生活元年って、面白い
さて、今回の話題は「生活元年」という調査についてのお話しです。
今まで私たちが知る情報は、例えば高齢者の現状を表わすため、「ある生活に関わる行動ができなくなったり、したくなくなったりする年齢」、つまり「終わりの年齢」である「生活寿命」を紹介するデータが数多く出ているように思います。
今回は、逆に「始まりの年齢」を「生活元年」と名付けて、誰にとっても身近な食生活において「ある行動ができるようになったり、したくなったりする年齢」のイメージを調査した面白い結果を紹介したいと思います。
博報堂生活総合研究所が、 「食の生活元年」調査として、首都圏・阪神圏・名古屋圏の20~69歳男女1,500人に対して、2025年9月インターネットでの調査をしました。
今回はその調査に対する回答をまとめたものを紹介し、合わせてその分析などにも触れてみたいと思います。
表記している年齢は、全体としての平均年齢となっています。
また、特に男女差に顕著な年齢差がある場合には、具体的な差を紹介しつつ、分析内容を見てみたいと考えています。
ここで紹介する項目を見ていただく中で、読者の皆さんが歩んできた食に関する自分史と照らし合わせていただき、過去の出来事を思い出したり、この調査の平均よりおませだったりとか奥手だったんだとかを確認していただくことも楽しいことかも知れませんね。
では、早速見て行くことにしましょう。
◯子どもだけでファミレスやカフェに行くようになる「子ども外食元年」:16歳10か月
16歳といえば高校1~2年生です。
注目したいのは、「子ども外食」という消費を生み出す主体は、子どもだということです。
この調査を外食業者の立場から見れば、16歳から子どもと言えどもビジネスにおける大切な顧客、一人前の消費者として位置づける必要があると理解しようとなります。
◯好きな人を食事に誘うようになる「食事デート元年」:19歳10か月
社会人デビュー前の人も多いでしょうが、がんばって働いたバイト代を手にして、好きな人を食事に誘う光景が目に浮か び、青春っていいなぁ~と思った方も多いかと思います。
◯親に自分のお金で食事を奢るようになる「親にごちそう元年」:25歳7か月
ここでは、「親にごちそう元年」と「食事デート元年」を比べてみたいと思います。
「親にごちそう元年」は「食事デート元年」の5年9か月後ですので、この差は親よりも好きな人の方が大切といった心情がズバリ表われているのかと考えてしまいます。
◯家族や自分のための食事を自分で作るようになる「自炊元年」:24歳0か月
◯市販の総菜や弁当、外食で食事をとることが多くなる「中食&外食元年」:33歳11か月
ここでも、「自炊」中心と「中食(スーパーやコンビニ、惣菜店などで調理済みの弁当・惣菜・冷凍食品などを購入し、自宅や職場など店以外の場所で食べる食事形態)&外食」中心の年齢差を見てみましょう。
自炊を始めて、中食&外食に向かうまでの手作り中心年数(「自炊元年」24歳0か月と「中食&外食元年」33歳11か月の差)は、全体としては約10年(9年11か月)となっています。
また、この「自炊」中心年数には明らかに男女の差がみられ、男性の調査対象者が考える5年10か月に対して、女性の調査対象者は14年2か月で2倍以上も長い結果となりました。
30代になり、仕事や家事、子育てに追われるようになっても、女性においては手づくり中心の食生活を長く続けようとする考え方がこの調査結果の背景にあるのかもしれませんね。
続いては、壮年の年齢に入ってからの事柄です。
◯お酒をおいしいと思うようになる「美酒元年」:34歳4か月
◯レストランの外食で、ひとり1万円以上のお店にも行くようになる「美食元年」:40歳8か月
このふたつの事柄とも、男女差において同じような傾向がありました。
いずれも女性の調査対象者が考える年齢が、男性の調査対象者が考える年齢よりも若く、男女の差は「美酒元年」では1歳10か月、「美食元年」では1歳7か月でした。
この結果ではっきりと分かることは、美酒にも美食にも女性が男性より早く目覚めるんだということが理解できますね。
◯疾病予防や肥満防止など健康を考えた食事をするようになる「健康食元年」:42歳5か月
◯こってりした食事よりも、あっさりした食事を好むようになる「あっさり元年」:42歳9か月
疾病予防や肥満防止など健康を考えた食事をするようになるという「健康食元年」とこってりした食事よりも、あっさりした食事を好むようになる「あっさり元年」との差はほとんど無いに等しいかも知れません。
また、いずれも性別毎に見てもその差は小さく1歳未満ですし、各項目の元年も42~43歳の中に収まっていて、性別による顕著な傾向はありませんでした。
歳を重ねるにつれて各人に訪れる健康観や味覚の変化は、性差には関係なく男女共通なのかも知れませんね。
◯脂っこい食事や、食べ過ぎ・飲み過ぎの後に胃もたれするようになった「胃もたれ元年」:45歳10か月
◯飲食店で「ごはん少なめでいいです」と言うようになる「少なめ元年」:49歳0か月
このふたつの項目もリンクしているように感じます。
「胃もたれ元年」と「少なめ元年」との差は3年2か月です。
物語的に想像してみましょう。
45歳10か月頃になると「最近、脂っこい食事や、食べ過ぎ・飲み過ぎの後に胃もたれしてしょうがないなあ」と感じ始めた人が、3年2か月の悩みのタイムラグを経た後に、49歳頃に自分自身の健康のことを気にして飲食店で「ごはん少なめでいいです」と言葉にする決断に至る物語が頭に浮かびます。
性別の調査結果では、男性51歳11カ月で女性46歳1か月と5年ほど女性の方が小食へと舵を切っていますが、ほぼアラフィフと言えます。
アラフィフを耳にする頃から、自分自身の健康維持を意識して、我慢する「生活元年」が始まるとも言えます。
ちょっと、感傷的になってしまいますね。
冒頭で「終わりの年齢」である「生活寿命」について触れました。
実は、今回実施した「食の生活元年」調査と同じ調査内で、「食の生活寿命」についても、いくつか聞き取りをしています。
ここで興味深い結果をお伝えしましょう。
行列に並んでまでラーメンを食べようと思わなくなる「行列麺寿命」が42歳5か月となっていて、「健康食元年」と同じ年齢です。
そして、大盛りを注文することができなくなる「大盛り寿命」は42歳9か月で、なんと「あっさり元年」と同じだったのです。
「行列麺寿命」や「大盛り寿命」が到来することから、「健康食元年」や「あっさり元年」が始まるのでしょうか。
はたまたその逆で、「健康食元年」や「あっさり元年」が始まることから「行列麺寿命」や「大盛り寿命」を迎えるのでしょうか。
「生活元年」と「生活寿命」は表裏一体の関係なのかも知れませんね。
読者の皆さんも、この結果と自分史とを比較したりしていただき、自身の人生100年の設計図の修正などに利用していただければ幸いです。(ま)


