熱中症を防ぐための基礎知識
さて、今回の話題は「熱中症を防ぐ方法」についてのお話です。
ここ数日、熱中症警戒アラートが連続して発表されています。
熱中症警戒アラートは、熱中症の危険性が極めて高くなると予測された際に、危険な暑さへの注意を呼びかけ、熱中症予防行動をとっていただくよう促すための情報です。(環境省)
環境省と気象庁が連携して、令和3年4月から全国を対象に運用を開始した、この熱中症警戒アラートですが、背景には、近年の熱中症による死亡者数・緊急搬送者数の著しい増加があります。
厚生労働省人口動態統計では、熱中症による死亡数は、1993年以前は年平均67人ですが、1994年以降は年平均663人に増加しています。
中でも、熱中症死亡総数に占める65歳以上の高齢者の割合が、1980年33%、2020年87%と急増しています。
また、総務省消防庁報告データによると、全国で6月から9月の期間に熱中症で救急搬送された方は、2009年度2万人にも満たなかった救急搬送数が、2010年以降大きく増加し、特に非常に暑い夏となった2018年は92710人と大きく増加しています。
おそらく今年の夏は、これまで経験したことのない記録的猛暑が続いていますので、上記の各種データも更新される可能性が高いと思われます。
この異常な暑さは、世界的な気温上昇をもたらすといわれる「エルニーニョ」現象の影響によるもので、この現象は今年の春からまだ始まったばかりで、今後しばらくはこの猛暑が続くと予測されています。
先月末の日本経済新聞の記事にもありましたが、世界気象機関(WMO)と欧州連合(EU)の気象情報機関が、2023年7月の世界の平均気温が観測史上で最高となる見通しだと発表した、というニュースは衝撃的でした。
また、この発表を受け、国連のグテレス事務総長は「地球温暖化の時代は終わり、地球が沸騰する時代がきた」と強い危機感を示し、熱波や洪水、山火事などにつながる「異常気象がニューノーマル(新常態)になってしまっている」と、全世界に向け警告されました。
日本でも、夏に40℃を超える気温が観測されることが、珍しいことではなくなってきました。
これまでの感覚で生活していると、熱中症になるリスクがさらに高まっていますので、これまで以上に意識して対策をとっておく必要があります。
そこで今回は、科学雑誌「Newton(ニュートン)」の8月号に記載されていた、第2特集「灼熱の日本」のページから、「暑さによる命の危険から身を守るために知っておきたい科学知識」を、以下に抜粋して紹介したいと思います。
【熱中症のしくみ】
1.熱の発生が、熱の放出を上まわると熱中症になる
私たちの体では、内蔵や筋肉の活動によってつねに熱が発生しています。
しかし、それでも体温を一定に保てるのは、熱を体の外に放出しているからです。周囲の気温が暑くなり、熱の放出が間に合わなくなると、熱が体にたまる一方になって体温が上昇し、脱水がおき、最終的に熱中症になってしまいます。
2.命にかかわる症状も
熱中症の症状としては、めまいや顔のほてり、筋肉痛や筋肉のけいれん、体のだるさや吐き気、体温の高さなどがあげられます。また、汗がやたらと出たりまったく出なくなったりするなど、汗のかき方がおかしくなることもあります。ひどくなると意識を失ったりひきつけをおこしたりして、命にかかわることもあるのです。
【熱中症を防ぐために気をつけるべきこと】
・なるべく外に出ないようにする
暑い日は、外での運動や不要不急な外出をさけましょう。外出する場合も、暑い時間帯をさけて無理のない範囲で活動するようにしましょう。
・エアコンや扇風機を活用する
「もったいない」と思わず、エアコンや扇風機を使いましょう。寝苦しい夜に熱中症になることも多いので、夜間もつけたままにすることをおすすめします。体に風が直接あたらないようにするのがポイントです。
・こまめな水分補給
のどが乾いても乾いていなくても、こまめに水分をとることで、汗による脱水を防ぐことができます。水分はミネラルを豊富に含んだ麦茶がおすすめです。アルコールやコーヒーは利尿作用があるため、控えるようにしましょう。
・冷却グッズを活用する
ネッククーラーや氷枕などの冷却グッズを活用することで体温が上がりすぎないようにすることができます。濡れたタオルや手ぬぐいも有効です。
首やわきの下のように太い血管の通っているところを冷やすと効率よく体を冷やせます。
・「暑さ指数」に気をつける
ニュースやスマートフォンのアプリ、携帯型の熱中症計で「暑さ指数」をチェックしましょう。暑さ指数は、気温だけでなく湿度や日射・放射、そして風の要素をもとに算出され、熱中症リスクを判断するのに役立ちます。
21~25が「注意」、25~28が「警戒」、28~31が「厳重警戒」です。
・直射日光を避ける
外出するときは、帽子をかぶったり日傘をさしたりすることで、直射日光を浴びることをなるべく避けましょう。また、外出時はできるだけ日向を避けて日陰にいることで、熱中症のリスクを下げることができます。
・塩分をほどよくとる
大量の汗をかくときは、水分とともに塩分も体内から失われてしまいます。
そのため、食事を通して塩分もほどよく補給するようにしましょう。ただし、かかりつけ医から塩分の制限をされている場合は、相談のうえ、指示にしたがってください。
・着る物をくふうする
体に密着した服よりも、風が通る隙間のある服を着たほうが汗が蒸発しやすく涼しく感じます。素材も麻や綿などの通気性のよいものを選ぶとよいでしょう。下着は吸湿性や速乾性のあるものを身につけましょう。
そして次に、熱中症が疑われる時や熱中症になってしまった場合はどうすれば良いか?という大変重要なことも記しておきたいと思います。
【熱中症が疑われる時の応急処置】
1.涼しい場所へ避難し、衣服をゆるめよう
2.からだを冷やそう(特に、首まわり、わきの下、太もものつけ根など)
3.水分を補給しよう(水分・塩分、経口補水液やスポーツドリンクなど)
但し、呼びかけへの反応がおかしい場合や応えない(意識障害がある)時には、無理に水分を飲ませるのは禁物です)
ただし、以下の点が一つでも当てはまれば、すぐに救急車を呼びましょう!
1.本人の意識がはっきりとしていない
2.自力で水分の摂取ができない
3.水分補給など何らかの処置をしても症状がよくならない
いかがでしょうか。「熱中症についての基礎知識」、お分かりいただけましたでしょうか。
既にご存知の知識や情報も多いと思いますが、命にかかわることですので、再度、意識して実践していただければ幸いです。
酷暑の夏、観測記録のない太古の気候を探る研究者は「地球の平均気温はおよそ12万年ぶりの最高気温を記録した」と警鐘を鳴らしている、といった驚くべきニュースもありました。
すごいですね! 12万年ぶりの最高気温とは・・・
まだまだ暑い日が続きます。
どうか皆さん、QOL(生活の質)を保つにも工夫が必要な季節ではありますが、夏バテしないよう「栄養バランスのとれた食事」を摂っていただき、ご無理のないようにお過ごしください。
酷暑の折、くれぐれもご自愛の程、お祈り申し上げます。