋肉に注射す
る方法が保険適用となっています。
ARTは症状があり、この治療を望んだ方などに対して検討されます。
例えば前立腺がんの治療では、意図的に男性ホルモンの値を下げ、それに
よって前立腺がんの勢いを弱める内分泌治療を行いますので、ホルモン療
法の治療が受けられない可能性もあるため、詳しくは医師の説明を聞きま
しょう。
医師による治療が必要な場合であっても、患者自らが生活の改善によるス
トレス解消で症状が出なくなることもありますので、まずストレスを解消
する工夫を施すようにしていく必要があります。
会社に仕事を少し減らしてもらう、休みの日はしっかり休むなど、なるべ
く休養を取り、リフレッシュしてもらうことが大切です。
そうすると、中には治療をやめても、症状が出なくなる人もいます。
「男性更年期障害」で現れるいくつかの症状について、それが加齢による
自然な衰えなのだと理解して、治療をやめられる方もおられます。
これらのことも踏まえ、治療を継続するのか、やめるのか医師と相談し納
得した上で判断するようにしましょう。
40代以降の男性にとって「男性の更年期障害」に罹患している有無にかかわらず、自分自身の将来のQOL向上を図るために「男性の更年期障害」とどのように付き合っていくかという観点から、考えを整理して悔いを残さないよう、自分自身でやれることはやっていくことが肝要ではないでしょうか。
要は加齢に伴って変化する自分の心身の状態と、どう折り合いをつけられるかが重要だといえます。(ま)


